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アナザー・ワールド・オンライン  作者: ジン
潜入!天津乙女女学院編
33/54

クラス対抗戦②

雪害から数週間。ようやく小説が書けるような状況になりました(汗)

 数分のインターバルの後。決勝戦は開始される。

 二人は今、緑色の液体の入ったドリンクをカトレアから渡され飲んでいる。魔力の回復を促してくれる飲み薬だ。透明度の高い緑色のさらっとした液体をグイッと一飲みで飲み干す両者。

 消耗した魔力が回復し身体に力が漲るのを確認すると入念に身体の状態を確認する。


「両者、そろそろ良いかな?」


 カトレアから決勝戦を戦う両者・・・ユウとロゼに戦う準備が出来たかについて問われた二人は静かに頷きコートの両端へと向かう。


「ユウ!手加減はしないからね!」


「それはこっちも同じだよロゼちゃん!」


 気合十分。お互いに必要なやりとりを終えるとカトレアから「セット!」の合図がかかる。

 カードを取り出し、臨戦態勢。

 開始の合図を待たず飛び出して行きそうな雰囲気が醸し出されている。

 そんな両者にカトレアから「開始!」の合図がかかる。

 先に飛び出したのはロゼ。足の裏に練った火属性の魔法を爆発させ加速しユウへと迫る。

 繰り出される炎を纏った右ストレートをユウは首を捻り回避し風を纏わせたボディブローをロゼの右脇腹に滑り込ませる。

 ロゼは振りぬいた右手と右肩に火を灯らせ爆発させる。すると身体がさらに加速し高速回転によりユウの放ったボディブローに左足が追いつき、迫るユウの左手を蹴りあげる。

 蹴りあげた際にスカートの中がめくり上がるがそこは女学院。中にはスパッツが履かれていた。

 蹴りあげられた事でユウの身体が若干後方へと流れ、ロゼの回転蹴りはそのままぐるっともう一周し二回転目がユウに迫る。

 とっさに両腕に土の手甲を纏わせクロスし蹴りをユウは両腕で受け止めるが、燃え盛る回転蹴りの威力により纏った土の手甲は壊され後方に派手に吹き飛ぶ。

 吹き飛ばされたユウは空中で体勢を立て直すと地面に着地する。


(さすがロゼちゃん。技の錬度が高い)


 ロゼから放たれる一撃一撃の重さと込められた魔法の威力に舌を巻くユウ。


 ロゼは元中流家系の子供だ。幼い事から父親の経営する道場で身体を鍛えることが日常のなんの変哲もない少女だった。

 だがある日突然父親が連れて来た女性。その女性がロゼの人生を変えることとなる新たな母親だったのだ。

 ロゼを生んだ際に病弱だったロゼの本当の母親は他界していた為、男で一つでロゼは育てられてきた。

物心つく前に母親が死んでしまっていた為、新しい母親に対する負の感情は特に抱かなかった。

 それどころか、温和で優しい性格の母と気が合いすぐに仲良くなったものだ。

 その母親はとある財閥の一人娘だった。結婚当初、母方の両親はロゼの父親との結婚には反対だった。

しかしその反対を押し切って二人はロゼを連れて駆け落ちしたのだ。

 その数年後、母方の両親はロゼの父親のことを遂に認め、後継者として相応しい教育をさせることとなる。

 その関係でロゼは今までの平民生活から一気に上流階級の一員になったわけだが、父と同じく淑女として相応しい礼装を身に付けるようにと母方の両親に言われ天津乙女女学院へと通う事となった。

 その為、今まで礼儀作法等習ってきていないロゼがお嬢様学校には似つかわしくない言動や行動をしてしまったのは仕方のないことだったのだが、ユウと友達になれたのはそのお嬢様気質が無く天真爛漫に育った性格によるものが大きかったのは言うまでもなく、本人にとっては良かったのかもしれない。

 そんなロゼだからこそ、今までに培ってきた武術と魔法を組み合わせることにより他の生徒を圧倒し決勝戦まで進めていたのだ。


「ハァッ!」


 鋭く息を吐き出し地面へと着地したユウに最接近するロゼ。両腕には炎を未だ灯している。

ロゼの拳に触れた者が例外なく大火傷を負う事になるだろう。ユウは土の手甲を作り出し封じて入るが後手後手に回っているのもまた事実。

 せまるロゼを前にユウはなんとか突破口が無いか思案する。


(あるにはあるけど、準決勝に引き続きまた奥の手を出すのもなぁ・・・)


などと考えている為、土と風属性の魔法しか使う気は無いユウ。

 迫るロゼを風魔法により強化した足でスラリと避けると大きく距離を取る。

 加速、反転、停止しアースグレイヴを発動させる。ユウの前方へと突き出した複数の土の棘がロゼへと突き進む。

 それをロゼは一つずつ己の拳で迎撃する。せり上がってきた棘を回避、殴るを繰り返す。

 その間にも二人の距離は徐々に縮まる。


(やっぱり放出系の魔法は苦手みたいね・・・)


 魔法学科の授業を受けていた時から思っていたことだったが、ロゼは身体に直接身に纏う魔法を得意とする分、遠距離型の放出系魔法が苦手なようだった。

 この戦闘中も一度も遠距離攻撃をしてこない事からまず間違いないだろう。

 そう考えたユウは遠距離攻撃でロゼを倒そうとする。

しかしロゼはアースグレイヴを全て叩き壊しながら前進してきている。

 効果が無い訳ではないが、それでも焼け石に水だろう。

 ユウはインビジブル・エアを複数発動させる。迫るロゼはアースクレイヴを壊すのに集中している為、気付かずに攻撃を当てることが出来るはず。そう考え発動させたのだ。

 不可視の刃がロゼに音もなく忍び寄り、その身にダメージを与えロゼは気絶する。

 そのはずだった。


「!?」


 見えない刃がロゼに届こうとした瞬間。ロゼの周囲でボウッと炎が上がった。


「無駄だよっ!」


 そう言いながら尚も突き進むロゼ。ユウは防がれた事に驚きつつもアースグレイヴを絶やさない。


(何!?燃えた?いったい何の魔法・・・)


 ユウは混乱しつつも接近するロゼに魔法を繰り出しながら先程防がれた謎の魔法について思考を巡らせる。

 ロゼが発動したのは手に纏っているのは初級魔法の【イグニート・パンツァー】。

 本来は全身に炎を身に纏う身体能力強化と防御を併せ持つ魔法をロゼは腕に集中させ使用している。

それをロゼは一時的に全身へと回しインビジブルエアを無力化したのだ。

 ちなみにアンデット・ジャンヌの使用する【ゲヘナフレイム】はこの魔法の最上級魔法の亜種にあたる。

 身体能力強化、防御そして収束させることにより高い攻撃性能を有する使い勝手の良いこの魔法の存在をユウは気付いていない。

 迫るロゼに次第に焦り出すユウなのだった。



 一方ロゼも次々にせり出してくるアースグレイヴに精神をすり減らしていた。

 不規則に突き出してくる高威力の土の棘。一撃喰らえば動きを止めたことにより次々と自分の身体に突き刺さり気絶してしまうだろう。


(厄介な攻撃。でも、捌けないほどじゃない!)


 突き出してくるアースグレイヴを避け、砕きながらロゼは確信する。

 この攻撃は威力と速さこそあるものの、己が拳で対処可能と。

 アースグレイブは対象に当たらなくても数十秒は現世に留まる為、進路妨害にも活用できる魔法だ。

 近接魔法しか使用することの出来ないロゼに対する進路妨害として最適な魔法だった。

それでもロゼは突き出してくる土の棘を避け、砕きユウへと接近する。

 接近する最中に使われた恐らく風魔法の一種であろう攻撃も、腕に纏わせていたイグニート・パンツァーを一部解放し全身に這うように纏わせたため、ユウからは何もしていないのに放った魔法を防いだように見えたであろう。


(土魔法だけじゃなく風魔法まで使えるなんて流石ユウね)


 初めて魔法学科の授業を受けた時から分かっていたことだが、ユウの魔法に対する適性はずば抜けていた。その才能が開花していくのを一番近くで見ていたのは他ならぬロゼだ。

 故にユウの扱う土魔法については熟知しているといってもいい。

 だが、風魔法を使うなんて今まで一緒にいた中で一度もなかった。もちろんユウが秘密にしていたからというのが理由だが、ロゼにはとある予感があった。


(土、そして風ということは・・・もしユウの持っている祝福ギフトは・・・)


 そこまで考えが至った所でロゼは内心、不利を悟る。

しかしロゼは考えていることを振り払い目の前の現実に集中する。

 自分のいる位置に正確に突き出してくるアースグレイヴを避けながら、インビジブルエアを警戒しつつ接近する。

 どうせ自分には接近して殴る蹴る以外の攻撃方法は無いのだ。相手が何をしてこようが関係ない。


(やられる前に倒す!)


 そう心に決め再度進撃を開始するロゼなのであった。



 アースグレイヴとインビジブルエアを物ともせず突き進んでくるロゼにユウは第三の魔法を使用する事を選択する。

 水魔法である。


 使われるのはエリスも使用した【クレセントウェーブ】。

 巨大な津波が意思を持ったようにロゼに向かって突き進む。アースグレイヴを砕いていたロゼの顔に焦りが見える。


 勝った!


 遠距離用の火属性の魔法を使えないロゼになすすべは無い。そう思ったユウは勝利を確信する。


「甘いよ!!」


 ロゼはユウを一喝した後、両腕に纏っている炎を爆発させ、


「飛んだ!?」


 そう飛んだのである。飛んだ。というより両腕の手のひらから常に炎を出し続け浮いているというのが正しい。


「なんてデタラメな・・・」


「複数の魔法使えるユウにだけは言われたくないよっ!」


 そう言いながらクレセントウェーブの効果が切れ波が消え去ったのを見計らったロゼが手の平からバーニア代わりに火を噴かせユウに接近する。

 余りのスピードにユウは咄嗟に反応出来ず、ロゼの鋭い右ストレートを受け入れる。


「くぅ!」


 余りの痛みに意識を手放しかけるが、頭に思い人の顔がふと浮かび歯を食いしばって耐え抜くとロゼに向かって風をぶつける。

 思いっきり暴風を叩きつけられたロゼも思わず吹き飛ばされるが両手の炎を操り体勢を立て直す。




「あれ?ロゼさん。カード手に持ってなくても魔法使えてますわね」


 ユウとロゼの対戦を見ていた生徒の一人からそのような声が上がる。

すると他の生徒たちからも次々と疑問が上がる。


「杖と違ってカードは非接触式の演算補助機能が付加されているから厳密には手に持っていなくても良いのよ。手に持っていたほうがよりイメージを増幅しやすいみたいだけれど」


「紫苑お姉さま!?」


 一年生の疑問に答えたのはいつの間にか実習場に入っていた紫苑だった。

 自分が関わった一年生達の対抗戦が気になり自習を抜け出していたのだった。


「そろそろ決着がつきそうよ」


 紫苑の言葉に生徒達がコートに眼を向けると二人の間から膨大な魔力の流れが感じ取れた。


「次で終わりにするよ!」


「望むところよ!」


 ロゼの言葉にユウが答える。

 紫苑が生徒達に説明を行っている間に戦闘は決着を迎えようとしていた。


「一撃必殺、乾坤一擲けんこんいってき!」


「はあああああああああああ!!」


 ロゼは己が魔力を右手に集約させ右手一本を槍として放つ。


 【イフリート・ランス】


 迎え撃つユウは両腕を胸の前で突き出し魔法を放つ。


 【ミストラル・ストーム】


 ロゼの放った灼熱の槍をユウは螺旋を描きながら宙を突き進む水の濁流で迎撃する。

 荒れ狂う炎の槍とうねる水が接触し水が急速に熱され水蒸気と化し二人の姿を、コート全体を覆い尽くす。


「どう、なったのかしら・・・?」


 固唾を飲んで見守っていた生徒たちから声が漏れる。

すると次第に霧が晴れていき、そこに立っていたのは・・・。


 片腕をだらんとたらしたユウだった。


「っぶなかったぁ・・・」


 思わずその場に倒れるユウ。

 単純な水魔法であればロゼの放ったイフリート・ランスをかき消すことは出来なかっただろう。

しかしユウの放った魔法は風と水の複合魔法ミストラル・ストーム。

 中級魔法に位置する魔法だ。右回転で進む濁流に左回転で進む暴風が一緒になった魔法で濁流で炎の槍を相殺し暴風がロゼの身体を切り刻みダメージを与えたのだ。


「勝者、ユウ!」


 カトレアからユウの勝利が宣言され周囲の生徒たちから拍手がおくられる。

 その合図をもってユウのクラス代表が決定したのだった。



 同時刻、同じく他のクラスでもクラス代表者を決める戦いが行われていた。

 一学年のクラスの数は6クラス。つまり六名の勝者の中から一年生代表三名を決めることとなる。

 くじ引きにて対戦相手を決め、勝ち抜いた勝者三名が一年生代表となるわけだ。

 同じく二年生は学年代表を二名。三年生は学年代表を一名決める戦いが行われることとなる。


 誰が勝ち上がり、最終的に学年一位に君臨するのか。今、ヘクセンナハトの戦いが始まろうとしていた。

次回は本作主人公登場です!

きっと・・・

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