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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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鎧の魔物

「さて、これで終わりっと」


星夜は、最後の魔物を回収して一息ついた。


逃走者を眠らせ、ラストを解禁した星夜は、生き残っていた魔物達をまとめて一掃した。

その後は魔物達の死体を錬金術の材料にする為、一つ残らず回収していった。


そして今、最後の魔物の回収が終わった。

あとはダンジョンの方で処理すれば問題無い。


「あとはあの逃走者のことをどうにかすれば良いな」


星夜は、街に向かって歩き出そうとした。


「うん?」


が、マップで星夜に向かって急接近して来る反応を見つけ、立ち止まった。


「この反応、また面倒事か?」


星夜はダンジョンに避難しようか一瞬迷ったが、その一瞬の内に何かが星夜から数十mの地点に飛来した。


「なんだこいつ?」


星夜が見た先には、一目では何の魔物か判別出来ない存在がいた。

しかし、カーソルが赤いので魔物であることは間違いない。

その魔物の見た目は、端的に言えば黒い全身鎧だった。全身は何の装飾もされていない鎧に覆われていて、中身は見当がつかなかった。手には西洋剣と盾を持っている。

全身を完全に鎧で覆っていて、手足どころか目さえも見えなかった。

その為、中身を推察することは出来なかった。

まあ、この魔物がスライムポットと同じような物品タイプの魔物だった場合は、中身自体が無い可能性もある。


星夜は、魔物から視線を外さずに様子を見た。


「・・・ニンゲン」


星夜が魔物の様子を伺っていると、鎧からそんな言葉が放たれた。


「喋った!?この世界の魔物って話せるんだ!」


星夜は、魔物が喋ったことに驚き、すぐにこの世界の魔物が喋れるのだと認識した。


「ニンゲン。ニンゲンヲシラナイカ?」

「人間を知らないか?」


星夜は、その鎧の言葉に首を捻った。


星夜は、人間と言う呼びかけが自分にたいするものだと認識していた。そこは確定で良いだろう。しかし、その次の人間を知らないかと言う言葉の意味を計りかねた。


「ソウダ。ニンゲン、ニンゲンヲミナカッタカ?」

「ああ、なるほど!他の人間という意味か。それなら見たぞ」


星夜は、鎧の魔物の二回目の言葉で先程の意味が理解出来た。


最初星夜は、この世界の人間のことを知らないか?と聞かれたと思った。しかし、鎧の魔物の次の言葉で、鎧の魔物が言った言葉の意味が理解出来た。


この鎧の魔物は、ニンゲン(星夜)に、ニンゲン(自分の捜している)を知らないか?と聞いてきたのだ。


なので、星夜は正直に逃走者のことを伝えた。


「ミタ、ドコニイル?」

「ちょっと待て」


星夜はすぐに出入口を開き、ダンジョンから逃走者を引っ張り出した。


「この人間で良いか?」

「・・・ソノニンゲン」


星夜は逃走者を引っ張り出すと、すぐに鎧の魔物に合っているか確認した。


鎧の魔物は少しの間逃走者を見ると、自分の捜していた人間だと言った。


「そうか。じゃあ」


鎧の魔物の答えを聞いた星夜は、眠っている逃走者をそのまま鎧の魔物に差し出した。


星夜としては、ここでこの逃走者を鎧の魔物に渡しておいた方が良いだろうと判断していた。


理由としては、まず逃走者が意図していなくてもMPKを仕掛けてくる人間であることが一つ。

この鎧の魔物がタイミングを計ったように来たことが一つだ。


前者の理由で言えば、星夜に無理をして逃走者を庇う理由にはならなかった。

それに、眠らせる前も星夜の言うことを聞かないような奴だったのだ。自分で手を下すのはNGでも、欲しがっている魔物がいるならすぐに渡してしまうくらいには星夜は逃走者のことを邪魔だと思っていた。

もともと逃走者が助かっても死んでも、星夜にはどちらでも良いのだ。

これはある意味、星夜の言うことを聞かずに残った逃走者自身の選択の結果だ。


次に、後者の理由について。鎧の魔物が来たタイミングがかなりよかったことについてだ。

本人も言っていた通り、鎧の魔物は逃走者を捜していたのだろう。

逃走者を追いかけていた魔物達は、この鎧の魔物の仲間の可能性が高い。

これで逃走者の追っ手の魔物は、スライム、ゴブリン、ハングリードッグ、先程死体を鑑定した結果わかったラビットとコボルト、そしてこの鎧の魔物の計六種類にまでなった。


明らかに通常の状況ではない。

つまり、現状は星夜以外の転生者が行動している結果の可能性が高い。

多少暴論の気が星夜もしているが、そうではなかったとしても、これは大きな流れの一部である可能性は高い。

ゲーム風にいえばイベントである。


なら、神の意向に従っている星夜の行動は決まっている。

眠れる神様が喜ぶように、イベントが恙無く発生するように放置、またはサポートするのだ。


星夜は、だからこそ簡単に逃走者を差し出した。


人間的にはペケだが、世界を守る転生者としては正しい行動だ。


「カンシャ」


鎧の魔物は逃走者を星夜から受け取ると、星夜にそう礼を言った。


「どういたしまして。これからどうするんだ?」


星夜は、興味本位で鎧の魔物の今後を聞いてみた。

そう、鎧の魔物の今後である。

逃走者の今後は、星夜はまったく気にしていなかった。


「アルジ、ダンジョン、カエル」

「ふーん、主のいるダンジョンに帰るのか。うん?主のいるダンジョン?ダンジョンにいる主?それってもしかして、転生者?」


鎧の魔物は、まっすぐに主の下に帰ると星夜に答えた。

星夜は、鎧の魔物のこの答えを聞き、何かに引っ掛かりを覚えた。そして、鎧の魔物の言葉を吟味した結果、引っ掛かりを覚えた部分を特定した。


そう、鎧の魔物はダンジョンにいる主の下に帰ると言ったのだ。そして、星夜は昨日ナイアルラトフォテップとした話を覚えていた。

星夜は、自分が拠点としている街の近くにダンジョンがいくつもあると聞いていた。そして、魔王や勇者という役柄に転生させられた転生者達のことも聞いていた。

なら後は簡単だ。ダンジョンと魔王。この二つの親和性を考えれば、そのダンジョンの主が魔王の役柄を振られた転生者である可能性は簡単に想像出来る。

まあ、ダンジョンマスターという役柄の転生者である可能性もあるが、転生者である点が同じなのだから問題は無い。


そういうわけで、星夜は鎧の魔物の主に会ってみたいと思った。


「なあ、俺もついていったら駄目か?」


そして、そう思った次の瞬間に星夜は、鎧の魔物にそう聞いていた。


「カマワナイ。レイ、スル」


鎧の魔物は、星夜の要求に二つ返事で応じた。どうやら、逃走者を渡してもらった礼をしたいらしい。


「ありがとうな」


星夜は鎧の魔物に礼を言い、その後一人と一体は移動を開始した。


目指すは鎧の魔物の主がいるダンジョン。


星夜と鎧の魔物は、凄い速さで平原を駆けて行った。




星夜と鎧の魔物が去った後、再び異なる魔物の混成群が先程まで星夜達がいた場所にやって来た。


そして、しばらく周囲を探索した。が、魔物達は何も発見することは出来なかった。

その後魔物達は、逃走者が逃げて来た方向に帰って行った。


だがそれは、星夜と鎧の魔物が向かった方向とは、若干ズレていた。



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