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アナザー・ワールド・オンライン  作者: ジン
潜入!天津乙女女学院編
41/54

変化

遅くなった分、若干長めになっております。

 時は移ろいアストリットが天津乙女女学院に潜入を始めてから数カ月が経ち、彼女は三年生になっていた。

 桜が色づき始め、暖かな風が気持ちよく頬を撫でる今日この頃。本日は天津乙女女学院の入学式の日だった。

 ヴェロニカ・アーノットを救った後もアストリットがまだ天津乙女女学院に潜入し続けていることには理由がある。

 それはアストリットの数百メートル先からこちらに向かってくる一見すると少女にしか見えない人物が関係していた。

 ヴェロニカが感染していたウイルスを駆除し学院を去り、さっさともう一人のウイルス感染者である二階堂ユウを闇討ちでもしてさっさとエグランテリアからおさらばしようと安易に考えていたアストリットだったがその目論みはすぐさま潰えた。

 その理由というのが二階堂ユウが妹のカレンの代わりに天津乙女女学院に身代わりとして入学するという暴挙に出た事だった。

 病弱な妹に変わって入学するという女装潜入物のゲームにありがちな理由で学院に入学したユウに対し、「ああ。ココはどんなに現実と同じだとしても仮想世界だったんだな・・・」と納得し、同時に世界の理から外れた人間___つまりこの惑星サーバーの製作者や管理者の悪意のようなものを感じ鬱な気分になった。

 それでもウイルスを駆除するという任務に変更は無い。現実世界に対する執着も徐々に薄れ仮想世界で生きるのも悪くないかななどと思い始めているアストリットは気楽に考えることにした。


 その為、ユウが天津乙女女学院に入学してくるのを待ち、接触する機会をうかがっていたのだ。

天津乙女女学院の最高権力者である学院長であるシェリーもアストリットの協力者である為、学院側のサポートも完璧だ。

 アレスの格好をしたドッペルゲンガーも購買の店員をしつつユウの動向を監視してもらう手筈となっている。

 準備は整った。後は彼が入学してくるのを待ち、スキルを放てる環境を作るだけである。


 周りの視線が気になるのか俯きながらアストリットへと真っ直ぐ歩いてくるユウは案の定そのままアストリットと激突する形となった。

 尻もちをついたユウに手を差し伸べつつエネミーサーチのスキルを唱えるアストリット。AR表記されたステータス画面の状態異常欄にはウイルス感染を表すマークがあった。

 頬を赤らめながらアストリットにお礼を言い、足早に立ち去るユウを見送ったアストリットは風で乱れた前髪を整えるとその場を後にした。


 数ヵ月後、事態は動き始めた。

 三学年ともにヘクセンナハトへと向けてクラス代表を、そして学年代表を決める選抜戦を行っていた。

 三年生の代表者は二名。雷の魔法を得意とする紫苑と我らがアストリットが当然の如く代表者となっていた。

 二年生ではブルー・ヘブン寮から二名。ヴェロニカ・アーノットとシャルロット・シュトラウスが代表者となり、レッドフェアリー寮からエイミー・ヴァンダービルトという桃色のマッシュカットヘアの生徒に決まった。


 残すは一年生のクラス代表を決めるのみ。となった所でアストリットは異変に気付いた。

 気付いたのは学園内ではなく、寮で休んでいた時だった。

 夕食を食べ終え、自室にて休憩をし、さて風呂にでも入ろうかと浴室に向かい脱衣所にてアバターをアストリットからアンタレスへと変更する。

 外見をアストリットのまま風呂に入るのは久世の青少年精神がもたなかったし、何より自身の身体とはいえ、絹のように滑らかな肌にキュッと締まったウエスト、現実ではあり得ない細身の体型に張りのある胸を持つ女性の身体を直視するのは勇気がいったのだ。

 風呂は久世が寛げる数少ない空間なのだ。誰も入ってこないよう一番最後に順番をまわしてもらっているのもゆっくり寛ぐためである。

 決して麗しき乙女たちが入浴した後の風呂の湯に浸かりたい等という邪な考えからでは無い。

 いそいそと服を脱ぎ、洗濯かごへと雑に放り投げるとガララと音を立てながら浴室へのドアを開き身体を洗ってから風呂に浸かる久世。

 浴槽には乳白色の入浴剤が入っており、うるおい成分が入った角層の深部まで浸透しカサつく肌もしっとり潤うという効能があり、お年頃の乙女たちの肌を美しく保つのに一役かっている。

 まあ、男の久世には関係のないことではあったが・・・。


 浴槽は寮の浴槽だけあって大人数が一度に入れるように大きく作られていた。それこそ日本の銭湯のような大きさである。

 そんな風呂の壁に背を預け、ゆっくりと繕いでいるステータスによって大幅に強化された久世の耳に聞きなれた。しかし今聞こえるはずの無い音が聞こえた。

 そう、カチャッと脱衣所に入るドアを開ける音である。


「!?」


 久世はバッと風呂から立ち上がり浴室へと繋がるドアを見つめ、そして考える。

 この時間帯は俺に割り当てられた風呂の時間だと。

 今までの数ヶ月間。この時間帯に風呂場へと侵入してこようとした者などいない。

 では何故今日に限って俺が風呂に入っているのを知りながら風呂場に来るものがいるのかと。


(確かにウイルスを駆除してから身も心も女の子になったヴェロニカがお背中を流しますわとか言って突撃してきた事が何度かあったがその都度追い返してたし、てか、そもそも脱衣所に入ってくる時点でヤツは声をかけてきたはずだ。じゃあ紫苑か?いや、紫苑は俺が一人風呂が好きだと思っているから気を使って入ってこない。・・・シャルか?そんな訳は無いか。あの子はこの時期はあっち(・・・)に通っているはずだし、マリーに関しては俺と話すだけでもカミカミなんだ。風呂場に侵入なんて度胸は無いだろう。ユウか?アイツは男だし論外だな・・・)


 などと思考を巡らせている間にも可聴領域を上げた久世の耳に衣服の擦れる音が聞こえ、浴室へと向かう足音が聞こえてくる。

 この姿(アレス)を見られるのはマズイ!と浴室にドアが開け放たれる寸前、久世は仮想体アバターをアストリットへと変更することに成功する。


 開け放たれたドアから現れた存在に驚愕したアストリットは近くにあった洗面器を思わず拾い上げ侵入者の顔面へと直撃させていた。


「ふぎゅっ!」


 という変な悲鳴を上げながら仰向けに倒れた侵入者は裸に腰にタオルを巻いただけという姿の二階堂ユウだった。





 その後、気絶したユウに服を着せ、ベットで搬送した後、アストリットはユウが眼を覚ますのを待った。

 程なくして眼を覚ましたユウはいつの間にかベットで寝ている自分に疑問を抱いた後、ベットの横にある椅子に腰かけていたアストリットの姿を見て頬を染めながら驚いていた。


「ア、ア、ア、アストリットお姉さま!?どうして私の部屋にっ!?」


「貴方が私が入浴中にお風呂に入って来たでしょう?その時、足元に落ちていた石鹸に足を滑らせて気絶してしまった貴方を介抱するためにここに運んだのよ」


「そうだったんですか。ありがとうございます」


 尤もらしいウソを吐いたアストリットにユウは「アストリットお姉さまに裸見られちゃったキャーッッ!!」と小さく呟いてから何事も無かったかのようにお礼を言った。

 お前は乙女か?とツッコミを入れたくなったアストリットだったが、話が進まなくなりそうだったので本題に入ることにした。


「ねえ、ユウ。貴方どうして私の入浴中にお風呂に入ろうとしたの?別に責めているわけではないのよ?ただ、お風呂の時間帯や入る順番は決まっているでしょう?どうして先にお風呂に入った貴方が私が入浴中に入ってきたのかちょっと気になってね」


(テメェ。俺の至高の入浴タイムを邪魔しやがって。それになんだァ。男ってこと隠して天女あまじょに入って来ている割には随分と変質者じみた真似してくれたんじゃないの?どういうつもりだい?)


 と本音を隠しつつ質問するとユウから返ってきた答えは至極真っ当な答えであり、そして異常ともいえる答えだった。


「アストリットお姉さまと親交を深めたかったんです。だって女の子同士じゃないですか、一緒にお風呂に入って裸の付き合いをしたかったんです。キャッ!」


 と顔を赤くして手で覆い隠し身悶えているユウに対し、アストリットは思わず呆けてしまった。


 何を言っているんだコイツは?と。


 それではまるでユウが本物の女の子のようもの言いではないか、と。


 男である正体を隠して天津乙女女学院に通い始めて数カ月。

 確かに女性型の仮想体アバターを使用して潜入している久世と違い、ユウの場合は性別を偽って学院へ潜入しているのだ。

 そこには久世には計り知れないほどの試練が待ち受けていたのかもしれない。

 日常生活における何気ない会話やトイレ、体育の授業での着替えやメイクに口調・・・数え出したらキリがないほどだろう。

 そんな日常に耐えきれず、ユウの頭が可笑しくなってしまったのかと本気で考え始めたアストリットだったが、いや待てよとユウのステータスを確認する。

 すると「そういうことか」と納得できる原因が一つ見つかった。

 ステータスの状態異常を示す欄にあったウイルスの状態が覚醒に変わっていたのだ。

 ヴェロニカが覚醒し常人では持ちえない圧倒的なステータスを手に入れたのと同様に、ユウの場合は自身が男ではなく、女の子だという自己認識にウイルスによって変換されたのだろう。

 

 心が男性から女性に変わったのであれば、女学院に潜入する上で必要な女性同士の会話などの問題はクリアされただろう。

 しかしウイルスによる変化は心だけでなく、自己認識も男性から女性に変わっている。

だが身体が変わったわけではない。

 つまり今のユウは心は乙女。身体は男という状態は以前のヴェロニカと同じだが、ヴェロニカが心は乙女でも自身の身体が男だという事を十分に認識していたのに対し、ユウの場合は自己認識も女性となっているので性質が悪かった。

 TPO・・・つまり時と場所、場合に応じた方法・態度・使い分けが出来ないというわけだ。

 何故なら自分は女性だと思い込んでいるため、例えばトイレに行くにしろ今までは人目を気にしてこそこそとしていたのが、堂々と女性トイレに入るどころか、言い方は悪いが友人と連れションなんてこともするようになるかもしれない。

 極端な例を上げれば、自分は女性なのだから同じ女性の集まる女湯に全裸で堂々と入っていくことになるだろう。

 その結果、周囲から悲鳴を上げられ、変質者として警察に逮捕されたとしても、本人は自身のことを女性と認識している為、間違ったことをしているという認識には至らないのだ。


 瞬時に事態の把握を完了したアストリットは「やれやれ困った事態になったものだ」と頭を掻いていた。


 翌日、何事も無かったかのように登校するユウ。

 アストリットや紫苑と他愛も無い会話をしながら校舎へと続く並木道を歩いて行く。

 教室に入り今日は一時限目は体育の授業だったなと更衣室へとロゼなどのクラスメイトと向かい、徐に服を脱ぎだすユウ。

 その様子を見ていた隣のロッカーに陣取ったロゼが変わった物を見るような眼でユウを見ながら言った。


「あれ?珍しいねユウ。いつもは一番隅のロッカー使っているのに今日は中央のロッカー使うなんて、それにいつも私たちより遅れて着替えてたのに・・・。どういう心境の変化よ?」


「んー、何でもないよ。私っていつもそんなことしてたっけ?」


「気付いてなかったの?本当に?」


 実に不思議そうに首を捻るユウにロゼは引っかかりを覚えながらも制服を脱ぎ、体操服に着替える。

そして淡々と自分の隣で着替えるユウを見てやはりおかしいとユウの肩を掴み、顔を寄せて言う。


「やっぱりおかしい・・・」


「何がおかしいの?」


「いや、既にこの反応がおかしいから!」


 ユウの対応にロゼはツッコミを入れながら語り始めた。

 ロゼ曰く、普段のユウは人目を気にして隅のロッカーを使ったり、極力人が居なくなったのを見計らってから高速で着替えることをしていたらしい。

 それに着替え中に、下着姿のロゼや同級生の姿を見ると頬を赤らめて視線を逸らすといった動作を必ずと言っていい程やっていたとのこと。


「女の子同士なのに何を恥ずかしがっていたんだろうねー」


「その言葉、私が一番最初にアンタに言ったから・・・」


 半ばあきれつつロゼは数カ月前の事を思い出しながら肩を落とした。

 着替える度に頬を赤らめ、自分の身体を隠す仕草を見せるユウに「女の子同士なんだから恥ずかしがるなってー!」といった事があり、その時は「それでも恥ずかしいんですっ!」と悲鳴を上げながら逃げていった人物と同一人物とはロゼには思えなかった。

 どういった心境の変化があったのだろうかとしきりに頭を悩ませることになった。



 そんな光景を空いているロッカーの僅かな隙間から見ている人物が一人。

 アストリットである。普段の制服姿とは打って変わり、全身を黒のボディスーツで身を包んでいた。

 胸回りや腕や膝から下にはエグランテリアには似つかわしくない軽量の装甲が見てとれる。

 随所には淡いライトグリーンの光が走っており腰のあたりには短刀が装備されている。

 魔天楼やAWOで職種ジョブ:暗殺者が着用できる忍び装束の一種だった。

 隠密性を重視し、いつもの魔法剣士ではなく、暗殺者に職種変更ジョブチェンジしユウを見張っていたのだ。

 空きロッカーなどに入らずとも、光学迷彩の如く全身を透明化させるスキルや人から自身を認識出来なくなるスキルなども当然存在する。

 ではなぜアストリットがそんな優秀なスキルを使用しなかったのか?

 それは更衣室に忍び込んだアストリットが更衣室に向かう足音に気付き、その事に焦った所為で考える暇を失い思わずロッカーに隠れたのだ。

 女性の姿をしているとはいえ、アストリットの中身は男性である久世なのだ。女子更衣室に侵入している後ろめたさと、緊張感がアストリットから正常な判断能力を失わせていた。


 そんな訳でアストリットは更衣室のロッカー内からユウを監視していたのだった。


(何をしでかすか分からないからな・・・(NPC)には任せておけないな)


 やる気をその身に滾らせユウを監視していると事件はすぐさま起きた。


「それでは遠慮なく~」


(何してるおーいっ!!)


 ロゼがユウに向かって両手をニギニギと空中で何かを掴む動作を数回したかと思うとユウの胸を後ろから揉みし抱こうとしていた。

 それに気付いたアストリットは驚きながらも更衣室全員にイリュージョンというスキルを放った。

 対象に使用者の望む幻術を見せるという便利なスキルだが、使用前に予め内容をプログラムしなければならない為、使い勝手が少々悪かった。

 予め昨日の夜に対応策を練っていたのが功を奏したようだ。


「ん、んん?ユウって見た目以上にサイズが・・・ある?」


(ちょっと盛り過ぎたかな・・・)


 ちゃんと幻惑が作用したことに安堵しながら、効果が少し強めに出ている事を悟った。

 アストリットが使用したスキルにより更衣室にいるアストリットとユウ以外の眼にはユウの身体が妹のカレンと同じように見えているはずだった。

 それに触った感触なども再現されているはずなのだが、慣れないプログラミングをした所為で見た目と実際の感触に違いが出てしまったようだ。

 後で微調整だなとぼやきつつ事態を見守った。

 程なくして着替えが終わったのか、二人は更衣室から出ていった。


(任務完了、帰還します。なんつって・・・)


 二人を含め更衣室から人が居なくなったのを確認したアストリットはロッカーから出ようとする。


 すると、


 カチャッ


「えっ?」


「・・・・・・・・っ!!」


 開かれたロッカーの中にいるアストリットと自身が開けたロッカーの中にまさか人がいるなどとは思っていなかった為、起きた出来ごとに呆け、その場に立ち尽くす少女。


(なんてこった!ロッカーの窓より身長が低くて気付かなかっただと!)


 どう切り抜けるか?思考を巡らせ穏便に事態が収拾する方法を模索するアストリット。

 長い沈黙の中、先に動いたのは少女だった。

 固まっているアストリットの格好を上から下まで眺め、そして、


「!!」


 擬音にすると、シュワッ!シュバババッ!!と素早く腕を動かしている少女。それを見たアストリットは動きは速いが手話か何かかと推察し、駄目もとで同じように腕を動かしてみた。


「っ!」


 少女はアストリットの動きを眼を見開いて見た後、さらに腕を複雑に動かしてきた。


(なんだろう。適当に動かしているように見えるのに意思が伝わってくるのはなんでだろう・・・)


 アストリットは気付いていないが、少女の身振り手振りには一種の伝達魔法がかけられており、会話が苦手な彼女の数少ない対話手段だった。

 対する少女もこの方法で対話をした相手は数多くいるが、話しかけるでもなく同じように身振り手振りで返してくる相手は初めてだった。

しかも魔法がかかっている訳でもないのに相手の少女の考えが伝わってくるのだ。そんなことも初めてだったのだ。


 そして少女は目の前にいる不審者に心当たりがあった。

 同級生を含め天津乙女女学院の全生徒の憧れの的であり、容姿はもとより魔法技術においてもあの雷姫をも上回る圧倒的な実力を持つ絶世の美女アストリットだ。

 

 全校生徒の憧れの的が何故こんな場所に?それにこの格好はなんだ?


 少女もロッカーを開けたら人がいたという状況に驚きこそ禁じえなかったが、段々と冷静になり何となくではあるが推測が付いた。

 おそらく前の授業が体育か何かで学年共用の更衣室にまだ残っていた所に後輩の私たちが来てしまい咄嗟に隠れたのだろう。

 アストリットは元々全校生徒の憧れの的であるし、こんな所で着替えている姿でも見られたら騒ぎになるはずだ。それを本人も自覚していて隠れたに違いない。

 そう結論付けた所でロッカーの中の人物を見る。


「・・・・・・・・・・・・」


 だがこの格好はなんだ?

 

 アストリットの抜群のスタイルにしっかりフィットし、少女を含め女性が羨むプロポーションを際立たせている黒いスーツに、身体の各所に装甲のような物が取り付けられている。

 さらには腰には鞘に収まってこそいるが、小さな剣のようなものが見受けられる。


 なまじその姿を見ているとその方面でもない趣味に目覚めてしまいそうなほど引き込まれる何かがそこにはあった。


 少女は首を何度か横に振るとジェスチャーを再開しアストリットとの交信を始めた。


(おーい、鼻血出てますよー?)


 ジェスチャーでそのことを伝えると慌てて鼻を拭こうとする少女。

 よほど慌てたのか制服の袖で拭こうとしたところをアストリットはそれを手で制すとハンカチを差し出した。

 少女は眼でお礼を言いつつ鼻血を拭くと洗って返しますとジェスチャーで伝えポケットにハンカチを仕舞った。

 その後、服装に関しては魔法衣の一種だと説明したアストリットだが、そもそも一年生は魔法衣の存在を知らない為、まずそこから説明に入った。

 さすがにジェスチャーだけだと説明が困難だったので普通にしゃべって説明することにしたが、ジェスチャーを止め、普通にしゃべりだしたアストリットを信じられないようなものを見る眼で見つめてくる少女に困惑しつつ何とか説明を終えた。


 始業時間が迫っているのを思い出したアストリットが「そろそろ授業が始まるわよ?」と少女を促し少女は更衣室を後にした。

 

「何とかなったな。名前聞き忘れたけど・・・。まあいっか。もう会うこともないよね」


 脱力しつつ授業は影武者ドッペルゲンガーに任せている為、購買で時間でも潰すかと足取り重くアストリットもその場を後にした。


 授業が終わり更衣室へ戻ってきた少女が再びユウを監視するために先程と同じ格好をしたアストリットとロッカーの中と外で再会をはたした事は言うまでもない。




お気に入りが100件を超えました。読んでくださっている方々ありがとうございます。今後も細々と書いていきたいと思います。

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