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邪神が夢見る異世界  作者: 中野 翼
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スライム錬成

上機嫌な星夜は、スライムポットを地面に置き、何事かの準備を始めた。


「《分解》」


最初はスライムを一体ポケットから取り出し、分解を始めた。


「これとこれ、あとこれもあわせてっと。それに俺の血を数滴垂らして準備完了っと。《錬成》」


スライムの分解が終わると、星夜は次にポケットから昨日使った井戸水、使った二つのポーションを取り出し、分解したスライムの傍に置いた。そして、それらの中心に星夜は自分の血を垂らし、錬成を発動させた。


材料を中心に魔法陣が出現。材料の錬成が開始された。

最初はスライムの核とスライムの魔石がくっついて徐々に重なっていった。

核と魔石が完全に重なると、そこに星夜の垂らした血が吸い込まれていった。

血が全て核の中に消えると、スライムの核の色が血のような赤い色に変化していった。

核が完全に赤くなると、今度はスライムの体液が入っていた瓶と、HP・MPポーションの入っていた瓶が魔法陣の外に吐き出され、中の液体が混じり合いはじめた。

すると、魔法陣が回転を開始。透明な三つの液体はゆっくりと、けれど確実に一つの別の液体へと変化していった。

やがて液体が完全に一つのものになると、今度は赤くなったスライムの核を、その液体が包み込むように内側に取り込んでいった。

そして、取り込まれた核がゆっくりと脈打ち出す。

その直後、魔法陣が一度発光して消滅した。跡には、一体のスライムが存在していた。


「スライムの錬成成功っと。次は《ポケット》」


星夜は、スライムの錬成に成功したことに頷くと、今度はスライムポットにポケットの魔法をかけた。

スライムポットの中に亜空間が広がり、底が見えなくなった。


「ドバーと入れちゃおう」


星夜は、その亜空間に今まで集めていたスライムをどんどん投げ入れていった。


「こんなものか。あとは仕上げっと」


ポケットに入れていたスライム達の内、依頼分を除く全てのスライム達を亜空間に投げ込んだ星夜は、最後に今錬成したばかりのスライムをスライムポットの外側に置いた。


「さあ、実験の始まりだ!《錬成》」


その後星夜は、スライムを内包したスライムポットと、錬成スライムを対象に錬成を開始した。


スライムポットを中心に魔法陣が出現。が、今回は何も変化が起こらなかった。


「失敗か?やっぱり、錬金術のレシピに載っていないものは錬成出来ないということなのか?」


星夜は、本に載っていない錬成を試してみたかったようだ。だから実験と言っていたのだろう。


「けど、魔力を消費している感覚はあるんだよな。もう少し様子を見てみるか」


星夜は、変化の起きないスライムポット達をじっと見た。

見つめ続けること二十分。スライムの方に変化が起きはじめた。

スライムの形が崩れ、スライムがスライムポットの味噌壷ボディーに染み込む始めた。

そこからさらに十分。

スライムは完全にスライムポットに染み込み、魔法陣が消失した。


「成功、かな?」


バタッ


魔法陣が消失した後、スライムポットを見ていた星夜は、突然倒れた。


ZZZ


そして、そのまま眠りだしてしまった。




【目を開けよ】

「うーん」


星夜は、そう言われて目を開けた。


「ここは」


星夜は、目を開けて見えた光景が先程までの平原ではなかった為、視線をキョロキョロさせて周囲の状況を確認した。


周囲は闇に閉ざされていた。何処を見てもとくに何かあるわけではなかった。が、星夜が自分の足元に目を向けると、その視線はいつの間にか出現していたテーブルによって遮られた。

さらに星夜は、先程までは立っていたはずなのに、こちらもいつの間にか出現していた椅子に座っていた。


「この椅子とテーブルってたしか?」


そして星夜は、今見たテーブルと座っている椅子に見覚えがあった。そう、昨日ナイアルラトフォテップと話時に使ったものと同じものだったのだ。


「同じもの?それならここは・・・」

【そう、我々の主の領域だ】


星夜がここが何処だか見当をつけると、それを肯定する意思が星夜に届いた。


「あっ!やっぱりですか」


星夜が声のした方を向くと、そこには黒人の男性が椅子に座っていた。ナイアルラトフォテップである。


「けど、俺なんでまたここにいるんです?さっきまで、スライムポット達の錬成をしていたはずですけど?」


星夜は、自分が何処にいるのかわかったが、どうしてここにいるのかがわからなかった。


【それが原因だ】

「スライムポット達の錬成がですか?」

【そうだ。汝はスライムポット達の錬成が終わった直後、魔力を急激に消費した為気を失ったのだ】

「ああ、なるほど。けど、気を失っただけでここに来るものなんですか?」


星夜は自分が気を失った理由は理解したが、それだけでここに来れるものなのか不思議に思った。


【いや、ちょうど良いタイミングで汝が気を失ったので、汝の神託の魔法をこちらから発動させて、汝の意識をここに呼び出したのだ】

「なるほど」


星夜は神託の魔法でここに来れることを理解した。


「それで、わざわざ俺を呼び出した理由は何ですか?」


星夜には、ナイアルラトフォテップに呼び出されるようなことをした覚えがなかった。それに、ちょうど良いタイミングというのはどういうことだろう?


【うむ。先程汝はスライムの錬成とスライムポットに錬成を行っただろう】

「しましたけど、それがどうかしましたか?」


たかがスライムを錬成したくらいで呼ばれるわけはないと星夜は思った。


【汝を呼んだ理由はそれだ】

「どういうことですか?」


星夜は、無いと思っていた可能性が呼ばれた理由だと聞いて、あれにどんな意味があったのか訝しんだ。


【汝は自覚していないようだが、汝が錬成したスライムもスライムポットも新種だ】

「えっ!?スライムポットはともかく、スライムも新種なんですか?」


星夜は、本に載っていたレシピ通りにスライムを錬成したつもりだったので、錬成したスライムが新種だと聞いて驚いた。


【そうだ。汝はポーションを材料にスライムを錬成しただろう】

「しましたねHPポーションとMPポーションの二つを使って」

【その結果、ポーションスライムという新種のスライムが誕生したのだ。これには我々の主も驚いておられた】

「へぇー、そうなんですか?けど、それのどの辺りが呼び出す理由になるんです?」


星夜の認識では、ただ新しいスライムを作ってしまったとしか思えなかった。


【一応言っておくが、新種の魔物を錬成するような人間はあの世界にはいない。さらに言うと、魔物同士を錬成して新種の魔物を生み出すような人間は、あの世界では汝しかいないぞ】

「えっ!?錬金術のレシピにスライムの錬成方法とか載っていたのに!?」


星夜は、スライムの錬成方法なんてものが本に載っていたので、本に登場するどこぞのマッドサイエンティストのように、魔物を錬成したり強化したりいろいろとはっちゃけている錬金術師があの世界にはそれなりにいるものだと思っていたのだ。が、その想像は神の証言で粉々に砕け散った。

神が言ういじょう、実際あの世界には星夜が想像したような錬金術師がいないことが今証明された。


「・・・そうなんですか」


星夜は、自分がおかしなことをしていたと知って、かなり落ち込んだ。


【ああ、落ち込むな。汝の行動は我々の主を驚かせたのだ。主に夢を見続けてもらいたい我々としては、なんら問題は無い】

「そういえばそんな目的がありましたね」

【忘れていたのか?】

「いえ、忘れていませんでしたけど、まさかこんなに簡単に神を驚かせることになるとははっきり言って予想外でした」

【それで良いのだ。人間に予想出来ることなど主にも予想出来るのだから】

「まあ、そうですよね」


もともと神様が見ている夢が世界なんだし。と、星夜は思った。

その事実を思い出し、今後のことを考えてしまう星夜だった。

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