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アナザー・ワールド・オンライン  作者: ジン
潜入!天津乙女女学院編
38/54

決闘

お待たせしております。

 アストリットが秋月紫苑を模擬戦とはいえ、打ち負かしたという衝撃のニュースは四時限目の授業が終了後、すぐさま全校生徒に知れ渡ることになった。

 雷姫ライトニングプリンセスとしての二つ名を持ち、容姿・実力共に他の追従を許さない彼女は良くも悪くも有名人であった。

そんな人物を結界が張られた中にもかかわらず肉体にダメージを与え気絶に追い込み、更にはその場で即治療を行うという、教師ですら成し得ない事をしたアストリットに生徒のみならず教職員からも様々な目線で見られていた。

 そんなアストリットが怪我が回復し、いつもと変わらぬ笑みを浮かべた紫苑と食堂で昼食を取っていた際、事件は起きた。

 談笑しているアストリットと紫苑の前に腕を組み仁王立ちで立つ人物が一人。

 燃える様な深紅の縦髪ロール、少々釣り目がちな強気な瞳には目の前にいる人物に対しての怒りの感情を宿している。


 ブルーヘブン寮一年生。ヴェロニカ・アーノットである。


「アストリットお姉さま。食事が終わり次第お話があります」


 怒気を含んだ口調に紫苑は怪訝な表情で口を開こうとするが、アストリットがそれを目線で制すると開きかけた口を閉じる紫苑。

 後で理由は聞かせてもらうわよ?という視線をアストリットへ送るが、当の本人は何とも言えない表情で頷くと、ヴェロニカが怒っている原因に見当が付いているアストリットはやれやれといった感じで席を立ち食器を片づけるのであった。




 食事を片づけ、食堂を後にしたアストリットとヴェロニカは屋内実習場へと赴いた。

時刻はお昼休み。屋内実習場には当然二人以外の姿はない。床の上を歩く二人の足音以外、静寂に包まれている。


「模擬戦とはいえ、私たちの紫苑お姉さまの肌に傷つけたこと、紫苑親衛隊隊長として許すわけには参りませんわっ!!」


 アストリットを先導して歩いていたヴェロニカは、実習場の中ほどまで進むと足を止め振り返りアストリットに物申した。


「では、私にどうしろと?」


 首を傾げ困ったような表情でそう言うアストリットに対しヴェロニカはふんと鼻を鳴らすと右手人差し指をアストリットに向け、言い放った。


「貴女に決闘デュエルを申し込みますわっ!」


 決闘デュエルとは、お互いに40枚のカードを”デッキ”と呼び、デュエルディスクと呼ばれるカードを読み込ませ絵柄を実体化させる装置を用い、どちらかのライフポイントと呼ばれる数値が0になるまでモンスターを召喚し対戦するカードゲームの勝負のこと・・・ではなく、


 お互いの意地とプライドをかけた模擬戦のことである。

 と、簡単に言ってしまったが、用は何かしら諍いが合った際に紳士淑女として決められたルールの中で行われる喧嘩みたいなものだ。

 原則として一対一。複数人で争う場合はその中から代表者を選出し、当事者同士が同意し何かしらの形式上の手続きを踏んだ上で行われる。

 書類一式は予め用意して来たのであろう。ヴェロニカが何やら呟くと空中に炎の文字が浮かび上がった。文字には決闘時におけるルール、日時、場所等が明記され、一番下の欄に決闘者同士の名前を記載するサイン欄があった。

 ヴェロニカは空中に浮かびあがった文書に人差し指に纏わせた炎で名前を書き込んでいく。


「了承していただけるのでしたらサインを」


 強い目線でアストリットを睨みながらサインを促すヴェロニカ。

 アストリットにはヴェロニカと戦う謂れなどない。紫苑が怪我を負ったのは確かにアストリットの所為ではある。

しかしそれを当事者でもないヴェロニカに言われる所以はない。

 だが、アストリットにはヴェロニカと戦う理由があった。それもかなり重要な理由が。

 

「これでいいかしら?」


 ヴェロニカに倣い、人差し指に炎を纏わせてサインをすると空中に浮かびあがった書類はゴウッと音を立てて消失し、シスター服を着た女神のような風貌の金髪の女性が眼の前に現れた。それも宙に浮いて、だ。


「これは・・・?」


 アストリットが驚いているとヴェロニカが得意そうに説明を開始した。

ヴェロニカ曰く、これは決闘デュエル時に交わされた書類に記載された事柄を当人達が順守しているか確認するために天から遣わされた監視者なのだそうだ。

 その風貌は大昔に聖女と崇め奉られたアリシアという少女を模倣した姿だという。


(これがアリシア?どっかで見た気が・・・)


 監視者の風貌に対して既知感を覚えるアストリットだったが、目の前の人物に集中する為、意識を集中させる。

 監視者が機械的な声で双方に語りかけてくる。


『決闘を行おうとする者たちよ。ルールの確認である。一つ。お互いに全力を尽くす為、デバイスの使用を許可する。これはデバイスの能力制限の解除も含まれる。二つ。勝敗はどちらかが負けを認めるか、気絶、あるいは死亡するまで行われる。三つ。対戦中は部外者からの援護攻撃を一切禁止とし、援護が行われたと監視者が判断した場合、援護された者を敗者とする。以上となるがよろしいか?』


 監視者の言葉に二人は頷く。結界を発動させず肉体にダメージを与える方法を取ったのはヴェロニカだが、アストリットに不満は無い。むしろ好都合であった。

 二人の合意を確認した監視者は静かに上空へと舞い上がると、


『では決闘デュエル承認!・・・3・・・2・・・1・・・開始!』


 監視者から決闘開始の合図がなされ、行動を開始したのはヴェロニカだった。


「イフリートよ!我に力を!舞い狂え!」


 叫びながらアストリットに接近するヴェロニカ。手には細い針のような刀身に半円状のナックルガード。刀身は赤く、幾何学模様が刻まれている。所謂、レイピアと呼ばれる武器をデバイス変換させる。

次いでヴェロニカの身体を光が包み込み、天津乙女女学院の制服が魔法衣へと変化する。

 一年生の終りに教わるというデバイスの武器化、魔法衣化をヴェロニカは短期間で操れていることになる。

 ヴェロニカの身を包み込む魔法衣はワインレッドの簡易鎧の上から赤と白が基調のハーフコートを纏っている。腰から足元にかけて前開きのスカートが翻り、手足には装甲を身に付けている。

 その出で立ちはまさに紫苑親衛隊を名乗るのにふさわしい騎士のような格好だった。


「はあああああ!!」


 先手必勝とばかりに炎を纏わせたレイピアで息も吐かせぬ連続突きを繰り出すヴェロニカだが、武器化も魔法衣化もしていないアストリットにヒラリヒラリと交わされてしまう。


(くっ!さすが紫苑お姉さまを傷つけるだけの実力はおありのようですわね!!)


 内心毒づくヴェロニカに対し冷静に攻撃を見極めながらアストリットはその様子を観察していた。


(さてさて、戦いに持ちこめたまではいいがどうしたものか・・・)


 尚も続くヴェロニカの攻撃を回避しつつエネミーサーチの魔法スキルをヴェロニカに放つアストリット。

 スキルレベルマックスのエネミーサーチを受けたヴェロニカの情報がそれこそ、Wiki何某のように長い情報がAR表記される。

 ヴェロニカ・アーノット。名前の他にも性別や、かかっている状態異常、HPやMP等の各種ステータス、取得しているスキル等の情報がこと細かに羅列されている。

そして気にするべき項目はただ一つ、状態異常の欄。


 状態異常:ウイルス感染(覚醒)


 エグランテリアにおけるウィルス感染者の一人。それがヴェロニカ・アーノットその人である。

 生活を共にし、経過を見てきたが未だ覚醒する兆しする兆しは見えなかった。

しかし憧れの紫苑が傷つけられた怒りによりウイルスが覚醒に至ったようだ。

 覚醒前と潜伏状態とでステータスを比較にすると各ステータスが異常なまでに跳ね上がっている。元々ヴェロニカの保有魔力量は決して多くは無かった。その為、本人は出来るだけ魔力を節約した戦い方を磨きあげてきていたのだが、アストリットとの決闘で自身の保有魔力量が上がっているのが分かったのだろう。

 ニヤリと顔を歪ませると大きく距離を取るヴェロニカ。


いにしえより炎を司りし炎の神イフリートよ!我に力を!」


(召喚スキルか!?)


 アストリットが驚き身構えるのと同時、両者の間に燃え盛る魔法陣が描かれたと思うと、中から二つの角を頭部に生やしたマグマで身体を作っているのではないかと思える程の轟々と燃え盛る深紅の巨人が顕現された。

 動く度に足元の魔法で強化されているタイルが融する。3メートルを超す深紅の巨人がアストリットを視界に捉える。

 そんな炎の精霊に素早くエネミーサーチを唱え見る。


 上位精霊:イフリート

 レベル:XX


(この世界(サーバー)の神クラスを呼び出しやがった!!)


 精霊というのは、自我の無い体全体が魔力で構成された精神生命体のことで、一部の召喚魔法に適性のある魔法使い達が召喚魔法を使用し使い魔としてこの世に具現化出来る存在である。

 精霊の姿は一番最初に召喚した際に注ぎ込んだ魔力量や召喚者の資質によってその形や力を具現化するが唯一例外が存在する。

 それが上位精霊と呼ばれる存在だ。上位精霊は生まれた時から自我を持ち、召喚魔法を使っても具現化する事など本来あり得ない。

 何故なら上位精霊、それも神クラスの精霊は祝福ギフトを与える側の立場にある存在であって、地上に降り立ち戦う存在ではないからだ。そもそも上位精霊の力の一部を具現化するのではなく、上位精霊をそのまま具現化出来るほどの途轍もない魔力保有量を所有している魔法使いなど未だかつて一人しかいない。

 水の上位精霊であるクラーケンを召喚したという聖女アリシアのみだ。

 

 ウイルス覚醒によってもたらされた効果に流石のアストリットも舌を巻く。

イフリート自体はAWOでも出てくる割とポピュラーな存在ではあるが、その存在はプレイヤーが徒党を組んで戦う大型レイドボスとして戦うような存在だ。

 いくらアストリットといえ、このままでは戦って勝てるような相手ではない。


 そう、このままでは。


「仕方ない、か」


 そう呟くとアストリットの雰囲気が変わる。ヴェロニカも今まで接してきたアストリットの大よその実力は把握していたが、目の前にいる人物の雰囲気はこれまでとは違う様に感じられた。


能力制限スキル・リミッターNo.1解放」


 そう唱えた瞬間、アストリットの身体を光が包む。今までも漂っていた圧倒的な実力がさらに膨れ上がるのをヴェロニカは上昇した知覚能力で感じ取った。


(まだ膨れ上がるのですか!?アストリットさん一体何者ですの!?)


 だが、ヴェロニカも負ける訳にはいかない。

 紫苑を傷つけられた恨みは晴らさなければならない。自身の手によって。

 入学当初、桜並木を歩く紫苑を見てその姿に魅入られたヴェロニカ。圧倒的な魔力に他者を寄せ付けぬ冷徹な眼。なによりその孤高の存在に憧れた。

 即座にファンクラブへと入会し一年生の身でありながら、親衛隊隊長の座にまで上り詰めたほどだ。だからアストリットによって紫苑が変わっていくのが許せなかった。

 孤高の存在である紫苑が他の生徒たちと群れている姿など見ていられなかった。

その原因を作ったアストリットに対し不快な気持が燻っていた。そんな時に紫苑が模擬戦で怪我をさせられた話を聞いたのだ。

しかもその相手はあのアストリットである。不快な気持は憎しみ、怒りに変わりヴェロニカの中で何かが弾けた。感情を抑える事が出来ず、そのまま決闘の書類を作成しながら食堂へと突き進んだほどだ。


 召喚魔法に適性があるのは入学した当初から分かっていた。でもヴェロニカには普通の精霊どころか、最下級の精霊ですら召喚する魔力保有量を有していなかった為、召喚したくても召喚出来なかったのだ。

 だからアストリットに対する怒りから生まれたであろう圧倒的な力を解き放ち、炎を司る神イフリートを召喚出来た時には歓喜に震えた。

 まさか__である自分がイフリートを召喚出来るとは。


 そんな考えが頭に浮かぶが、今はどうでもよい。今考えるべき事は目の前の人物をどう痛めつけるかどうかだけなのだから。



 自身にいくつもかけている枷である能力限定スキル・リミッターを一つ外したアストリットのステータスは本来の30パーセントの力まで取り戻していた。

 イフリートの丸太のように太い腕から放たれる攻撃を寸での所で回避し続けながら今後の戦略を練るアストリット。

イフリートを倒すことは今の自分にとっては左程難しくないまでにステータスは上がっている。問題はその後だ。消滅したイフリートを再度召喚出来るほどの魔力を今のヴェロニカは持っている。それはエネミーサーチで浮き彫りになったヴェロニカのステータスを見れば明らかだ。

 イフリートを召喚され続ければヴェロニカにダメージを与えることは難しくなる。もちろん能力限定スキル・リミッターを解除していけばイフリートを瞬殺しヴェロニカをこの世から抹消出来る程の力を取り戻すことも可能ではあるが、アストリットの本来の目的はヴェロニカが感染しているウイルスの駆除である。

 すでに覚醒状態のウイルスである為、スキル超越浄化スピリアルパージを使えば一瞬のうちにウイルスは駆除出来るだろう。


(でもそれじゃ、ヴェロニカまで消し去ってしまう可能性が高い・・・)


 以前、ウイルスに取り込まれた煉獄龍インフェルノ・ドラゴン・古竜種を超越浄化で倒した際、ウイルスに取り込まれた煉獄龍まで消し去ってしまっている。

 ヴェロニカの場合は取り込まれたわけではなく、感染している為、一概には同じ条件とは言えないがリスクが高過ぎた。

 ウイルス駆除のスキル開発は現在、現実世界で鏑木が行ってはいるが、いつ開発が完了するはこちらからは分からない。

 少し事を急ぎ過ぎたかとアストリットが後悔していると、狙い澄ましたかのように鏑木から連絡が入った。


『久世く~ん!聞こえるかい?』


(アキラか!?ナイスタイミング!)


『何がナイスタイミングなのかは分からないけど、スキル開発が一段落したから連絡したんだ。まだまだ欠点は多いけど、一応形にはなったからね』


(本当か!実は今、ウイルス感染者と戦闘中でさ)


『えっ、なんだって!?どれどれ・・・って本当だ。確かに感染してる』


 ホロモニターを見て状況を確認しているのであろう。鏑木の雰囲気が変わる。


(スキル完成したんだろ?早くアップグレードしてくれよ!)


『え?う~ん。まあ緊急を要するんじゃ仕方ないか・・・』


 含みのある言い方をする鏑木に一抹の不安が過るアストリットだったが、このチャンスを逃す手は無いとスキルの早期アップグレードを要求する。


「何をゴチャゴチャと!」


 未だアストリットに一撃すら与えられていないヴェロニカが吠え、イフリートに攻撃を任せていたが、自身も攻撃を繰り出す。

主従関係を結んでいる所為か、イフリートとの息の合った連撃を繰り出すヴェロニカに思わず感心してしまうアストリット。

 攻撃を回避しつつ、AR表記されているアップグレード率を眺めながらアストリットは攻撃に転じる。


「はあっ!」


 素早くデバイスを武器化しイフリートを切りつける。切りつける瞬間、実体を伴った炎の身体がユラリと揺れたと思うと、アストリットの刀がイフリートをすり抜ける。


「物理攻撃無効?図体が小さくなった代わりに変な能力身に付けやがって・・・」


 小さく毒づきながらイフリートから大きく距離を取るアストリット。

サバイバルサイドで召喚したNPC達と挑んだ大型レイドのボスだった際のイフリートの大きさは3メートル程度ではなく、15メートルはあっただろう。巨大な体躯で俺たちを踏みつぶしにかかったり、地面から炎の塔を出現させたり、口から炎を吐いたりと近距離攻撃に加え、遠距離攻撃もこなす魔物だったが、物理攻撃無効なんてふざけた能力は有していなかったはずだと過去の出来ごとを思い出しつつ水属性のスキルを放つ。


濁流の渦(タイダルウェーブ)!」


 三日月型の澄んだ水の刃を放つクレセントウェーブとは違い、決壊したダムから流れ出たような土石流がイフリートとヴェロニカを襲う。


「防ぎなさい!」


 ヴェロニカの命令にイフリートが吠えると、姿勢を低くし両腕を大きく広げるイフリート。

次の瞬間、イフリートの身体から大量の炎が吹き荒れ、イフリートを中心に半円状に広がる。

 一点集中型防御魔法を使用したのだろう。押し寄せる濁流がイフリートの張った炎の壁に激突すると水が蒸発し辺り一面を水蒸気で包みこみ視界を奪う。

 魔法の効果が終わり、辺りからすっと水が引くが水蒸気までは消えない。イフリートが燃え盛る腕を振り回すとその剛腕によって生じた熱風が水蒸気をすぐさま吹き飛ばした。

 水蒸気が消え視界が鮮明になり、前方を見るヴェロニカ。


「なっ!」


 驚愕で眼が見開かれる。前方で佇んでいるアストリットの服装が変わっていたのだ。

白い生地に様々な個所に花が咲き乱れている着物をベースに作られたドレス。袖は半透明なレースが所々使用されており、中の肌理きめ細やかな細腕が透けて見える。 えりからは豊満な胸が見え隠れしており、背中も大胆にV字に露出し、腰より下のスリットから美しい太ももから先が見え隠れしている服装。

魔天楼時代の黒耀姫の最強装備である【乱れ桜】の形をした魔法衣を身に纏っていた。


(外野はいないからな。アップデートも完了した事だし、本気で行かせてもらうぜ)


 静かに息を吐き、精神を高めていくアストリットの姿に漂ってくる濃い魔力の威圧感以上の何かを感じ取ったヴェロニカは反射的にイフリートをアストリットへと突撃させる。

 雄たけびを上げながら巨体に似合わない速度で接近するイフリートだが、アストリットは動じない。

 瞬間、アストリットの姿が消えたかと思うと突如霧となって霧散するイフリート。消え去るイフリートを信じられないような眼で見ていたヴェロニカだったが、不意に感じた殺気に後ろを振り返ると目禅に迫ったアストリットの姿がそこにはあった。


「くっ!」


 咄嗟にデバイスをレイピアから薔薇の文様が刻まれた逆三角の盾へと変化させたヴェロニカは迫るアストリットの攻撃何とか受ける。

余りの威力に身体全体が後退させられるが、ウイルスの効果で上がった異常なステータスによってダメージは免れているようだ。

 尚も切りつけてくるアストリットを両手で盾の取っ手を握りしめ後手に回りつつも防ぐヴェロニカ。


(こ、これじゃイフリートを召喚している暇がありませんわっ!)


 防戦一方になりながらもアストリットの攻撃を完全にガードしているヴェロニカにアストリットも超越浄化スピリアルパージの発動タイミングを見いだせないでいた。


(固ってぇ!タンク役のが似合ってるんじゃないのか?)


 予想をはるかに上回るヴェロニカの防御能力に舌を巻くアストリット。もう何度か能力限定スキル・リミッターを解除し本来の力を取り戻せば例えウイルスによるステータス強化されているヴェロニカであっても倒すのは余裕だろう。しかし倒す(殺す)ことが目的ではないアストリットとしてはこれ以上自身のステータスを上昇させることはしたくなかった。

と、いうのも、超越浄化スピリアルパージは攻撃スキルに分類される為、当たれば当然相手はダメージを負う。そのダメージが強過ぎればウイルスは駆除出来るかもしれないが、相手は死んでしまう。

 手加減出来るスキルがあればいいのだが、生憎とアストリットは所有していない。

故とに同レベル程度か少し上くらいの実力でスキルをヒットさせる必要があった。


(隙を作れればなぁ。あまり褒められた戦法じゃないが・・・)


 確実に隙を作れるであろう事が頭に浮かんできたが、それを実行してしまうと今後のヴェロニカとの関係や自分自身の株が下がるような気がしたアストリットだったが、気にしてる場合じゃないなと早速実行に移す。

 頭や身体狙いだった攻撃を手足狙いに切り替える。直線的だった攻撃方法もフェイントを織り交ぜ、しなる様な剣捌きになった。狙いはヴェロニカへのダメージではない。では何か?その答えはヴェロニカの反応を見れば明らかだった。


「ひ、卑怯な真似を!」


 カランと金属が割れるような音と共に赤面したヴェロニカが腕で身体を隠している。

そう、アストリットはヴェロニカの着ている魔法衣を狙ったのだ。しかも胸を守るプレートアーマーや腰周りを重点的に。

 するとアストリットの攻撃に耐えかねた防具が耐久値を超え破損したのだ。

今のヴェロニカの格好は胸と腰周りの肌が露出しかなり扇情的な格好となっている。

 それを見ているアストリットは冷淡な表情を崩さずに悪役ヒールを演じる。


「卑怯?良いじゃない?女同士なのよ?見られて困る様な格好では無いと思うのだけれど?」


 そういいながら、アストリットはその場でくるっと一回転する。その動作で豊満な胸がたゆんと揺れ、スリットの入ったロングスカートがひらりと舞い細身の艶やかな足が見え隠れし、表情も少し頬が染められ赤みを帯びていて色っぽい。

 ただ単に恥ずかしくて顔が赤くなっているだけだったが、ヴェロニカから見ると効果は抜群であった。

 顔を赤らめ、どこか気まずそうにしているヴェロニカに素早い動きで接近し刀を数回振るうとヴェロニカに背を向けるアストリット。


「それとも・・・」


 含みを持たせる言い回しをしつつ、顔を半分ヴェロニカに向けながら、


男の子(・・・)には刺激が強かったかしら?」


 そうアストリットが言い放ったのと、ヴェロニカが必死に隠していた胸から大きな塊・・・パッドが二つ切り裂かれて落下したのはほぼ同時だった。

  

ヴェロニカさんは男の娘だった!?次回決着!

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