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アナザー・ワールド・オンライン  作者: ジン
潜入!天津乙女女学院編
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ヘクセンナハト⑩

 戦いは観客達の思い描いていたものとは全く異なった状況となっていた。


 成績優秀、容姿端麗、非の打ちどころのない美少女であるアストリット・フォン・ハーデンベルグの圧倒的なまでの内包魔力を活用した大規模魔法によって、もしくはその類い稀なる身体能力を生かした近接戦闘によって成す術もなく一年生代表チームは窮地に追いやられ敗退するものと思われていたからだ。


 だが現状はどうか?


 吹き荒れる炎の風が、凍てつく氷の礫が、宙に浮かぶ光球から放たれる光の線が、その全てがアストリットへと襲い掛かっている。

 カトレアからの試合開始の合図を受け、一年生たちが自分の持つ全ての力を込めた魔法を放とうと準備をしている最中、彼女たちの対戦相手であるアストリットは開始地点から微動だにせずに静かに佇んでいた。

 アストリットの真意を測りかねる一年生たちではあったが、ここは好機とばかりに練り上げた魔法をアストリットへと放ったのだ。

 対するアストリットは必要最低限の動きや魔法で回避しつつ、涼やかな顔で自分を攻撃してきている三人を見てみると三者三様、面白い位に違う顔つきでいるのをただただ見ていた。

 それぞれに秘めた思いが顔に出ているのだろう。対戦者である一年生代表チームのメンバーそれぞれがアストリットに対して何を思っているのか。それはアストリットには分からない。

 

 だが顔から、気配から、魔法から伝わってくる想いが、アストリットに瞬殺という攻撃方法を意識から排除させていた。


能力限定スキルリミッターで制限されている俺のステータスは最大の50%。例え半分でも彼女たちを倒すのには有り余る力だ)


 極限まで引き上げられたレベルとそれに付随する形で上昇したステータス、各種スキルは既にアストリットというキャラクターを一キャラクターの枠には収まりきらない程の戦闘力をもたらしていた。

 それ力を以ってすれば目の前にいる彼女たちを殲滅する事は容易いだろう。


(けどああ宣言した手前、ちょこっと教授してやろうかな。魔法の使い方ってやつをっ!)


 ウイルスに侵されているユウを浄化するスキル【超越浄化スピリアルパージ】を使用するためは攻撃スキルを使い、ユウにダメージを与える事が必須案件だった。

 それを成す為にアストリットは肉体ダメージを反映させるべく、ヘクセンハナトで使われている結界の肉体ダメージ変換機能を無効化した試合を提案した訳だが、納得させるために言った嘘である学院を去るという事。

 そして来年に控えている学院対抗試合であるワルプルギスに向けたより実践的な試合形式での試合を経験させたいという思いを伝え、ようやく対戦にこぎ着けた訳だが、本来の目的であるエグランテリアにおけるウイルスの除去を最優先に考えるならば、アストリットの持つ圧倒的なまでのステータスに物言わせて戦いを決着させればいいだけである。

 けれどアストリットには___久世にはそれが出来なかった。


 短い間ではあったが目の前にいる一年生達だけではなく、天津乙女女学院にいる教職員を含めた数々の人物と接してきたのだ。愛着も湧くというものである。

 この学院を、ひいてはこの世界サーバーを去る前に何か少しでも形になるものを残しておきたい。そんな考えを思うようになっていた。


 ならば魅せよう。そして教えよう。わたしという存在の魔法を!


 意思を固めたアストリットの行動は早かった。

 動かずにいた開始地点から荒れ狂う魔法の渦を掻い潜ると3人へと接近する。その時の速度は目を見張るものがある。まるで身体強化魔法を使っているかのような動きだが、アストリットは何の魔法も唱えてなどいない。


「っとに化けモンだなぁあっ!!」


 接近するアストリットに毒づきながらマリーは周囲に漂わせていた光球からいくつもの光線が放つ。

 魔法衣による魔法強化の影響で威力も速度も上がっているレーザーではあったが、アストリットの動体視力はしっかりと迫るレーザーを捉えていた。

 迫るレーザーを避けようともしないアストリットの動きにマリーは目を大きく見開く。


(死ぬ気か!?)


 マリーが放つレーザーの威力をもってすれば普通の人間など一瞬で蒸発する。そんな危険度の高い魔法であることはこの数カ月を共に過ごしたアストリットも承知のはずだ。

 それを承知の上で避けようともせずに真っすぐと突っ込んでくるアストリットに驚愕の表情を隠せないマリー。

 

 なのに何故コイツ《アストリット》は避けない?


 避けようともしない。この魔法の威力を侮っているのか?魔法衣すら身に纏っていないその状態でどうする?


 様々な思考がマリーの頭を過った。


 混乱するマリーをよそにアストリットへと迫ったレーザーはアストリットの目の前までくると、


「んなっ!?」


 アストリットの寸前で折れ曲がり明後日の方向へと進んでいった。


 驚きを隠せないマリーだったが既に寸前まで迫っているアストリットに応戦すべく手に持った呪いの鉈(カースマチャット)をグッと握りしめる。


「マリーちゃん!」


 とそこに武器化で生み出した大剣、紅蓮爆剛刀を振りかざしながらカルメンが迫った。

 マリーへと接近していたアストリットの脳天をかち割るような重い一撃音が辺りに響き渡る。

 受ければ骨が拉げてもおかしくない一撃だったが、アストリットはいつの間にか出現させていた短刀を大剣に沿うかのように刃を合わせその一撃を回避した。


「甘い」


 小さくそう呟くとアストリットは着地したカルメンへ回し蹴りを放った。

 あまりに速度の速い蹴りにカルメンは反応も出来ずに吹き飛ばされた。吹き飛ばされ、バトルスペースのタイル上を何度も転がりながら停止したカルメンだったが、負傷個所は少ない。

 アストリットが狙って大剣の腹をけり飛ばした上に威力調整もしたからだ。カルメンもそれを分かっているのか、悔しげに顔を歪めている。


 アストリットがカルメンを吹き飛ばしている間もマリーは魔法を練っていた。

 マリーの周りに浮かぶ光球の数も大きさも徐々に増していき、


「うらぁっ!」


 吼えるように叫んだマリーの声とともにアストリットへと放たれ、先ほどのレーザーよりも数も多く線も太いレーザーがアストリットを襲う。


 しかし、


「なんで効かねえんだっ!」


 レーザーの全てがアストリットの面前で四方八方へと曲がり飛んで行った。

 もしマリーが自身の魔法についての特性を理解し使用していれば何が起こっているのかを理解し対策を講じれていたかもしれないが、放てば相手が焼け死ぬだけ。という過去の結果からこれ以上この魔法について研究開発を進めるといったことをしてこなかった怠慢が、慢心が現状を対処することへの対応力を、理解力失わせていた。


「タネが分かったらマジックは面白くないでしょう?種明かしは試合が終わったら教えてあげる」


 アストリットは地面を滑るように移動しながらマリーへと肉薄するとマリーの耳元でそう呟いた。


 次の瞬間。


「クソがっ・・・」


 吐き捨てるように漏れ出た声とともにマリーは意識を刈り取られた。

 意識を失い、地面へと倒れこみそうになったマリーをアストリットは優しく受け止めると床へとマリーを降ろすと接近してきているカルメンへと向き直った。


「あと二人」


 そう呟いたアストリットの視線は桃色の髪をした女の子を捉えていた。


 試合は、続く。


 思いもよらない結末に向かって・・・。

しばらく振りの更新だというのに短くて申し訳ない。


教えるとか言っておいて瞬殺するアストリット氏・・・orz

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