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恋愛系

手紙にこめて

作者: KL

私には幼馴染がいた。いたというのはもう引っ越したからだ。ちょっと、いやかなり太っていた。しかし大らかな性格と太っているのに行動力があって皆から慕われていた。でも小学校の卒業とともに東京へ行ってしまった。私が密かな好意を持っていた事に気づかないで。そして私は中学校三年を幼馴染がいないといういつもあるものが無くなった感じで過ごした。その時私は決めた。高校は東京の学校にすると。幼馴染とは手紙のやり取りをしていたためどの学校にするかは分かっていた。


「『拝啓、香澄様お元気でしょうか。私は特に変わりなく過ごしております。高校は裡舞高校に決めました。そちらは高校などはお決めになりましたか?お返事を待っています。敬具』」


この手紙で私もこの学校にしようと決めた。放課後先生にこの学校にすると相談したところ・・・


「裡舞高校?あの高校はかなーり頭が良くないと入れないぞ?お前のその成績だとちょっと厳しいと思う」


「頑張ります!一生懸命!」


「!お前がそんな意欲を見せたのは初めてだなよし裡舞高校の過去問を渡すから頑張って解いてくれ」


「はい!ありがとうございます!失礼します!」


早速家に帰り過去問を解いてみる。がまったく解けない。何かの呪文かと思った。がそのときの私はとてつもない集中力を発揮した。分からない問題は必死に調べてひたすら解き続けた。毎日毎日。そして迎えた試験の日。


「香澄頑張るんだよ!じっくりと解くんだよ!慌てちゃ駄目だからね!」


「うん頑張る!」


ここまで緊張したのは初めてだ。席に着き問題が配られる。チクタクと時間が過ぎていった。試験官が始めの合図を出した。次々と問題を解いていく。インターネットや先生にひたすら聞いたおかげだ。何とか埋まった。後は合格通知を待つだけ。よくドラマなどで見るタイプではなく合格通知書が郵送されるそうだ。数日後私宛の封筒が届いた。差出人は裡舞高校。中には合格と書かれた紙が一枚。家族皆ぽかーんとしている。いち早く状況確認が終わったらしい母さんが声を上げた。


「やったじゃない!香澄!合格よ!」


「うん!うん!!ちょっと手紙書いてくる!」


急いで自室へ行く。いつも使っている便箋に鉛筆を走らせる。


「『拝啓、将真様お元気でしょうか。この度嬉しい事があったので手紙を書いた次第です。私は高校を裡舞に決め合格しました。そちらも合格していれば今年から顔を合わせる事になると思います。宜しく御願致します。敬具』」


走ってポストに手紙を入れる。明日が待ち遠しい。いつも明日か明後日には返事をくれる。わくわくしながら明日を待った。


・・・


次の日手紙受けには綺麗な便箋が入っていた。いつもこの便箋なので誰から来てるからは直ぐに分かった。


「『拝啓、香澄様お元気でしょうか。私も合格致しましたので報告します。今年からよろしくお願いします。こちらに来るのであれば連絡を下さい。久しぶりに会いましょう。敬具』」


この時ほど嬉しいことはあっただろうか。学校でニヤニヤしていると友達から声を掛けられた。


「香澄さー今日何かあったの?すごく嬉しいそうだね」


「うーんやったーて感じが収まらないだと思うよずっと私笑ってるもん」


「あはは香澄が一番難しい高校に合格したからねー嬉しいのもしょうがないか」


学校では私はこんな感じ。春休みに入りいよいよ故郷を離れる日が近くなってきた。その日私は手紙を書いた。


「『拝啓、将真様もうすぐ東京に行きます。久しぶりに会いたいと思いますので場所、日時を決めて頂きたく思います。そちらの地理には疎いためそちらに決めて頂きたいのです。お返事待ってます。敬具」』


次の日また封筒が届いた。内容は・・・


「『拝啓、香澄様待ち合わせの件についてですが日時は3月の27日、正午でいかがでしょうか?東京での住居などを決めるでしょうし色々と準備がある事と思いますので一緒に決められたらと思います。敬具  追伸、場所について書いていなかったので書いておきます。渋谷の忠犬ハチ公前で如何でしょうか?』」


やっぱりこういう所が優しい。私でも知ってる場所を指定してきた。さて27日にこの故郷を出発しよう。そして新天地の東京へ行こう。周りにはそう伝えた。色々と準備をして27日になった。皆に見送られながら電車に乗った。電車でどのくらい掛かるだろうか。何もする事が無いので外の景色を見ていた。時間が経つごとに畑が無くなっていき田んぼも無くなった。代わりに建物が並んでいく。どんどん代わっていってもう建物しかなくなった。電車のアナウンスが渋谷駅だと告げる。ここで降りなければ。初めて降り立つ新天地。何があるか知らないしこんなに人がいるなんて目が眩みそうだ。とりあえず待ち合わせ場所まで行かなければ話が進まない。時間も迫っている。待ち合わせ場所は私でも知ってる位だからか沢山の人がいた。昔の幼馴染の顔を思い浮かべながら待っていると隣に端整な顔立ちにいい体格ないかにも東京のレベルの高さを見せてくれた。時間が過ぎ正午を越えた。と隣のイケメンが小さく笑った。


「気づかないんだね結構ドキドキして待ってたものだけど」


私に声をかけたのか。いいや私なんぞに用があるイケメンなどいないだろう。


「無視は酷いよ香澄さん」


なんと。驚いた。最近のイケメンは私の名前を知っているのか。


「反応してってば僕もいい加減怒るよ?」


なんと。知らないイケメンは反応しないと気が済まないらしい。


「すいません私待ち合わせをしているもので・・・」


こう答えるのがやっとだった。イケメンは大笑いをした。


「あっはっは!さすがに三年経ってちゃ忘れちゃうよね久しぶり僕は将真だよ」


なんと。このイケメンがあの将真だという。東京って将真さんがいっぱいいるようだ。


「はぁ・・・今日ここで待ち合わせしたじゃないか・・・」


「本当に将真?本当に?」


「僕だって!ほら!香澄ちゃんがくれた手紙持ってるから!信用してよ!」


手に持ってるのは私がいつも使う便箋。手紙の内容は将真宛だ。本当に将真のようだ。


「三年ぶりだね香澄ちゃん君は昔から顔が変わらないなぁ」


「あなたが変わりすぎなの分からなかった」


「僕もこの三年間でかなーり痩せたからねさすがに手紙だと分からないから」


ここまでグダグダ書いていたがさっと要約すると


『幼馴染に会いたいので高校受験→合格→三年ぶりにあった幼馴染がとてつもないイケメンになってた(今ここ)』


うん。納得。


「まぁあと三日もあるしゆっくり計画的に準備して行こうよ」


そうねと言おうと思ったら私の腹の虫がなった。恥ずかしい。


「まだお昼食べてないか・・・じゃあモック行こう!」


「?モック?何それ」


「うーんとね・・・まぁ行けば分かるよ!ほらほら!」


手を掴まれそのまま引っ張られる。変だ。三年前と同じはずなのに凄くドキドキする。


「たらー!ついたよー僕が適当に頼んどくから席座ってて」


これがモックか。皆丸いパンに肉やら野菜やらをはさんでいる。なんだこれ?


「はい飲み物コーラ好きでしょ?」


「憶えてたんだそれはジンジャーエール?」


「正解僕好きなんだよねジンジャーエール」


「うん憶えてたよ昔からそれ飲んでたから」


「あははよく憶えてるね・・・ん出来たみたい取って来るよ」


「はいよー・・・これ私達って恋人みたいに見えるのかな・・・」


「はいお待たせ・・・これハンバーガーって言うんだよ知ってた?」


「ううんまだうちにはなかったよサンドイッチみたいなものだと思えばいいのかな」


「それをもう少し重くしたらこれだねささどうぞ食べてみて」


「うん・・・あーん・・・」


「どう?おいしい?」


「おいしいこれは皆食べるわけがよく分かったよ」


「でしょ!僕好きなんだー!」


ドキッとした。三年前のいやもっと格好いい笑顔があったからだ。思い切りプラトニックだが恋に落ちた。元から落ちているが。


・・・


「やっと起きたよー遅刻するよー」


目が覚めた。いつも聞いてる声だ。夢落ちだった。いつもの部屋・・・じゃない。私の部屋じゃない。


「ほらほらご飯食べて髪の毛ボサボサだよ食べたら梳かしてあげるからね」


なんだこいつ。この犬みたいに奴は。あぁ思い出した。結婚したんだ私。将真と。東京に出て高校を卒業し告白され承諾した。そこから同じ大学に入った。五年の月日が流れ二人とも同じ会社に入った。田舎育ちのせいか人に誠実だと上司に褒められた。立場も落ち着き将真からプロポーズを受けた。そして結婚式を挙げた。会社仲間が来てくれたり遠いのに中学の同級生が電報をくれたりして泣きそうになった。


「はい髪終わったよ口あけてー」


将真は何でもやってくれる。私はまだ自分でできることはやっているがいつか駄目人間になりそうで怖い。


「今日は早く上がって同窓会だからね忘れないように」


「ほーはい」


「はい口ゆすいでー行こうか」


会社までは電車とバスだ。そんなに離れていない。


「将真君ちょっといいかな?」


「はい部長なんでしょう?」


「この件なんだが・・・ここをこうしたらどうかと取引先からいわれてな・・・」


「僕が掛け合ってみますよ保障は出来ませんが頑張ってみます」


「すまないいつも任せてしまってな今度社長に掛け合ってみるよ」


「いえいえまだ僕は部長から倣うべき所がありますから・・・香澄さん一緒に行ってくれませんか?」


「はい課長ご一緒します」


「あの二人さーいつも一緒だよなー」


「結婚してるから当たり前だけどなー」


「お二人とも幼馴染らしいですよ?」


「ロマンチックだねー」


はぁ。将真は課長。私は課長補佐。課長なのに自分から頭を下げに行く殊勝っぷり。こっちが脱帽ものだ。さて今回はいつも難癖をつけることで有名な取引先。今回も変な難癖をつけてきた。


「あぁ将真さんようこそいらっしゃいましたささお掛けになって下さい」


「はいありがとうございます・・・さてこちらの件なのですが」


「あぁそれなんですけど・・・」


ここからひたすらに長い話を聞かされた。それでも私達はどうってことはない。昔はこれより長い話を近所の爺婆が聞いたものだ。


「て事なんですよ!」


「うーんなるほど・・・ですがこの案も私と補佐、部長で一生懸命に考えたものですどうかどうかお願いします」


「・・・分かりました!これで行きましょう!」


「!ありがとうございます!では!」


私がついて行くのはこの仕事が決まったときの将真の笑顔が見たいかもしれない。そんな事を考えている私だった。


「部長!取れました!」


「おぉ!よくやった!ありがとうな!」


「いえ!香澄さんのおかげです!」


いきなり振られても。私何にもしてないし。後ろに突っ立てただけだし。


「うんあとは報告書を出したら帰っていいぞ前々から言っていたしな」


「はい」


いつもよりずっと早い帰宅。あとは身支度を整えるだけだ。同窓会が開かれている場所に行く。


「おっ!香澄じゃん!彼氏づれか~良かったじゃんかよ」


「健太君じゃんか僕だよ僕将真覚えてる?」


「将真ってあの太ってた将真か?見違えたな~」


「まぁね引っ越して痩せていったからさ」


「すごいイケメンになってるー羨ましいよー」


「あはは私もゲットできるとは思わなかったよ」


皆談笑をしている。将真が凄く痩せただとか同級生で結婚してるのは私たちだけだとか。私も将真もお酒が飲めないので烏龍茶だ。盛り上がりそろそろお開きかということになった。バスに乗り少し眠くなった。


「香澄少し眠い?寝てていいよ着いたら起こすから」


「んありがとう」


そこで私の意識は落ちた。次に目を覚ますのは最寄のバス停に着いたときだろう。将真の肩に寄りかかりながら私は夢の世界へといざなわれていった。


FIN




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― 新着の感想 ―
[気になる点] モックとは、おそらく某ハンバーガーショップM社だと思いますが、今時ド田舎の大磯町でもハンバーガーショップはあります。 田舎の出身でもハンバーガーぐらい知っているのでは?
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