読む人がいることを意識する
初くん:小説を書いてみたい少年
文ちゃん:書き方を教えてくれる少女
「さて、長かったお話も今回で最終回よ」
「長かったかなぁ? まだ13話目だよ」
「私たちはね……。読者からしたら1年以上」
「あー」
「まぁ、そんなメタい話は置いといて、最終回よ」
「ついに最後かぁ。最後は何を教えてくれるの?」
「最後は、読者を意識するということを説明するわ」
「えーと、人気の出る方法とか教えてくれるの?」
「最初に言ったけれど、そういうのは教えられないわ。今から説明するのは、心遣いとか、そういうのよ」
「心遣い?」
「そう。初くんには必要ないものだから、ピンと来ないと思うけれど」
「いやいやいや、してくれていいんだよ!? 心遣い!」
「嫌よ」
「物凄く簡潔に答えられた!」
「自分しか読まないのならいいんだけれど、なろうに投稿しようというのなら、やはり読み手への気遣いは大事よ」
「僕への気遣いも大事にしてくれていいんだよ?」
「例えば、この小説だと台詞と台詞の間は一行空いてるでしょう?」
「……うん、そうだね」
「これは文字が詰まりすぎてると読み辛くなるから、こうしてるの。文章毎に空ける必要はないけれど、適度にスペースを入れるといいと思うわ。まぁ、効果を狙って文章を詰める場合もあるけどね」
「確かに、みっちり詰まってる文章は読むのしんどいね」
「次に、やたら難解な漢字は乱用しないこと」
「え、でも難しい漢字を使うと格好よくない?」
「そう思う気持ちは分からないでもないけど、読者が意味分からなかったら意味ないでしょう?」
「あ」
「熱心な人は調べてくれるかもしれないけれど、普通は調べてまで意味を知ろうとしてくれないわよ」
「そっか。僕も意味が分からない漢字は読み飛ばしてるよ」
「まぁ、使うときは最低限ルビは振ることね。なろうなら漢字の後ろに()して、その中に文字を入れればルビになるから」
「へぇ、そんなテクニックがあるんだ」
「なろうのマニュアルにも書いてあるから、一度読んでおくといいわ」
「うん、そうしてみる」
「あと、前にも言ったけれど、読者は作者ほど確固たるイメージを持ってないということも忘れては駄目よ」
「9話目の一人称②で言ってたね」
「よく覚えてたわね」
「言われた通りにメモ取ってたからね」
「へぇ、初くんにしては偉いわね」
「でしょ」
「これで喜ばれるなんて……ちょっと虐めすぎたかしら?」
「どうしたの?」
「いいえ、なんでもないわ。そのアホ面を見てたら、今まで通りでいいか、と思っただけよ」
「アホ面って人生で初めて言われたよ! にしても、なんだかチャンスを逃した気がする……」
「あとは読者が覚えきれないから、登場人物は一気に出しすぎない。出しても、後でちゃんと補完すること」
「僕は1ページで5人も出たら覚えきれないよ」
「でしょ? マンガやドラマみたいに絵があるならまだしも、文字だけの小説だと覚えきれないわ。設定とかも一度書かれたきりだと覚えてもらえなかったりね」
「あとで、そういう設定あったなって思うよね」
「とまぁ、色々言ったけれど、要は読者の立場になって考えようって事よ」
「僕に出来るかなぁ」
「出来なくてもいいのよ。大事なのは理解してもらおうとする事。そうすれば自ずと出来るようになっていくわ。しようとしなければ。いつまで経っても出来ないけれどね」
「うん、分かった。とりあえずやれるだけやってみるよ」
「その心意気よ。書きたいって気持ちを私は応援するわ」
「ありがとう。僕頑張るよ!」
「と、もうこんな時間ね。じゃあ帰りましょうか」
「うん」
「ここまで付き合ってくれて有り難うね。皆さんも、無理しない程度に、楽しんで小説を書いてね。それじゃあ、さようなら」
「ばいばーい」