キャラからストーリーを作ろう
初くん:小説を書いてみたい少年
文ちゃん:書き方を教えてくれる少女
「それじゃあ、少し話を戻しましょう」
「戻すって?」
「ストーリーとキャラのどっちから作る? という話をしたでしょう? 具体的には3話目」
「メタい……」
「初くんはストーリーから作ったわよね」
「うん」
「だからキャラから作る方法を説明するわ」
「え、なんでわざわざ」
「むしろ、なんで初くんだけが構って貰えると思ってるのかしら?」
「ぐっ」
「ふふふ、いいわね。その羞恥に染まった顔」
「せ、性格ひん曲がり過ぎてる」
「ストーリーではなく、こんなキャラの話を書きたいって思った場合なのだけれど」
「華麗なるスルー!」
「簡単に言うと、どうすればそのキャラが活躍できるかを考えるのよ。世界も物語も登場人物も、全部が主人公を活躍させるために作るの」
「それはまた随分な自己中な小説だね」
「キャラ中心と言いなさい。その主人公は完全に空想のキャラでもいいし、あるいは自分をモデルにしたサクセスストーリーでもいいわね」
「自分をモデルにするの?」
「そうよ。初くんはしたことないかしら? 喧嘩が強かったり、頭がよかったり、モテたり、はたまたファンタジーやSFの世界で大活躍する自分、という妄想を」
「う……」
「その反応は肯定ということね。どんな妄想かは聞かないであげるけれど」
(聞かれても言えるわけない)
「なんで私を見るのかしら?」
「ううん、なんでもないよ」
「そ? まぁいいわ。妄想なんて誰だってするから気にしなくていいわ」
「うん」
「と言うか、小説もとい創作物なんて、妄想を現実に投影してるようなものなのだから、気にしてたらやってられないわよ」
「確かに」
「じゃあ、例えばの話をするわね。異世界に行った際にチート能力、あるいはユニークスキルを手に入れた主人公を書く場合ね。それはその能力を使って活躍出来そうな展開を作るの」
「ふむふむ」
「戦闘向きなら、強い奴と戦う。サポート系なら強い敵とそれなりに弱い味方を用意する、みたいなね」
「なるほど」
「話の展開も都合よく作ればいいわ。平和な村が急に魔物や盗賊に襲われたり、逃亡中の美少女に出会ったり。全ては主人公のためよ」
「主人公のため」
「または主人公が成長していく話ね」
「うん」
「これまた都合よく作ればいいわ。いきなり強い敵なんかに遭わずに、ちゃんと段階を踏んで強くなれるようにすればいい。作者がその舞台をいちいち整えてあげればいいのよ。まぁ、最初に絶対勝てないほど強い敵に遭ってしまって、そこから勝つために強くなっていくというのもいいし、うっかり偶然で勝ってしまってもいいけれど」
「ふむふむ。世界そのものが主人公のためにあるって凄いね」
「ちょっと変化球だけれど、ヒロインから考えるのもありよ」
「ヒロインから?」
「困ったりピンチだったりするヒロインがいたとして、彼女を助けるためにはどんな主人公にすべきか、を考えるのよ」
「そういうのもあるんだ」
「ええ、メインキャラには違いないからね」
「なるほど」
「とりあえず今回説明する分はこんなところかしらね。まとめると、さっきみたいにストーリーから作る場合は、ストーリーに合わせてキャラを作る。キャラから作る場合は、世界をメインキャラに合わせる。それだけのことよ」
「うん、分かった」