キャラを設定しよう①
エタりません。書き終わるまでは
初くん:小説を書いてみたい少年
文ちゃん:書き方を教えてくれる少女
「前回予告していた通り、今回はキャラ設定について話すわ」
「よろしくお願いします」
「いいわね。やっぱり初くんはそうやって人に頭を下げている姿が似合うわ」
「全く嬉しくない!」
「なんで私が貴方を喜ばせないといけないの?」
「そうですね……」
「それで、キャラ作りについてだけれど、まず初くんに尋ねたい事があるわ」
「何かな?」
「初くんが書こうとしてる小説は、こういうキャラを書きたいっていうものか、こういう話が書きたいっていうものか、どっちかしら?」
「えっと、それはどういう意味なの?」
「……」
「やめて! 僕に理解力が足りてないのは悪いけど、そんな蔑んだ目で見ないで!」
「そうね、初くんに話すのだから、赤ん坊に言い聞かせるように説明すべきだったわ。分かりにくい言い方をしてごめんなさい」
「謝られてるのに、馬鹿にされてる気しかしない!」
「それで、さっきのだけど。初くんは小説を書きたいと思った時、こんなキャラが活躍する話を書きたいって思ったのかしら? それともこんなストーリーを書きたいって思ったのかしら?」
「えっと、特にどっちかってわけでもないかな。とりあえず書きたいとしか思わなかったし」
「なるほど。じゃあ、ストーリーから決めた方がいいかしらね」
「そうなの?」
「ええ。と言っても、あとでキャラから創る方も説明するけれど」
「ん、わかった」
「ではストーリーね。これはかなり大雑把でいいわ。いっそ、最初と最後だけでもいいわ」
「それは大雑把過ぎない!?」
「そうね。けれど、こういうのはあんまり細かく考えない方がいいわ」
「え、でも設定って細かく決めていった方がいいんじゃないの?」
「それは人によるけど、初くんみたいに突発的に、人に影響を受けて書く場合はやめた方がいいわ」
「なんでさ?」
「書き慣れていない人は設定を煮詰めすぎると、本文に行く前に力尽きるからよ」
「え」
「きっちりかっちり設定を作り込むと、それで満足しちゃうの」
「そんな事ってあるの?」
「あるわ。超! あるわ」
「キャラがブレるほどなんだ」
「小説に限らず、創作っていうのは物凄くエネルギーを使うのよ。設定を作るのにもね。多くの初心者は、この設定を作ることでエネルギーを使いきってしまうのよ。マラソンをする時、運動したことがない人がペース配分が分からないのと同じね」
「なるほど。ゴールに行く前にスタミナを使いきっちゃうってことだね」
「初くんにしては飲み込みが早いわね。その通りよ。そういうわけだから、あんまり設定を作り込み過ぎるのはよくないわ」
「うん、分かったよ」
「ただ、終わり方だけはちゃんと決めた方がいいわ」
「そうなの?」
「設定を作り込まないということは、横道に逸れやすいということでもあるの。まぁ作ってても逸れる人はいるけれど」
「ふんふん」
「けれど、ゴールだけでもしっかり決めてあれば横道に逸れても、最終的にはちゃんとした結末を迎えられるわ」
「へぇ」
「もちろん、書いてる途中でゴールを変えてもいいけど、矛盾が発生しがちになるから、その時は慎重にね」
「ん、了解です」
「さて、それじゃあ初くんはどんなお話を書くことにする?」
「うーん、やっぱり女の子を助けて悪い奴をやっつけて、それで英雄になってとかがいいかなぁ。あ、女の子がお姫様とかいいよね」
「なるほど。じゃあ、とりあえず今言ったのをメモしなさい」
「え?」
「え? じゃないわよ。メモよ、メモ」
「いや、メモ帳とか持ってないんだけど」
「この愚図!」
「ぶげらっ」
「まぁでも無いなら仕方ないわ。これも携帯にメモしましょう。PCで書いてるならメールにして、あとで自分のPC宛てにおくりなさい」
「メモ帳なくてもいいなら、なんで僕殴られたんだろう……」
「殴ったなんて人聞きの悪い。いま自分でふっとんだんじゃない」
「えっ!? いま明らかに文ちゃんが!」
「あら、証拠は? これを読んでる人にはどっちが本当か何て分からないわよ」
「酷い!」
「あ、もう、初くんが一人芝居なんてしてるからそろそろこの回終わるじゃない」
「本当に殴ってないで済ませようとしてる!?」
「はいはい、被害妄想もいい加減にね。じゃあ、今回で終わらなかったからまた次もキャラ設定の話するわね」
「お、横暴だー」