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地の文「三人称②」



(うい)くん:小説を書いてみたい少年

(あや)ちゃん:書き方を教えてくれる少女




「三人称講座2回目よ」


「はーい」


初が元気よく手を挙げると、そのテンションが気に入らなかったのか文がジロリと睨んだ。

眼鏡で誤魔化しているが、文は元々目付きが悪い。ただでさえ威圧感があるのに、意思をもって睨みを効かせると、その効果は抜群だ。

ただ、付き合いの長さのお陰で初はその睨みに比較的耐性があり、今回も簡単に受け流せた。


「誰の目付きが悪いのよ、失礼ね」


「いや、地の文にツッコムの止めようよ」


「それもそうね。えーと、なんだっけ。そう、三人称ね」


「うん、よろしく」


「三人称の場合、初心者が困りやすいのは、文末の形よ」


「文末の形?」


「~だ。~だった。とか、句点の前の言葉ね」


「それが問題になるの?」


「一度やってみるわね」


文はそう言って作者へ役割を丸投げした。初は少々呆れながらも、特に言うことはなく、気遣うように苦笑いした。

放課後の校舎は静まり返っていた。遠くからは運動部の声が聞こえてきていた。しかし、それが逆に校舎の静かさを増していた。

普段はここまで静かではないが、いつも校舎内のBGMを担当している吹奏楽部は休みだった。


「とまぁ、こんな感じね。作者の筆力不足で分かりにくいかもしれないけれど」


「丸投げしておいてその言い草……さすが文ちゃん」


「これだと文章がブツ切れな感じするでしょう?」


「確かに、なんかこう……流れが悪いって言うのかな」


「そうね。これを直すには単純に、過去の事は~た。で、現在進行の事は~る。にすればいいわ。さっきの文章なら」


文はそう言って作者へ役割を丸投げした。初は少々呆れながらも、特に言うことはなく、気遣うように苦笑いした。

放課後の校舎は静まり返っている。遠くからは運動部の声が聞こえてきている。しかし、それが逆に校舎の静かさを増していた。

普段はここまで静かではないが、いつも校舎内のBGMを担当している吹奏楽部は休みだった。


「何となく変わった?」


「そんな劇的に変わるものでもないから。あとは体言止めと呼ばれる手法についてね」


「体言止め?」


「名詞で文章を終える事よ」


文が黙ることで静かになる教室。傾いた夕陽から射し込む光。それが生み出すのは日常にありながらも、非日常に迷い混んでしまったかのような幻想的な風景。


「こんな感じね」


「何かサクサク読み進められた気がする。それに印象深くなったって言うか」


「体言止めをすると、テンポよく感じるのよね。ただ、やっぱりこれも多用は禁物よ」


「そうなの?」


「あんまりやると文章がクドくなっちゃうのよね。だから、使うのはたまに位にしておいた方がいいわ。何かしらの表現を連続で行いたい時とかね」


「何らか……さっきの幻想的な風景とか?」


「そうね。物分かりが良くて気持ち悪いわね」


「誉め言葉と思わせてからの罵声!」


「ま、三人称についてはこんなところかしらね。まだまだあるけれど、それはこれから小説を書き進めていって、疑問に感じたりしたら調べるといいわ」


「その時は聞いたら教えてくれる?」


文は一度物凄く嫌そうな顔をした後、すぐ笑顔に戻り、


「いいわよ」


と言った。


「何だかスッキリしない終わり方だ!」


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