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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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到着

「ここがそうなのか?」


星夜が次に気がついた時には、だだっ広い平原の真ん中に一人立っていた。


【転移先は、基本的に視界の開けた見晴らしの良い場所。人の目の無い場所が選ばれる】


星夜は、ナイアルラトフォテップのアドバイスの一つを思い出してそう思った。たしかに周囲は平原で見晴らしは良いし、人っこ一人周囲にはいなかった。


【ただ心配する必要は無い。だいたい10分程度歩けば、人間の集落に辿り着ける位置に転移しているはずだ。人間の集落の位置は、周囲を確認して煙りの上がっている場所にあるはずだ】


「たしかそう言っていた。煙り、煙りっと。・・・あった!」


星夜が煙りを探すと、ある方向に煙りが立っているのを見つけた。

星夜は、その煙りが立っている方向に向かって歩き出した。




【向こうについたら、自分の能力を確認しておくと良い。転生時に、向こうの理に合うように能力が与えられているはずだ。このことをちゃんと確認しておけば、生存率がぐっと上がる】


「あっ!今のうちに出来ることを確認しておこう。ええっとたしか、頭の中で何が出来るのか考えれば良いはず」


星夜は、歩きながらナイアルラトフォテップのアドバイスに従い自分の能力を探った。


「ええっと、これかな?」


星夜の頭の中では、ゲームのステータスウインドウのような光景が展開されていた。



【能力】

夢魔法、時間魔法、空間魔法、闇魔法



「夢に時間、空間に闇の魔法。いったいどんな組み合わせ?」


【向こう側で得られる能力は本人の適性に左右される。そして、向こうの世界では魔法は強力な武器だ。もし魔法を得られたのなら、それをメインに戦っていくと良い】


「俺の適性ってどうなっているんだ?・・・とりあえず、四つもあればどれかは使えるだろう」


星夜は、四つの魔法でどんなことが出来るのか調べながら移動を続けた。




「あれがこの世界の街なのかな?」


星夜が歩いて少しすると、周囲を高い壁で囲まれた建物らしきものが見えてきた。


【人間の集落に入る場合、村ならそのまま入ると良い。ただし、街以上の場合は魔物等の敵を警戒して門などの入り口の所に門番が立っている場合がほとんどだ。この場合は、身分証明と入場料が必要になる。手続きの過程で身分証明書は作っておくから、それを見せれば問題無い。入場料については、一ヶ月分のお金を送る際に持たせるから、その中から渡せば良い】


「ええっと、・・・おっ!あったあった!」


星夜は、ナイアルラトフォテップの言っていたことを思い出し、自分の所持品を漁った。そして、腰に下げていた革袋の中からお金を見つけた。


「たしかこれがこれで、あれがあれっと」


【向こうの世界の金の単位は、銅貨、銀貨、金貨の三つ。そして、その三つの価値は銅貨から順に上がっていき、銅貨百枚で銀貨一枚分。銀貨百枚で金貨一枚分の価値になる。汝の世界の経済単位で言えば、銅貨が百円。銀貨が一万円円。金貨が百万円に当たるという理解で良い】


星夜は、ナイアルラトフォテップの説明をもとに、所持金の確認を行っていった。

その結果、所持金はだいたい二十万円相当あることがわかった。およそ銀貨二十枚分だ。ただし、これはあくまで切り捨て。実際には端数分がある。


「お金は問題無し。身分証明書は、・・・ある」


星夜は、ポケットの中から一枚のカードを見つけた。そのカードには、セイヤと名前が記載されていたので、それが身分証明書で間違いないだろう。


星夜は、街に入るのに問題が無いことを確認すると、あらためて街へ向かって歩き出した。そして、入場料銅貨五枚の支払いと身分証明書の提示を済ませて問題無く街の中に入った。


街に入った星夜は、まず最初に今日泊まる宿を探した。


理由は、【人間の集落に入ったらまずは宿を探すと良い。帰る場所。拠点を得ることは、転生先での活動する為には絶対に必要になる】というアドバイスをもとにしている。


「あれにしよう」


しばらく街を歩き回った星夜は、街にあった宿から一つを選んで今日はそこに泊まることにした。


「すみません!泊まりたいんですが、部屋は空いていますか?」

「ああ、空いているよ。一泊で良いかい?」


星夜は宿屋に入り、カウンターにいた受付に泊まれるか尋ねると、そう聞かれた。


「はい、一泊でお願いします」


聞かれた星夜は、こちらの世界に来たばかりだから、まずは一泊してみないとわからない。そう考えて一泊と答えた。


「一泊なら先払いだよ。お代は銅貨三枚だ」

「わかりました。どうぞ」


星夜は、革袋から銅貨三枚を取り出して渡した。


「たしかに。これが部屋の鍵だ。部屋はこの先の一番奥になる」


受付は、星夜に鍵を渡しながら廊下の一つを指差した。


「わかりました」


星夜は鍵を受け取ると、言われた廊下を通って部屋に向かった。


「ふう」


星夜の部屋は、ベットが置かれているだけの簡素なものだった。


「これがこっちの世界の宿の部屋なんだ。まあ、ホテルみたいなのはありえないか」


星夜は、あまりに簡素な部屋にそんな感想を持った。


銅貨三枚。約三百円で泊まれる施設と、一泊数万はするホテルの設備を比較することは、かなり間違っている。


「さて、これからどうするかな?やっぱり、お金を稼ぐ手段の確立からか?」


拠点を確保した星夜は、次にこの拠点を維持する資金を得ることを考えはじめた。

星夜の中では、ナイアルラトフォテップのアドバイスに従ったお金を稼ぐ方法が展開していた。


【向こう側で金を稼ぐ手段としては、冒険者になるのが一番手っ取り早い方法だ。自身の命を掛け金としたギャンブルといった要素はあるが、安全マージンを多めに取り、常に危険予測を怠らなければ生存率はそこまで低くはならない。ただし、この場合は戦争への参加や大規模討伐への強制参加が発生する場合がある。ゆえに、転生後数ヶ月はこちらで金を稼ぎ、次の試みへの蓄えとするのがオススメだ。次の試みとは、ずばり商売だ。向こうの世界には、クラス(職業)というものが存在している。そのクラスの中に、錬金術師というクラスがある。このクラスを手に入れ、自前で素材を確保してアイテムに変える。そして、そのアイテムを売りさばくのだ。この方法なら、冒険者としてのランクの上昇を防ぎつつ、利益を出すことが出来る。まあ、これはほんの一例だ。周囲の状況でもいろいろと変わってくる。この辺りのことは臨機応変にな】


「ナイアルラトフォテップさんはそう言ってたな。じゃあまずは、クラスを手に入れよう」


そう思い立った星夜は、戸締まりをして宿から出かけた。



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