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アナザー・ワールド・オンライン  作者: ジン
潜入!天津乙女女学院編
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カルメン・シルヴァ①

更新が滞っている間もお読みいただいた方々ありがとうございます。

お気に入り登録も増えていてびっくりです・・・汗。

 生まれつき身体が弱く、日常生活をおくるにも支障をきたすほど病弱だった私は、自分の部屋から出ることも叶わず一人孤独に生きてきました。

 朝起きて食事をとり、屋敷の窓から見える景色を眺め、昼食をとり、また窓の外を眺める。そんなルーチンワークをずっと繰り返すだけの退屈な毎日。

 友人もおらず、言葉を交わすのは両親とメイド位のもので、同年代の友人が欲しいと思っても外に出る事も叶わない私にはどうする事も出来ず、外から同年代の子を屋敷に招こうにも、少し会話をしただけで体力を消耗し倒れてしまうほど病弱な私には友人と呼べるまでの関係ももてる同年代の子などいませんでした。


 そんな私が転機を迎えたのは12歳の頃でした。


 母が部屋にやって来たかと思うと車椅子に乗せられて向かった先は屋敷の応接間。そこに待っていたのは綺麗な白髪を纏めた年配の女性でした。

 柔らかな雰囲気を纏ったその女性はメイディラントと名乗りました。

 そう、私が通うことになった天津乙女女学院の学院長だったのです。週に数回ほど屋敷に招かれる家庭教師と懇意にしていたというメイディラント学院長は私の事を聞いてやってきたとの事です。


 病弱な私でも通える学院がある。是非、娘さんを今年から私の学院に通わせていだだけないでしょうか?というお話しでした。


 体調がいい時は教室に、体調が悪くなった際は優秀な光魔法の使い手が保険医をしている保健室に。

 例え喋ることが叶わずとも、見聞きした事を覚える位は出来る。それに、と学院長が付けくわえた言葉が両親を、何より私を学院へと誘いました。


「お嬢さまのご病気(・・・)も直せるかもしれません」


 という言葉に。


 学院長の言葉は正しかった。

 生まれながらに病弱だったと思われていた私は実は魔力欠乏症という病気だったのです。

 一般的に魔力欠乏症といえば魔力を使い過ぎて陥る目まいや頭痛、呼吸不全や意識混濁等といった症状が起こる事を言うのですが、私の場合は一般の人よりも魔力回路が細いらしく体内を循環する魔力が少ないが為に、呼吸不全やめまい等の症状に陥ってしまっていたのだと教えられました。


 魔力は生物が生きていく為に必要不可欠なもの。そんな魔力を上手く体に循環させられない私は日常生活を送るにも支障をきたしていたのです。


 そんな私でも学院生活を行えるよう、メイディラント学院長は色々な便器を図ってくれました。

 まず全寮制の学院である天津乙女女学院ではあるのですが、寮生活に支障をきたす恐れがあるとのことで自宅からの馬車通学が許可されました。

 これにより私は毎日学院へ自分の足を使うことなく通う事が出来るようになったのです。

 寮生活には憧れがあったけれど、今の私では何をするにも直ぐに魔力欠乏症によって倒れてしまう恐れがあるため、寮生に迷惑がかかると思い諦めました。

 天津乙女女学院はエスカレーター式の学院なので、今は中等部に入学を果たし、中等部を卒業し高等部へと上がる頃には治療によって私の魔術回路も太くなり、日常生活を支障なく送れるようになるかもしれない。そうなれば寮へ入寮すればいい。そう思っていました。


 けれどそんな私の思いも虚しく、高等部へ上がっても私の魔術回路は細いままでした。

 

 



 高等部に上がり、私の体力が上がった事で週に数回ほど学院長の魔法を使った治療を受けられるようにはなったけれど、治療の効果は薄い。

 学院長の魔力によって魔術回路を一時的に増大させ、身体を循環する魔力量を増やすことで日常生活を送るのに支障のないようにしてもらい、最終的には魔術回路を太くするのが目的なのですが効果は半日ともたず、再使用には数日間を置かなければ私の魔術回路が伸縮に耐えきれないとの事でとても在学中に完治するとは思えませんでした。

 ただ週に数回とはいえ、自分のクラスに通学する事が出来るようになったのは行幸でした。

 おかげさまで同年代の友人も何名か出来た事ですし。


 ただ遅々として私の魔術回路の増大化が進まない中、高等部での生活も過ぎ去ってしまうのだろうか?

 そんな悲壮の念を抱いていた私に2度目の転機が訪れたのは高等部へと上がって1年目の春でした。


 桃色の花びらが綺麗な桜と呼ばれる東方の樹木が植えられている一角と、校舎から演舞場へと続く道に、道の左右に存在する教会と体育館が見える窓の景色。

 いつもと変わらない景色ではあるのだけれど、つい最近変わった事が一つだけありました。


 それは校舎の東側に併設された食堂の一角にある購買に新しい店員が入ったという事です。


 直接会ったことは無いのだけれど、天津乙女女学院初の男性職員という事で大変話題になっているらしい。

 なんでも男性には見えないほど中性的な容姿なそうで、学院長からの強い後押しがあったとのこと。学院長推薦の職員なんて過去を遡っても数人しかいないというのに・・・。

 そんなちょっとした興味からいつか会ってみたいな。と思ったのがきっかけだったのかもしれません。


 その日、いつものように馬車で学院に向かい、いつものように教室ではなく保健室へと向かい、いつものように保健室の先生が使う【遠見】の魔法で自分のクラスの授業を見ながら、ふと目線を窓へと向けた時でした。

 保健室の窓から見える景色は演舞場へと続く道ともう一つ。食堂の景色が見えるのですが、食堂に併設されている購買の様子も見渡せるのです。

 とはいっても、保健室から購買までの距離はそこそこあったりするのだけれど、先生にかけていただいている【遠見】の魔法を使えば設定した場所を見る以外に自分の目で見ている景色の縮尺を変更することも可能だったりするわけで・・・。

 まぁそんな訳で窓から購買の方を見た時に噂の男性職員が目に入りました。


 あの方がそうなのかと、授業よりも興味があちらに移った私は保険医の先生には申し訳なかったのだけれど、遠見を使ってその男性職員を見てみることにしました。

 青みがかった黒髪に優しそうな目をした方でした。確かにやせ形の体系に中性的な容姿をしているので女性と見間違われる事もあるのだろうな、と思えるくらいの方。

 彼は購買の棚にある商人の陳列を整理するとカウンターに座りじっと店番をしているようでした。

 時折元々購買で働いている年配の女性と交替して働いているようだが、お客はあまり来ないようです。確かに購買で雑品を購入するような人はこの学院では少数派だろうし、購買で販売されている食品はどれも食堂で食べる料理には味が劣る。男性職員に興味のある生徒達も直接声をかけるのはさすがに抵抗があるようで遠巻きから購買の中を窺う程度のようです。


 私の第一印象は大人しくて寡黙な人。という評価でした。


 あくる日、私がいつものように保健室へと通学してきた時です。

 保険医の先生から「今日は地下演習場で魔法の実技が行われるようだから実際に目と肌で感じてきなさい」と勧められ、学院長の御力をお借りして身体と魔術回路を強化した私は朝からクラスに向かいました。

 教室に入ると笑顔で私を迎えてくれる学友の皆に感謝しつつ、ホームルームを受け、クラスメイト達と地下実習場へと足を踏み入れました。

 【遠見】の魔法を使って屋外実習場での魔法学科の授業中の様子は見ていたけれど、実際にクラスメイト達が魔法を巧みに操り、研鑚を積んでいる様は私に少なからず高揚感と焦燥感を同時に抱かせた。

 実際に見る魔法。本来であれば私でも使えるような簡易な魔法。でも私の魔力回路は魔力を多く流せない欠陥品。その為、魔法を使いたくても使えない。使おうとすると生命維持に使用している魔力以上の魔力が必要となり、結果として私は意識を失ってしまうのです。


 けれど、今は魔法を使えなくとも、いつかは魔法が使えるようになるはず。

 魔法を使った戦闘訓練を見ておいて損になる事はありません。攻撃魔法、防御魔法、補助魔法と呼ばれる魔法の種類は千差万別。

 知識として知っていても、いざ実際に使用する際の用途やタイミングなど、経験しなければ分からないことはいくらでもあるのです。

 クラスメイトたちの模擬戦闘を見て、少しでも多くの事を吸収できるようにと私は目を食い入るようにして授業を受けていました。


 3時限目の魔法学科が終わった際、少し疲れを感じた私は一度保健室へと戻り保険医の先生に回復魔法をかけていただいた後4時限目の魔法学科の授業へと戻る為に廊下を歩いていました。

 4時限目の授業開始を告げる鐘が鳴り響いているのに焦った私は小走りで地下演習場へと向かっていました。


 その時です。


 ふと廊下を香しい甘い香りが漂っているのが分かりました。

 お昼も近い事ですし、食堂から漂ってきている匂いかとも思ったのですが、匂いの元はどうやら購買のようです。

 購買で販売されている商人は全て学院外にある数ある商店から仕入れられたもの。

 決して購買の中で作られているわけではありません。いったいどういう事なのかと疑問に思った私は授業が終わった後に数人のクラスメイトたちと共に購買へと訪ねてみることにしました。



 4時限目の授業が終わり購買へと向かった私達を出迎えたのはやはり先ほど感じた香しい匂いでした。

 甘い焼き菓子のような匂いを辿って視界を購買の中へと移すとそこには一人の青年の姿がありました。

 いつか見かけた無表情のような表情はそこには無く、ただ純粋に焼き上げたケーキを嬉しそうに運んでいる彼の姿がそこにはありました。

 クラスメイトたちと会話した結果、私は意を決して購買の中へと足を踏み入れる決意をしました。


 彼のほんわかした様子と香しい匂いを放つケーキに触発されたせいかもしれません。

 私の接近に反応した購買のスライドドアがゆっくりと開き、甘いケーキの芳醇な香りが私を包みこみました。

 思わずお腹から可愛らしい音が鳴った私は聞かれてしまったかと顔を真っ赤にしながらも声を張りこう言いました。


「そのケーキは売り物ですの?」と。



 


2章まではきちんと書きたいと思います。

3章以降はプロットを簡単に載せられたらと・・・。

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