魔法学科
魔力。それは人の体に内包されるエネルギー。その魔力を使用して発現される事象。それが魔法である。
魔法には多種多様な系統が存在し、その数を分類すると大雑把にだが、三つの種類に分類される。
一つ目は攻撃魔法。ユウが天津乙女女学院に入学した初日に、学院長に放たれた火の玉。あれが攻撃魔法に当たる。攻撃魔法と一口に言っても細分化されており、学院長の使用した魔法は遠距離攻撃魔法と呼ばれ、他にも直接攻撃魔法といって体に直接身に纏い発現させるものもある。
二つ目が防御魔法。ユウが学院長の攻撃を防いだ水の防御膜がそれに当たる。防御魔法にも種類があり、全身を球体状に覆う全方位防御型。ある一点のみに防御膜を張る一点集中型などがある。
三つ目が補助魔法。基本的には攻撃魔法と防御魔法以外の魔法全てが補助魔法に分類される。
召喚魔法や束縛系魔法、回復魔法なんかも補助魔法に分類されている。
魔法には属性も存在し、地水火風の四大元素に加え、光や闇の属性を加えた全六属性の魔法がある。
とはいっても闇属性の魔法を使えるのは過去存在した大魔法使いと呼ばれる者たちくらいで、現代の魔法使い達では使用出来る者は少ない。
よって授業では四大魔法を主に学んでいくことになる。
魔法を使用するには自身の魔力や周囲に漂っている魔素と呼ばれる魔力の素を操り、自身が起したい事象を明確にイメージしなければならない。
下級魔法に火炎玉という技があるが、この程度の魔法であれば対して苦労する事無く魔法を行使できるだろう。しかし中級から上級魔法となると発現までに多大な工程、集中力や気の遠くなるような魔法の修練が必要となってくる。
だが、魔法使いたちはその工程を簡略化する事に成功した。
それが古の時代から使われていた杖の登場である。
魔素を多量に含んだ空間で育った樹木を加工し作られた杖は、魔法使い達の思考補助を行ってくれる。
それによって魔法使いたちは初心者であっても高度な魔法を使用する事が出来るのようになったのだ。
無論、高度な魔法を使用するするには大量の魔力を保有していなければならないが。
杖を含む魔法を使用する際に用いる道具。もしくは魔法を込められた道具を魔法道具。略して魔具と呼ぶ。
魔具にも性能差があり、魔力を通すことで明りが灯るランプのような簡単なものから、魔力を込めると一国をも焦土に化す程の大規模破壊魔法を放つことのできる魔具まで存在する。
杖が登場してから既に数百年が経過しており、杖は現代ではカード型のデヴァイスに成り変わっている。高速演算を可能とする縦四センチ、横六センチ程の大きさのカード型をしているデヴァイスを用る事で現代の魔法使いたちは魔法を使用しているのだった。
もちろん、魔法は幻想的なもので非科学的なものだ。だが、魔力や魔素といったものの研究が進み、精霊と呼ばれる存在が明らかになったり、杖を用いるよりも遥かに魔法を使用するのに効率のよい鉱石が発見された。それが魔鋼岩と呼ばれる鉱石である。
この魔鋼岩を研磨し加工した宝石を埋め込まれた基盤。これこそがカードと呼ばれる魔法使いの新たなる魔具だ。
精霊というのは、自我の無い体全体が魔力で構成された精神生命体のことで、一部の召喚魔法に適性のある魔法使い達が召喚魔法を使用し使い魔としてこの世に具現化出来る存在である。
精霊の姿は一番最初に召喚した際に注ぎ込んだ魔力量や召喚者の資質によってその形や力を具現化する。
召喚された後でも魔力を注ぎ込めば精霊を姿かたちを含め成長するが、精霊の成長速度は非常にゆっくりで並大抵の成長は望めない。
その為、召喚魔法に適性のある魔法使いたちは最初から己が全力で精霊を召喚し従えるのだ。
一度召喚された精霊は体内の魔力が消えるまで活動を続ける。仮に魔力が全て無くなり消え去ってしまったとしても精神生命体は不滅のため、術者が再び召喚魔法を使用すれば再召喚が可能だ。
自我を持たない精霊ではあるが、召喚されたことにより自我を形成する。その自我は召喚者の性格に似たり、また真逆の性格になったりと千差万別である。
精霊の自我は自然消滅する事は無く、精神破壊系統の魔法でも使用されない限り簡単には消滅しない。故に召喚士たちが、この性格の精霊は要らないから一旦消し去ってから再召喚して別の自我を生まれさせる。といった行為は出来なかった。一蓮托生。一生の付き合いとなるのだ。
例外として複数の精霊を使い魔として使役出来る者は、召喚時に一体目を呼ぶか新たな精霊を召喚するかをデバイスからの応答や頭の中に声が直接響くなどして選択することが出来る。この行為によって複数の能力や性格の精霊を使い分けることが出来る。
この惑星の住人達は適性のある魔法の属性に応じて体の一部が変化する。
適性属性はその人物の家系によってある程度固定されるが、覚醒遺伝等の影響でその家系以外の魔法を得意とする人物も稀にいた。
体の一部とは髪の毛の色であり、二階堂ユウの髪の色は茶髪。土属性の魔法を扱える事を表していた。
ただ、あくまでも適正が高いというだけで、他の属性の魔法を使えないということはない。きちんとした修練を励めばちゃんと習得することは可能だ。
紫苑のように髪の色が黒に近い紫といった髪を持つ人間は、複数の魔法に適正があるといっていいだろう。紫苑であれば雷の魔法。これは火と風の複合魔法にあたる。
複合魔法とは二属性以上の魔法をかけ合わせて生まれる魔法の事を指す。
二階堂ユウはとあるユニークスキルを複数持っている為、複数の魔法が使えたりするが・・・ここでは説明を省こう。
今話した内容はユウ達が入学し魔法学科で習った情報のごく一部だ。
既にユウが天津乙女女学院に入学してから2週間が経過していた。
自分が男性である事が感付かれるのではないか?とビクビクしていたのだが、ここ2週間過ごしてみてバレる様子は無かった。
もちろん、体育の授業がある際は一番先後に着替えたり、寮でのお風呂の時間もお互いにすれ違うように気を使い、言葉に関しても初日こそ男言葉をポロッと使ってしまったが、今のところ気を付けている。
そして現在、天津乙女女学院に入学してから既に数回行われている魔法の授業が行われる。今は四時限目。教室の入り口から魔法学科の担当教師であるカトレアが入ってくる。
最初にカトレアから軽い挨拶があり、早速授業に入った。初日から実際に魔法を使ってさあ実習!ということは無く、基礎知識からのおさらいをしていたのだが、今日からついに実習へと入る。
「皆さん。これまで話してきた通り、皆さんの適正属性に合わせた魔法を発現してもらおうと思います。まず、精神を落ち着かせ、頭の中に光の玉をイメージします。そして体内に流れる魔力を手のひらに流れ込むようにイメージし光の玉を具現化します」
そう口で言いながら右手の手のひらの上に光球を出現させるカトレア。出現した光球はカトレアの手のひらを離れると彼女の周囲を周回し始める。
「光の玉と言いましたが、自分の得意な属性の玉を作ってもらって結構ですよ。大切なのは出来あがりをイメージしそれに魔力に伝えることです」
カトレアの言葉に「むむむ」と目を瞑りイメージを明確にし、光の玉を出現させようとする生徒達。
次第に生徒街は大小様々な色とりどりの玉を発現させることに成功する。光の玉を浮かび上がらせるなど魔法使いとしては初歩の初歩であるが、日常生活をする上で必要な魔法(以下生活魔法と記載する)以外の魔法の使用は法律により制限されているためこういった魔法の使用は皆初めてである。そのため仕方がないといえばそうなのかもしれない。
それに魔具を使用しない魔法の行使は、魔具を使用した魔法の発現に慣れ切った者たちからすると慣れない作業であるため、難易度も跳ね上がるのだろう。
まあユウは難なく土色の光の玉を発現させてはいたが・・・。
最初から杖やカードを使用し魔法を教えないのにも理由はあった。
杖やカードといった魔具は確かに使用者のイメージ力を増幅してくれるが、元々の想像力が足らなければいくら増幅されたとしても、大して強力な魔法が発現しなかったり、己の保有魔力量以上の魔法を発現することとなり、魔法の行使をする前に魔力欠乏症で倒れてしまう事になるからだ。
故に最初はイメージ力を付けさせるための訓練を行う。そして明確なイメージとそれを顕現させるだけの魔力量の試算と魔力の練り方を十分に理解させた上で魔具を用いた魔法の行使方法を教えていくのである。
(流石にみんな苦労してるなあ・・・)
ユウは自身の周りをゆっくりと周回する土色の光球を頭の片隅で制御しながら周囲を見渡す。
今日の授業は実技とはいえ、簡単で危険度の低い魔法を取り扱うため普段通り教室での授業となっていた。
ユウの周りでは同じクラスの生徒達が出現した光球を自身の周りを周回させようと制御しているが、中々上手くいっていないようだった。
最初はゆっくりと、次第に早くしていき、また徐々に速度を緩める。といった作業が光球を作り出せた者の次の課題だったのだが、勢いよく回し過ぎ、目を回しふらふらとよろける者。速度の乗った状態から徐々に速度を緩めようとして光球事態を消失させてしまう者等々。
魔具に頼らずある程度、己自身の力だけで思考制御するのがカトレアが内心考えている目標だ。
その為、コツは教えるものの基本的にはノータッチ。見ているだけだ。不慣れな魔具無しでの思考制御に苦戦している者のが大半だが、一部の生徒は上手く光球を操っている。
(ふむ。中々筋のある子もいるようですね)
上手くいってない生徒から目を外しカトレアは周囲の生徒にも目を配ると、完璧な光球を作り出し自由自在に操っている者が見えた。
一人目はユウ。土色の光球を周囲に浮かべぼんやりとしている。集中しないでもこれ位何ともないと言いたげな操り方である。
二人目はユウに初めに話しかけて来たロゼである。自身の髪の色と同じピンク色の光球をやや危なげな操作ではあるものの、ちゃんとした球体を作れている。
三人目は一番後ろの窓際にいる水色のショートヘアの生徒。自身の周りにいくつのもの水色の光球を浮かべ上下に行ったり来たりとさせている。
カトレアはその様子を見て微笑むと、他の生徒に再び目を移しコツを教え始める。
光球を生み出し、動かす事から始めたカトレアの授業はこの数日で生徒たちの思考制御力を向上させ、遂に魔具であるカードを用いた授業へと入り、より実践的な授業へと入っていた。
天津乙女女学院の卒業生はエスカレーター式に大学へと進学するが、最終的な進路の大半が国際魔法士を選ぶ。
国際魔法士というのは、多発する魔法関連の事件・事故を調査、解決する魔法使いの事で、天津乙女女学院のあるニホンという国家のみならず、世界で活躍する高度な魔法技能を持つ人材を指す。
他にも魔具の開発を専攻する分野も人気だ。この二つが人気に上がる理由として、魔法を好きに使用出来るのが強みだろう。
天津乙女女学院を含む魔法学院を卒業した者は生活魔法以外の全ての魔法を使用するための国家試験を受ける権利が与えられる。
その試験にようやく受かって国際資格を発行してもらえ、学院外で魔法が公に使えるのである。
だが、折角資格を有していても飛行魔法や攻撃系統の魔法等は使用する機会があまりない。
というのも、デバイスを用いた魔法は全てデバイス内に記録されるのだ。誰がいつ、どこで何の魔法を使用したのかを記録される。
さらに危険度の高い魔法や攻撃魔法等が使用された場合、魔法省と呼ばれる管轄に杖やカード等のデバイスから自動的に通報がされ、その使用目的が法律に違反しているかどうかを審議にかける羽目になってしまう。
ただし抜け道はあり、デバイスを用いない魔法の使用であればどんなに危険度の高い魔法であっても感知されたり、記録されたりといったことは起きない。
ただその場合は目撃者がいれば当然通報される恐れもあるし、国家資格を有していない者が魔法を使用した場合は即裁判にかけられる等、厳しい処置が下される。
要するに、攻撃魔法や飛行魔法等は使うと非常に面倒な事態になるということだ。
しかしそうならない例外がある。それが国際魔法士だ。危険な仕事に従事する彼女達は選び抜かれた精鋭達。故に使用出来る魔法に制限は無く、どんな魔法を使用しようが魔法省に通報が行くことは無い。
犯罪者と認定された対象に対して使用する魔法であれば、どんな魔法であれ処罰の対象にならない。まあ、一般人に振るったりすれば、即座に処罰対象にはなるだろうが、そんな真似をする馬鹿はいない。
そういった事情もあって国際魔法士を目指す者は後を絶たない。それは天津乙女女学院でも変わらず、いや、天津乙女女学院のような進学校だからこそ、カトレアのような魔法学科の教師はより実践的な魔法を学ばせるのである。将来役に立つように。
裏話として、クラス別、学年別で誰が最強の魔法使いかを決める戦いが一年に一度あり、三年に一度、学校対抗試合なんてものもある為、他校に負けないよう育て上げる目的もある。
気高く、上品でお淑やかに、そして強くあれ。というのが当学院の学院長であるシェリー・メイディランドの掲げる指標だ。
校舎の地下に作られた地下実習場に生徒たちは緊張した面持ちで集まっている。
今日は対人戦闘を想定した模擬戦が行われる予定である。同級生同士の対戦がお互い手加減が出来る技量を有してからという配慮があり、相手には精霊や教員がすることになっている。
ユウ達は魔法強化された壁の強度をコンコンと叩きながら対戦者がやってくるのを待っているのだ。
「緊張するなぁ~」
「大丈夫だって、平常心平常心」
緊張して落ち着かない様子のロゼに声をかけるユウ。雑談を交わしていると実習場の扉が開かれ、入ってくる人物が二人。
その姿に一同は皆驚いている。
(ええ!対戦相手ってあの人なの!?)
驚くユウの前で魔法学科の担当教師であるカトレアが話し始める。
「本日は対人戦闘を想定した模擬戦を行います。通常は召喚した精霊、使い魔や私たち教員が相手になるのですが、身近である上級生の実力を知ってほしいという学院長の御言葉があり、今回は特別に生徒会長である秋月さんに来てもらっています」
カトレアが紫苑に挨拶するよう目配せし、
「御機嫌よう。今回の模擬戦を担当します三年の秋月紫苑よ。初めての対人戦かもしれないけれど、緊張せず遠慮なくぶつかってきなさい」
自信を漂わせつつ挨拶を終えると紫苑は実習場の奥へと移動を開始する。さすがに一人で三十人近くいる生徒の相手を紫苑一人に任せるのでは時間がかかり過ぎる。
人数を二班に分け、模擬戦をすることとなった。班分けの結果、ユウとロゼの対戦相手は紫苑が相手の班となった。
「まさか、雷姫が相手なんて・・・」
「雷姫ってなに?」
ロゼが漏らした言葉に反応するユウ。
「一緒の寮なのに知らないの!?えっとね。紫苑お姉さまって雷属性の魔法が得意なのよ。しかも同性の私たちでも近寄り難い美貌に眼つき。それに口調もちょっと強めじゃない?だからお嬢様気質なお姉さま方は近寄りがたいんだって。いつも体にバチバチと静電気を放っているような近寄りがたい美女だから雷姫。だって」
「な、なるほど・・・」
確かに口調と目つきが他の温和なお嬢様に比べるとキツイかもなと納得するユウ。
「準備は出来たかしら?」
対面に立つ紫苑から生徒達に声が掛る。誰から挑むかについて「紫苑お姉さまに挑むなんて恐れ多い」と弱腰だ。そこで仕方ないとばかりにユウが前に出る。
「ふうん。まずはユウってわけね」
「はい。宜しくお願いします。紫苑お姉さま」
そう言うと両者は構える。両者の間に立つカトレアの使い魔である小さな妖精が戦闘開始の合図を下す。
(今まで家の中でしか使えなかった魔法を思いっきり使えるんだ!頑張ろう!)
男である自分が魔法を使えるという秘密を家族以外の周囲にひたすら隠してきたユウは公の場で魔法を使う事が許される現状に喜びを隠し通せない。
笑顔で一番最初に習った光球という魔法を使い周囲に光球を複数浮かび上がらせる。
デバイスによる思考補助を受けない魔法の行使に紫苑の眼つきが鋭くなる。
「一年生。しかも魔法学科の実技の授業を受けてまだ数回といったところでしょうに、随分と扱い慣れているわね」
冷静に分析する紫苑。未だ片足を前に出したまま構えているだけだ。
(先手必勝!)
ユウは光球を時間差で紫苑へと突進させる。素早い動きに複雑な起動を描きながら飛んでいく光球は完璧にコントロールされており、ユウの制御能力の高さが窺える。
「上手くコントロールされているわね。でもそれだけじゃ私は倒せないわよ」
飛来した光球を紫苑は同じ数だけ帯電した紫色の光球を出現させ迎撃する。紫苑の光球に触れたユウの光球はバチッという音と共に消失する。
「込めた魔力やイメージ力が弱ければ同じ魔法でもこのように消滅してしまうわよ」
ユウにアドバイスしながら光球をまとめ上げ、ユウへと向けて一直線に飛ばす紫苑。
直撃コースだった光球を遮るようにユウの前に土の壁が出来、光球はそのまま土の壁にぶつかると消滅した。
「土属性の壁・・・ね。私の雷属性とは相性が悪いわね」
そう言いつつも紫苑の表情は曇らない。紫苑が右手を振るうと風の刃が出現しユウの作りだした土壁を切り裂き、風が砕いた壁の土を巻き込み、土煙が巻き起こる。
土煙からユウがひと振りの剣を持ちながら紫苑へと肉迫する。迫るユウを紫苑は同じく剣を出現させ鍔迫り合いへと発展する。
ユウの剣は先程崩れた土壁の土を凝縮した土の剣。対して紫苑の剣は魔力を変換し出現させた雷を宿した紫色のエネルギーの塊のような剣だ。
「はあああああ!!」
気合いを込めて押すユウ。力は男である自分の方が遥かに強いはず。なのに現実はユウが両手で剣を握りしめ押しているのに、紫苑は剣を片手で涼しい顔で押しているのだ。
(くぅ、どうして!!)
紫苑はそのまま剣を振りぬくように押すとユウは後退させられる。
後退したユウに素早く接近した紫苑は剣の先端をユウの喉元へと突き付ける。
「はい、決着。壊された壁を目隠しや剣の生成に利用したのはいい判断ね。中々良かったわよ」
剣を解除しユウに対して対戦時のアドバイスをする紫苑。一方、ユウは上級生に負けるのは当たり前だと思いつつも悔しさがこみ上げてくる。
だが、それ以上に自分の思った通りに自由に魔法を使える喜びに内心喜びをかみしめていた。
(魔法を自由に使えるって最高だ!もっと練習しなきゃ!)
紫苑にお礼を言いつつユウが離れると、先程の戦闘で場馴れしたのか次の生徒が紫苑と向かい「宜しくお願い致します」と戦闘を開始していた。
班全員の模擬戦が終了し紫苑から生徒達に次々と講評が述べられる。その言葉を真剣な眼差しで聞く生徒達。
滞りなく授業は終了しお昼となった。生徒たちはそそくさと実習場の片づけを行うと一斉に実習場を飛び出して行った。
飛び出して行ったといっても、そこはお嬢様学校。ダッシュではなく、あくまで優雅に早足ではある。
その様子に呆気にとられるユウ。すると後ろから紫苑が近付いてきた。
「あら、ユウは購買には行かないんのかしら?」
「え?ああ、はい。今日は食堂を利用しようかと」
「そう。一応言っておくけれど、食堂でも購買で購入した物は食べれるのよ。恐らく他の皆は購買のデザートを買ってから食堂に行く気でしょうしね」
「噂の購買で販売しているっていうデザートですか?」
「ええ。私もアリーから分けてもらって食べたのだけれど、言葉では言い表せない位、美味しかったわ。でも今日は新入生達に譲るわ。いつも上級生ばかりで独占しても悪いもの」
実は地下の実習場から一階に続く階段を上がり、渡り廊下を抜けると購買があるという好立地に地下実習場はある。
なので四時限目に地下実習場を使う授業のある生徒達は購買で繰り広げられる熾烈な争奪戦に一歩リード出来るのだ。そんな理由もあってユウを除く殆んどのクラスの生徒たちは購買へと直行したのだった。
では、実習が無い場合の争奪戦はどうなるのか?
天津乙女女学院は正門を抜けてから一直線に桜並木が広がっている。校舎へ辿り着く前に左手に大きな校庭があり、右手には教会が併設されている。教会の少し正門側に道幅五メートル程の道があり、そちらに行くと各寮が見えてくる。
校舎は左右対称に作られており真四角いの建物で中央は吹き抜けとなっていて、噴水がある中庭となっている。階数は四階建て。一階が職員室や物理等の実験を行う部屋や保健室がある。二階が一年生の教室、三階が二年生の教室、四階が三年生の教室といった感じで上級生が上の階に配置されている。各階の空き部屋に部活動の部屋があったりするが割愛する。
食堂は学院の北側に大きなヨーロピアンテイストの建物があり、渡り廊下を通じて入れる。肝心の購買は食堂の建物の横に小さく隣接しており、文房具等が陳列棚に並べられていて、食料品は直接レジにて店員に注文する形をとっていた。
下の階に教室がある下級生の方が上級生より早く購買に辿り着けそうな気はするが、校舎の東側に非常階段が伸びており、そこを使うと上級生でも比較的早く購買に辿り着ける為、大して差は無かった。
「今頃、アリーが調達してくれている頃だろうし、一緒にどうかしら?」
「いいんですか?」
「ええ、勿論よ。良かったら後ろのお友達もどう?」
「私ですか!?」
ユウが後ろを振り返るとそこには友達のロゼがいて驚いた顔をしていた。
「ふ、ふつつか者ですが宜しくお願いします!!」
「嫁入り前じゃないんだから・・・」
「えへへ。緊張しちゃって」
ロゼの言葉に突っ込みを入れるユウ。苦笑いのロゼは照れた様子で頭をカリカリ掻きながら了解の意を示す。
一同は購買での争いごとを余所に食堂へと向かうのであった。
次回!争奪!魔のデザート編!




