EX:文章力を向上させたい2
初くん:小説を書き始めた少年
文ちゃん:悩みを聞いてくれる少女
「続いて文章の練習について話していくわ」
「うん、よろしく」
「前回はとりあえず量を書きなさいという話をしたわね」
「そうだね。僕も色々書くようにしてるよ。なんだか日記みたいになりそうで、苦戦してるけど」
「そこも客観性を養う練習だと思って頑張ってちょうだい」
「うん」
「……」
「……」
「…………」
「…………?」
「………………」
「……えっと、どうしたの文ちゃん?」
「いえ、なんだか初くんの目が何かを期待してるように見えて……。いえ、気のせいね」
「変な文ちゃんだなぁ」
(でも、確かに私も何か物足りないような?)
(なんだか今回は気持ち安らかだなぁ)
「気を取り直して、始めましょう」
「あ、うん」
「文章力の練習その2は、模写よ」
「模写って、書き写すってこと?」
「そうよ。基本的にはプロの作品をそのまま書き写すことね」
「へぇ~。でも、それって役に立つの?」
「もちろんよ。むしろ、何で役に立たないと思うの?」
「うーん、ただ文字を書いてもそんなに効果がないように思えて」
「そう? でも考えてもみなさいな。スポーツの練習をする時、反復練習はもちろんのこと、プロの選手の真似とかするでしょ? 何でもいいから本屋に行って、スポーツ雑誌でも読んでみなさい。必ずと言っていいほど、プロを参考にしたフォーム説明とかされてるから」
「でも、スポーツでしょ?」
「それに絵描きの方。絵をちゃんと学んで描いている人で、模写したことのない人って多分いないわよ」
「え、そうなの?」
「スポーツでも絵でもなんでもいいけど、模写って上達の近道になるのよ」
「でも、それって盗作とかにならない?」
「丸々模写して、それを自分のだって公開すればそうなるけれど、個人的にする分には問題ないわよ」
「そうなんだ。小説の模写なんて考えたことなかったよ」
「もし全部写すのがキツイなら、一部分だけでもいいわよ。自分が笑えた所、興奮した所、涙した所。そういった文章を抜き出すのでも効果はあるわ。こういう表現の仕方もあるんだって学ばされる事もあるはずよ」
「へぇ、そうなんだ」
「あと、出来れば色んな作家さんのを模写するのがいいわ。1つに絞ると、それこそ盗作みたいに文章似ちゃうから」
「同じ作家さんの違う本とかはダメなの?」
「そうね。結局、同じ人が書いてるもの。文章そのものは同じになってしまうわ」
「そっか。分かったよ」
「色々な作家さんの模写をして、自分の中で消化して、自分なりの文体を作り出せるように頑張りなさい」
「自分なりのかぁ。うん、帰ったら早速やってみるよ」
「ええ、頑張りなさい」
「じゃーねー」
「ええ、さようなら」
「……帰ったわね。やっぱり今日は何か物足りなかったわね。なんかこう、胸にしこりが残るというか。なんでかしら?」
「……」
「…………」
「…………あ」
「今日、初くん罵ってない!」