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アナザー・ワールド・オンライン  作者: ジン
潜入!天津乙女女学院編
31/54

購買

 時刻は11時45分。天津乙女女学院の四階にある三年生の教室。

 黒板に教科書片手に文字を板書しながら説明を行う教師に、板書された内容を黙々と書き写す生徒たち。

 その姿は一見すると普通の進学校によくある光景に見える。

 だが教室内には、いやこの教室以外___全学年の教室を含め、お嬢様学校には似つかわしくない殺気だった雰囲気が醸し出されている。

 生徒の大半は授業の事など最早頭の中には入ってきていない。ノートにペンを走らせてはいるものの、気にしているのは教室の左上段に設置された四角い時計だけだ。

 時計の針が刻一刻と時間を刻み、ついに針は11時50分を指す。

 チャイムが鳴り、教師から授業終了の声がかかると、日直が起立、礼、着席の号令がかかり昼休みとなる。

 それは戦場に向かう戦乙女ヴァルキリー達の開戦の合図でもあった。

 教室のドアが控えめに、だが素早く開け放たれ、一斉に生徒達が小走りで購買ゴールを目指す。

 目標は購買で販売されている日替わりデザートだ。ロールケーキ、チーズケーキ、いちごのショートケーキ、チョコレートケーキ、モンブラン、ミルフィーユ、アップルパイ、シュークリーム、プリン、アイスクリームの中からシェフの気まぐれで一品が一日限定30個で販売される。そして一日限定5個販売される至高のデザートであるアレスケーキ。

 アレスケーキとはシェフの名前を冠したシェフ自慢の一品である。

 シェフの好物であるとあるケーキをシェフによる独特のアレンジを加えられた一品で、生徒のみならず教職員からも絶大な人気を誇っていた。


 今日こそあのケーキを!!


 乙女たちの決意は固い。内に秘めた闘争心を前面に押し出し少女たちは駆ける。

 教室を飛び出した集団は校舎の両脇と中央にある階段に別れて向かう。一番近い階段を駆け降りるのだ。

 しかし一部の集団だけはその光景を見てニヤリと顔を歪めると、東側の端っこにある階段を通り過ぎ、校舎の東側に設置された螺旋状の階段へと向かう。

 校舎の北東に位置する購買への最短ルートである校舎の東側のみに取り付けられている非常階段だ。

 非常口と書かれた案内板を見ることもなく乙女たちはそのドアノブに手をかけ、


「っ!開かない!!」


「なんですってっ!!?」


 先頭を走っていた少女がドアノブをガチャガチャと動かすが鍵が掛っているのか開かない。


「ねえ、これを見てください!」


 一人の生徒がドアノブにかかっている何も書いてない看板を見るように言う。


「なに・・・ハッ!?」


 一見すると何も書かれていないように見えた看板を裏返すと、そこには『清掃のため階段施錠中』の文字があった。


「なんてこと!」


 それに気付いた生徒たちは足元から崩れ落ちる。今ここで使った数秒、数十秒は既にケーキ争奪戦を勝ち抜くために必要な時間を奪っていた。それを悟った生徒たちは遥か先にある至高の存在ケーキを想い、空を仰ぐのであった。


 一方、非常階段では無く、東側の階段を通るルート選択した三年生の生徒達は非常階段に向かった生徒に対して薄ら笑いを浮かべつつ階段を下る。


(非常階段を使えないのは休み時間中に把握済みですのよ!)


 事前リサーチが足りていないと非常階段に向かった同級生に対し憐みを覚えつつ購買を目指す三年生。

 折り返しの階段を下ると同じく購買を目指しているであろう二年生の集団と出くわす。

 早足とはいえ先を急ぐ生徒たちはお互いに道を譲ることなく、数十人規模の集団同士がぶつかり合い、階段を埋め尽くす。


「ちょっと二年生!道を譲りなさい!」


「こればかりはいくらお姉さま方でも譲れませんわ!」


 三年生からの言葉に一歩も譲らず先に進もうとする二年生。両者は一歩も譲らずすし詰め状態のまま階段を下りていく。

 ようやく二階に差し掛かった時、今度は一年生の集団が前に立ちはだかった。


「っ!一年生!そこをおどきなさい!」


「お断り致しますわっ!」


 先程のやりとりと同じ結果に終わった交渉は、先頭に一年生。次に二年生と三年生の混合集団のまま一階へと突き進む。

 とそこに西側の階段を通っていた集団が合流し、一階の廊下は戦場と化す。

 仲間に全てを託し足止めに専念する者。同じクラスの生徒ですら踏み台にし先に進もうとする者。

 可憐な乙女たちはその場に一人もおらず、修羅がそこにはいた。


 と、そんな光景を購買から窓越しに見ている生徒が一人。


「いや~、何がここまで彼女たちを変えるのかしらね・・・」


「いやいや、原因は間違いなく貴方の作ったケーキでしょうが・・・」


 不思議そうに唸る少女にあきれた表情でツッコミを入れる店員。

 少女の手にはアレスケーキが一つと本日の日替わりデザートであるプリンが三つ抱えられていた。

 購買の決まりで数量限定のアレスケーキはお一人様一個まで、日替わりケーキは三個までとなっている。この少女は自分が購入できる限界までデザートを購入していたのだった。


「甘い物は時に乙女を怪物へと変えるということね・・・」


 どこか遠い眼をした少女は渡り廊下にある地下実習場から駆けあがってくる一年生の姿を見つけると、


「引き続き情報収集を頼みます。シェリーにも協力を要請してあるから」


「畏まりました。マイロード」


 店員に聞こえる程度の声でそう告げた少女は店員が恭しくお辞儀するのを見もせず、食堂へと移動するのであった。




 見えた!


 追いすがる下級生達を払いのけ、ようやく購買まで後一歩という所まで来た三年生達。

 散って逝った仲間たちの為にもせめて日替わりケーキは買って行ってあげようかしら?と思案する乙女達。

 その表情は既にケーキが自分のものになる事を疑わない目である。

 だが、そんな彼女たちに現実が牙をむく。

 そう、廊下を抜け、後は渡り廊下を過ぎて食堂の隣に併設された購買を目指すのみだった彼女たちの目の前に、渡り廊下の先、地下へと伸びる階段から一年生たちが飛び出して来たのだ。


「なん、ですって・・・!?」


 地下実習場にて授業を行っていた生徒達が階段を上り、三年生たちの前へと躍り出たのだ。

そしてその速度は速く、後ろを振り返ることもない。

 その光景に三年生たちの容姿端麗な顔が歪む。

 あと一歩、あと一歩で辿りつけたというのに・・・。

 時間がスローモーションに進んでいる感覚に陥る。下級生達が一人また一人と購買へと殺到し店員・・・シェフの手自らケーキが生徒たちへと渡されていく。

 聖女アリシアに祈りを捧げても奇跡は起きず、本日のアレス作の日替わりケーキとアレスケーキは一年生たちの手に渡ることとなったのであった。




 そんな光景をしり目にユウ達は食堂へと入る。

 日の光が入りやすいようにガラス板をバランス良く敷き詰められた天井は、光を効率よく食堂全体に行き渡らせ、周囲を明るく照らす。

 食堂の位置口には食券を買う券売機が複数設置されており、生徒たちは好きなメニューを食べられる。

 和洋中、世界各地を巡り修行したシェフの振るう料理は数百種類にも及び、生徒たちの飽くなき食欲を満たしてくれる。

 食堂はかなり大きく、大きめな体育館位あるだろう。二階建てとなっており、四角いテーブルが規則正しく並べられている一階と、丸いテーブルが不規則に並べられている二階に分かれる。

 一階は好きな人数でテーブルを寄せ合い食事を楽しみ、二階では一つのテーブルに二人から四人で座り、仲良く食事をするような使用方法で使われていた。

 ユウ、ロゼ、紫苑は思い思いの昼食の食券を購入し、食堂の給仕をしているおばさんから昼食を受け取ると二階へと上がり席に着く。

 と、それを見計らったかのようにアストリットが片手に昼食の載ったお盆をウエイトレスのように片手で持ち、反対側の手に包み紙を持って現れた。


「あら、早かったじゃない」


「一番乗りしたからね。皆の分も買ってきたわ」


 紫苑の問いかけに包み紙を持ちあげ強調すると、ユウとロゼの目線が包み紙に注目される。


「そ、それが噂の購買のケーキですか・・・」


 じゅるりと涎を垂らしつつ、ロゼが食い入るように見つめるが、アストリットと初対面である事を思い出したのか、顔を赤くして俯き加減で挨拶をする。


「あ、あの。初めまして。ユウと同じクラスの柳ロゼっていいます!」


「貴女がロゼちゃんなの。ユウから色々と話は聞いていたけれど、ちょっと印象が違うわね」


「ちょっとユウ!私の事なんて話したの!?」


 隣に座るユウの横っ腹を突きながらロゼは小声で質問する。


「ええっ!?いや、その、いつも元気で明るくて物知りな子だってくらいしか・・・」


 しどろもどろになりながら答えるユウに顔を赤くしたロゼを見ながら上級生二人は頬笑む。


「他意は無いのよ、元気で明るい子って聞いていたから。なんだか大人しいなって思ったってだけだから」


 そうはにかみながら言うアストリットにロゼはさらに顔を赤くし俯いてしまう。

 絶世の美女と謳われる紫苑を超える美しさと気品を兼ね備えたアストリットの視線を受け、同姓であっても心がときめいてしまったロゼはその心を隠すように俯いたのだ。

 そんな事とは知らないアストリットは首をかしげるだけであった。




 お互いの簡単な自己紹介も終了し、思い思いの昼食を終えたユウ達はついにアストリットが手に入れてきたデザートを食べる瞬間がやって来ていた。

 紙袋から取り出されたのは一見するとどこにでもありそうなプラスチック製の容器に入ったプリンが三つ。そして・・・。


「こ、これが至高のデザートと称されるアレスケーキですか・・・」


 タルト生地の上に載っているのは芳醇なチーズの臭いからも分かる通りチーズクリームである。

 だが、ただのチーズクリームでは無い。何層にも重ねられたチーズの層がその存在を主張していた。

 ユウが恐る恐る呟くと、周囲に座っていた生徒たちからの視線が集まる。

 本日の戦いに敗れた敗者や、戦い事態には参加してはいなかったものの、アレスケーキを一口でも味わいたいと思う者、以前戦いに勝利しアレスケーキを口にした事のある者たちの熱い視線だ。


「元々小さいけれど四等分すれば少しは味わえるわね」


 周囲の様子など気にも留めない様子でアストリットがアレスケーキをフォークで四等分に切り分ける。

そして各々がフォークでその柔らかなアレスケーキを刺し、見た目や臭いなどを十分に堪能した後に口に含む。


「「ふわぁ~」」


「っ!」


 蕩ける様な顔で呆けるユウとロゼに余りの上手さに衝撃を受けている紫苑。アストリットだけは黙々と味を堪能していた。


「なんですかこのケーキ!噛めば噛むほど、色んなチーズケーキの味がして・・・それなのに一つ一つの味がちゃんとする。こんなに複数の味がしたら、食べてるうちに味がごちゃ混ぜになって単品同士の味なんて分からなくなりそうなのに・・・」


「そうだよね・・・最初はベイクドチーズの濃厚な、でもしつこくない味がして、次にしゅわ~ってムースみたいにとろけたと思ったら、冷たいレアチーズケーキの味がして・・・」


 口々に感想を言い合うユウとロゼ。それを何故だか誇らしげにニヤけているアストリット。

 続いて口にしたプリンも大変美味しく、三人をそれぞれの持てるボキャブラリーを駆使して感想を言い合っていた。


「確かにこれだけ美味しければ毎日のあの光景は当然かもしれないね」


 腕を組みうんうんと唸っているロゼにユウが同じく首を縦に振る。


「それに聞くところによるとこれ作ってる店員さんって美人なんでしょ?まあ、男性に使う言葉として適切かって言われると困るけど・・・アストリットお姉さまはケーキ買う時にアレスって名前の店員から買ったんですよね?美人さんでした?格好良かったですか?」


 噂やゴシップ好きのロゼからキラキラした眼を向けられたアストリットは、飲みかけていた紅茶を吐きだしかけるのを必死に抑え、


「コフッ!え、え~とそうね。格好良い方じゃないかしら・・・?」


 微妙な顔をして答えるアストリットに、ロゼは何を思ったのか二ヒヒと口を歪め質問した。


「アストリットお姉さま。もしかしてアレスさんの事好きだとか・・・?」


 と浮かんできた邪なネタについて質問するとアストリットではなく、


「「そんなことはないわ!(ありえません!)」」


 と口を揃えて紫苑とユウがアストリットが引くほどの剣幕で反論した。


「そ、そうデスカ・・・スミマセンデシタ」


「そ、そうよ。ロゼちゃん。私が購買に通っているのはケーキ目当てだし、店員さんのことなんてこれっぽっちも気にしてないわよ」


 二人からの言葉に固まってしまったロゼにアストリットがようやく返事を返した事で、反論した二人もようやく落ち着きを取り戻した。


((あれっ?どうして私(僕)はこんなに必死に弁解しているのだろうか?))


 我に返った二人はそんな疑問と、心にもやもやを抱えながら昼食はお開きとなった。




 午後の授業も終わり下校時間となった。

 ユウはロゼと別れの挨拶を終えると、マリーと合流して寮への道を歩く。

 その道中の話のタネになるのは魔法学科で紫苑が来たことや、昼食の時の出来ごとについてだった。


「私も購買のデザート気にはなっているんですけど、中々あの中に飛び込む勇気が無くって・・・」


 苦笑いを浮かべたマリーに確かに華奢な体つきに小さい西洋人形みたいなマリーが、あの聖戦に挑んで勝てるとは思えないユウだった。

 他愛もない話をしているとブルー・ヘブン寮へと到着する。

 慣れた様子で扉を開け、玄関にて靴を脱ぎ、室内履きに履き替えた所で、廊下を掛けてくる軽快な足音が聞こえて来た。しかし現れたあ人物がユウたちの知らない人物だった。


「お帰りなさい!____って君たち誰?」


 相手もそう思ったのであろう。満面の笑みで出迎えた様子だったが、相手が知らない生徒だと認識すると疑問を投げかけながら首を傾げている。


(もしかしてこの人が二年生のもう一人の寮生さん?)


 そうユウが思い至った所で、見知らぬ上級生から再度声がかかる。


「あっ、もしかして新入生の子かな。ボクはシャルロット・シュトラウス。ブルーヘブン寮の二年生さ。家庭の事情であまり寮や学校にいないけどよろしくね」


 銀色に赤い眼をした中性的な顔立ちにショートヘアの少女がユウたちに挨拶する。


(ウサギみたいな女の子だな)


 そんな失礼な事を考えていたユウは慌てて自己紹介をする。それに遅れて隣にいたマリーもシャルロットに同じく挨拶を交わす。

 お嬢様学校に通っている学生には珍しい男口調の少女、シャルロット・シュトラウス。

 しかし着ている服装は天津乙女女学院の制服であるし、なによりシャルロットの制服の下から山のように突き出し主張している胸が女性であることを窺わせている。


 美しい紫の長髪の生徒会長に、その生徒会長をも超える美貌を持つポニーテールの最上級生、縦巻きロールのお嬢様に、男性口調の目の前の上級生。緊張するとすぐ噛んでしまう可愛らしい同級生、そして・・・


(男のくせに女学院に通っているボク・・・)


 お嬢様学校に通う生徒の中で特に際立って目立つ異色の生徒がこの寮に集められているなとユウは思う。

 まぁ、学院寮のシェリーによって特異な生徒がブルーヘブン寮に集められているのは確かであったが。


 制服を脱ぎ、部屋着へと着替えた面々はリビングにあるテーブルへと集まりお茶会となっていた。

 すると生徒会の仕事や部活を終えた面々が次々と帰寮し帰ってくる。

 返ってきた面々は久々に会うシャルロットを見つけると喜び勇んで近付いてくる。

 

 再会を祝した雑談が交わされた後、シャルロットもいるうちにと寮内での担当を決めなおすことになった。 

 寮では下級生が特定の上級生のお世話を担うのが習わしとなっている。

 反対にお世話される側である上級生は下級生の指導、監督を担うといったものである。

 紫苑のお世話をヴェロニカが、アストリットの世話をシャルロットが。

そして新入生が入ったことにより新しく二年生のお世話を一年生がする事になるのだが、その辺りの話し合いを行うようだ。

 最終的にマリーがシャルロットのお世話を、ユウがヴェロニカの世話をすることになった。


「まあ基本的にボクは寮にはいないから余りすることないと思うよ。僕の代わりにアストリットお姉さまのお世話を頼めるかな?」


 上級生であるアストリットのお世話役であるシャルロットだが、学院にいることは少ない。その為、常日頃からアストリットに対して申し訳ない気持ちで一杯だったのだ。

 自分のお世話をする下級生が出来た今、自分の代わりにお世話を頼もうと思い両者に同意をとる。


「は、はい!シャルロットお姉さまとアストリットお姉さまのお世話はお任せくだしゃい!」


 やる気満々で頭のリボンが回転し飛んでいきそうなマリーとは対照的に、


「私はシャルが罪悪感を感じる必要は無いと思うのだけれど。そもそも私が転入してくる前はシャルは誰のお世話もしていなかったのだし・・・」


と、後輩からお世話させる事に慣れない転入したてのアストリットはそう考える。


「アリー。ここはこういう風土の学院なのだから諦めなさい」


 紫苑がシャルロットの援護をすると観念したように了承を示すアストリットだった。


「ではユウさん。私のお世話係りは任せましたわよ」


「はい。こちらこそ宜しくお願い致します。ヴェロニカお姉さま」


 紫苑、ヴェロニカ、ユウのチームも滞りなく決めごとは終わったようだ。

 通常、下級生が行う上級生のお世話とは、朝に部屋まで起しに行く事から始まる。掃除や洗濯は各人でやるが中には下級生に任せている者もいる。

 寮のお風呂掃除やお茶入れ等が主な内容になってくるだろう。

 ヴェロニカがユウに頼んだのは朝の紅茶を入れることだけ。部屋の掃除や洗濯といったことは自分で行うということだった。

 それはアストリットや紫苑も同じで、この寮では自分のすべきことは自分でやるのだそうだ。

 なので最低限の事として、朝に起しに行く。紅茶を入れるといった行為のみを任せるようだ。


「とはいっても、相談事があったら何でも相談に来ていいのよ」


 それが上級生の役割なのだからという紫苑。


 じゃあ、男なんですけどバレないように生活するにはどうしたらいいんしょうか?


 なんて聞けないや。と誰かに一番相談したい事をぼんやりと考えるユウ。

 その日は遅くまで雑談が続き、盛り上がるのであった。




 深夜、学院長室に佇む妙齢の女性が一人。

 学院長であるシェリー・メイディランドだ。

 室内には彼女一人の姿しか見えない。しかし彼女はそこに確かに存在する気配に話しかける。


「あぶり出しは済んだのですか?」


「はい。マイロードの話では同じ寮生の中に潜んでいる。とのことです」


「では、あの子が・・・」


「発症はしていないようです。取り除くにしても発症していない状態であれば宿主ごと消滅させてしまう危険性があるそうなのです。故に発症を待ち、ウイルスをあぶり出し、スキルで断罪する。しかし公にスキル・・・魔法を使える時でないと怪しまれます」


「そうですね。私としてもあの方の迷惑になるような真似は致しません。・・・クラス対抗戦が数ヵ月後にあります。あの子の実力なら間違いなくクラス代表に選ばれるでしょう。クラス代表戦の次はヘクセンナハトを開催します。」


 ヘクセンナハトとは学院の各学年ごとに決めた代表者同士でチームを組ませ、学年別に戦う学年行事の事である。


「では、ヘクセンナハトとやらで宿主とマイロードを戦わせる・・・と?」


「ええ。それが時間はかかるかもしれませんが一番穏便に済む方法でしょう」


「了解した。マイロードにもそうお伝えしておこう」


 見えない存在が話を切り上げようとしているのを察したシェリーが言い放つ。


「いえ、それには及びません。その件は私から直接お伝えします」


 突如やってきたあるじに当時は驚いたものの、忠誠を誓っているシェリーは最近会っていない主に合う口実をみすみす逃す気は無く、胸が熱くなるのを感じていた。


「何?・・・まあいいだろう。その件は貴女からお伝えしてもらおう」


 シェリーの言葉に冷ややかな口調でいう存在。

 だが、シェリーの能力を知っている存在はシェリーを無下に扱う事は出来ない。

 了承の意を伝えると今度こそ、その存在は部屋を後にする。

 再び一人となった学院長室でシェリーは主と会う時はどんな服装が良いかしらと年甲斐もなく体をくねくねさせながら身悶えるのであった。




 

ボクっ子な女性で思いつく名前が真君かシャルロットなのは筆者が歪んでいるからなのでしょうか・・・

次回、クラス対抗戦。

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