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地の文「一人称②」

(うい)くん:小説を書いてみたい少年

(あや)ちゃん:書き方を教えてくれる少女



「では私視点で一人称の説明を続けるわ」


私の正面に座る初くんがボールペンを手にし、力強く頷いた。


「まず一人称は読者が感情移入しやすいわ」


「そうなの?」


「主人公の心情も分かるし、常に主人公と同じ視点に立つことになるからよ」


「へぇー」


「あとは読者に与える情報をコントロールしやすいわね」


「どういうこと?」


初くんが本当に分からないという顔をしている。見ようによってはアホ面なんだけど、それなりに整った容姿のせいで愛嬌がある。


「一人称は主人公の視点。つまりはそれは、主人公の知ってることしか読者も知らない、という状態になるのよ。だってそれはそうよね、主人公のもたらす情報しか読者は得ようがないのだから」


「はあー、なるほど」


心の底から感心しているようで、口を馬鹿みたいに大きく開けている。私が注意すると、彼は少し照れたあとすぐにメモを取り始めた。

恥ずかしがってる顔も可愛くて、もしかしたら女の私より可愛いんじゃ? なんて思ってしまった。


「こほん。一人称は主人公と読者が一緒に物語を進めていく、と考えるといいかもしれないわね」


「うん、分かった」


「いまメリットを話したわけだけれど、次はデメリットを説明するわね」


「え、そんなのあるの?」


「もちろんあるわ。主人公の視点で語るということは、主人公の視点でしか(・・)語れないということよ」


「しか?」


「主人公が心を読む特別な能力でもない限りは、他人の心理描写を出来ないの」


「あ、そっか」


「自分の気持ちの変化はいくらでも語れるけど、他人の気持ちは予想しか出来ないわ」


「~って思ってるみたいだ。とかはあり?」


「それはありよ。主人公が想像してる分には問題ないもの」


「なるほどなぁ」


「後は語り手がいない場所の事も駄目よ。ちゃんとそこにいる人の主観で語ってね」


「それなら、主人公以外を語り手にしたらいいんじゃないの? 今の文ちゃんみたいに」


中々にいい質問ね。いまからその話をしようと思ってたから丁度いいわ。

なんて、初くんを調子づかせるのは嫌だから口にはしないけれど。


「それもいいけど、多用はオススメはしないわね。作者が思っている以上に、視点の切り替えは読者が混乱するわ」


「ちゃんと◯◯視点でって書けば問題なくない?」


まぁ、そう思っちゃうわよね。


「確固たるイメージを持つ作者ならね。でも読者はそこまで強くイメージをしながら読んでる訳じゃないわ。たまに挟むくらいならいいけれど、頻繁に使うのはやめた方がいいわ」


「そっか。そうするよ」


そう言いつつ、初くんの視線が下を向いた。落ち込んでるのかと思いきや、彼は私の足を見ていた。それはもう舐め回すように。


「見てないよ!」


「あら、そうだったの。てっきり足フェチの初くんが、落ち込んだ振りをして私の足を見ていたのかと思ったわ」


「濡れ衣にも程があるっ」


「でも、いま初くんは地の文にツッコミを入れたけど、本来はそれはしてはいけないのよ」


「え、あ、まぁ、それはそうだろうけど」


「つまり、語り手が勘違いして語った事も、真偽のほどは不明のまま読者に伝わるの」


「え、そういう話に持っていくの!?」


「あと、この小説の場合はいいけれど、本来は地の文に登場人物がツッコミなんていれてはいけないわ。先にも言ったけれど、これはあくまで主人公の心の中で思ってる事なの。心を読める人以外が干渉するのは禁止よ。例え間違った思考でもね」


「じゃあさっきのだったら、僕は全く思ってないのに、読者は僕が足を見ていると思ったまま話が進むの?」


初くんの顔が少し青ざめている。それはそうよね。自分が変質者扱いされる所なんだから。


「そういうことね」


「これが地の文にツッコミを入れられる小説でよかったよ」


「そうね」


他人事のように言う私を、初くんが恨みがましい目で見てくる。

本当に初くんをからかうのは楽しいわ。


「さて、とりあえず一人称についての説明は終わりね。もちろんまだまだ細かく説明したい事があるのだけれど、この小説は初歩の初歩だけ解説するものだから、この辺りで終えておくわ」


初くんが呻く程度の声で返事をした。


「次回は三人称の説明です。またね」


「そうそう、言い忘れていたけれど。地の文で語り手が知らない言葉や漢字とかも使っては駄目よ。それに、語り手がしないような口調も禁止よ。僕っ子が俺って言ったりね。あくまで、語り手の視線で書いてね」

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