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アナザー・ワールド・オンライン  作者: ジン
潜入!天津乙女女学院編
46/54

ヘクセンナハト⑤

遅くなり・・・(汗

 発生した濃霧を見て静かに溜息を吐いたユウは今なお剣戟の音が鳴りやまないカルメンとシャルロットの方を見た。

 二人が動く度に赤い閃光と銀色の閃光が入り混じり剣と槍がぶつかり合い甲高い金属音が辺りに響き渡る。力や技能は一年先輩であるシャルロットの方が一枚も二枚も上手である。

 しかし防戦一方とならない程度にはカルメンも己の武器である大剣を振るい善戦していた。


「さて、援護援護」


 事前の取り決め通り、遠距離魔法による援護射撃を敢行しようとするユウ。


「っとその前に」


 ユウの着ている制服が光に包まれ、ユウの魔力を元に変質した新たな服が現れた。

 デバイス変化の一つ、魔法衣化である。 

 黄色を基調としたアンダーアーマーの上からハーフコートを羽織った姿になったユウは指抜きグローブのついた右手を前方へとかざすと魔法をイメージする。

 イメージするのは鋼鉄の巨人だ。材質は土、関節部には球体の土をはめ込むことによって可動範囲を向上、腕を太くより強靭に。つける名は、


「フレイムゴーレム」


 唱えた魔法により地面のタイルを分解しながら構成されたゴーレムはユウがイメージした通りの姿で現れた。フレイムの名の通り、両足よりも巨大な両腕が真っ赤に燃え上がっており、その手に触れたものは容赦なく灰と化すだろう。

 あまりの重量の為、地面に拳を下ろし、その姿はさながらゴリラのようである。

 続いてユウはさらにイメージを膨らませる。

 イメージするのはブロックで出来た壁のようなゴーレム。何者も寄せ付けない強固な盾を持つ腕に、それをささえるだけの力を持つ足腰をイメージする。


「ロックゴーレム」


 地面のタイルがせり上がり人に似た形をとる。現れたゴーレムは両腕に巨大な盾がくっ付いており、両腕を合わせるとゴーレムを覆い尽くすような巨大な盾が出来るという防御特化のゴーレムが誕生した。

 どちらも巨人創造(クリエイトゴーレム)という土属性の中級魔法によって作られたゴーレムである。

 生み出された個体は術者のイメージ力の強さによってその容姿も強さも備えている能力も異なるという汎用性に富んだ魔法だ。ただし、実力が乏しいものが使えばそれ相応のモノしか出来あがることは無いが。

 ユウの場合はおとぎ話に出てくる騎士をゴーレムで再現してみたのだが、中々上手くいったようで本人もうんうんと唸っている。

 ヘクセンナハトに挑むに辺り、ユウは自分の技能を見つめなおした。今までは接近戦をメインに戦っていたのだが、ロゼやカルメンと何度も模擬戦を行っているうちに自分が遠距離魔法や支援魔法の方が得意なのではないかと気付いた。

 それからは遠距離砲撃魔法やゴーレムのような自立可動型の魔法を中心に学び、もともと持っていいる祝福ギフトも相まって無事、ヘクセンナハト本戦に出場する事と相成ったわけだ。


 自分の身を守るゴーレムを生み出したユウは早速とばかりに魔法を練り上げる。

 霧によって覆われたマリーの方を一瞬見やり、援護射撃などしたら後で何を言われたものか分かったものではないと視線をカルメンとシャルロットに移す。


「はあっ!」


「甘い!」


 下段から振り上げられた大剣を切っ先擦れ擦れで回避したシャルロットが回し蹴りをカルメンに放つ。 振り上げた大剣の反動で身体の重心がずれていたカルメンはそのまま大剣を宙へ放り投げると後方へバク天をしながらシャルロットの回し蹴りを回避した。

 武器を手放したカルメンに向かってチャンスとばかりに槍を構え、体勢を低くして接近しようとするシャルロット。槍の切っ先がカルメンに届く寸前、爆音と共に何かがカルメンとシャルロットの間を遮った。

 演舞場の床を砕き突き刺さった物は先程カルメンが宙へ放り投げた大剣であった。カルメンは突き刺さった大剣を引き抜くと同時にシャルロットへと斬りかかった。

 それは先程と同じ工程。下段からの切り上げである。

 

 二度も同じ攻撃。しかも一度目も外している攻撃をするなど甘い。


 シャルロットはそう内心思いながら後方へ一歩下がり危なげなく大剣をやり過ごすと今度は槍を右手一本で構え、


(終わりだっ!)


 空へと切っ先を向けている大剣、ずれた重心。先程と同じ展開にシャルロットは勝利を確信し槍をカルメンへと放った。


「はあああ!」


「なっ!?」


 突如柄の片方が爆ぜる大剣。驚愕するシャルロット。


 爆風によって空へと向いていた大剣がその重量と爆風により下へと恐るべき速さで迫って来たのだ。

 咄嗟の出来ごとに反応が遅れたシャルロットの腕へと大剣が直撃する。そのまま大剣は大きな音と共に地面へと突き刺さる。


「ぐうう!」


 強烈な痛みにシャルロットの顔が苦痛に歪む。

 もし結界が張っておらず、肉体ダメージにまで及んでいれば間違いなくシャルロットの腕は切断され、出血多量で死んでいただろう一撃。

 会場で試合も見守っていた生徒たちは誰もがシャルロットが受けた痛みを想像し勝負は決まったと思った。


 だが、カルメンはそこで終わらなかった。終わらせなかった。


 地面へと大剣が突き刺さった次の瞬間、再び爆音と共に大剣が動き出す。それも上段への切り上げとなって。

 切り上げられた大剣はその場に止まっていたシャルロットに吸い込まれるように接近、切り捨てる。

 切り上げられたシャルロットはその威力に宙に投げ出される事となった。


「ふっ!」


 宙に投げ出されたシャルロットを追撃するべく空へ舞うカルメン。

 空中で身動きの取れないシャルロットに狙いを定め、大剣を何度も振るう。 

 大剣は振るわれる度、大きな爆音が演舞場全体に響き渡った。大剣の振るわれる速度は速く、動体視力を魔法で底上げしなければ追えないレベルであった。


 カルメンの使用する武器。それはグレートソードとも呼ばれる刀身が180メートルを超す巨大で重厚な刃を持つ大剣だ。

 鋼で出来た刀身をすっぽり覆う様に赤い結晶が纏わり付いており、鍔と柄の間に推進機スラスターのような物が搭載されている。爆発系統の魔法を使用する事により推進機スラスター内部で爆発が起こり爆風によって重量級の大剣を加速させ振るうスタイルの戦闘を可能とするカルメン専用武器。


 名を【紅蓮爆剛刀】


 紅蓮爆剛刀の威力を体一つで受けたシャルロットはあまりの威力に気絶していた。

 空から墜ちてくるシャルロットを先に地面へと降り立ったカルメンが地上で受け止めると観客席から歓声と悲鳴が上がる。

 カルメンが勝利したことに対する同級生たちの歓喜の声とシャルロットファンたちのシャルロットが敗北したことへの悲鳴だろう。


「油断大敵ですわよ。お姉さま」


 気を失ったシャルロットへとそう呟いたカルメンは地面へとそっとシャルロットを降ろすと未だ深い霧に覆われたマリーとヴェロニカの方を見やる。


 これで3対1。


 それもデバイスの武器化、魔法衣化が出来る者同士の戦いで。である。


 もう勝敗は決した。


 実力に大きな差がある三年生であるならば兎も角、相手は二年生。自分たちの一個上の先輩だ。

 条件が同じならば数も多いこちらが有利。それにヴェロニカの相手をしているのもあの(・・)マリーである。勝利はもう目前だろう。


 そう判断したカルメンは霧の結界を解除し総攻撃を仕掛けようとユウに合図を送るべくユウを見る。

 ユウも同じことを思ったのかコクンと頷き、結界を解除しようと思った矢先、


「それ以上その口を開いたらこの場で焼き殺しますわよマリー!!」


 ユウの張ったディープミストを霧散させ、バトルスペース全域にまで届く熱風を生み出した張本人であるヴェロニカの怒りを含んだ声色に思わず二人は硬直する。

 霧か晴れ露わになった場所にはペタンと座り込んでヴェロニカを見ているマリーと全身を炎の魔神と化したヴェロニカが君臨していたのであった。



ノロノロと新作を書いている所為で更新が遅くなっております。

平にご容赦を

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