初登校
不定期投稿と言いながら連日投稿になります。
たまたま時間が取れたのが良かった・・・。
翌日。寮の面々がまだ寝静まっているであろう早朝にベットから抜け出し、寝ぼけながらまぶたを擦りつつ化粧台へと向かうユウ。
化粧台から化粧道具を取り出すとメイクを始める。
「ふああ~。さてと始めますか」
そう言いながら手順の書いてあるメイク道具を駆使し格闘する事、数時間。
「メイクはこれで良し・・・と。後は着替えを・・・」
メイクの具合を入念に確認しながら慣れない手つきでブラジャーを付けるユウ。
「うう、やっぱり情けない姿だなぁ・・・」
鏡に映る自分の女装姿に思わず顔をしかめるユウ。しかし初日は女の子達に囲まれてもバレなかったんだ。これからも気を付ければ大丈夫だと自身に言い聞かせる。
決意を新たにブラジャーに厚みの小さいパッドを押し込む。限りなくAに近いBといった位に膨らんだ胸にまたもユウの表情は曇るが、頬を叩き制服を着ていく。
白のロングスリーブに長めのスカート。胸に一年生の色である黄色のリボンを結べば天津乙女女学院の制服姿の完成だ。
思っていたよりもメイクやら何やらに時間がかかってしまったと早足で食堂の代わりとなるリビングに向かう。
リビングには既に寮生の面々が眠たそうに各々の席に着席している。
眠たげにしてはいるももの、全員が制服を着ている事から天津乙女女学院の生徒の規律の良さが窺える。
寮母さんの作ってくれた、こんがりと焼けたトーストにスープとサラダという朝食を食べ、昨夜早速頼んでおいた昼食用のお弁当を受け取ると玄関へと向かい登校するユウ達。
「おはようございます」
「お早う御座います」
校舎へと続く桜の花びらが舞う短い並木道を可憐な乙女たちが、優雅にそして優しくあいさつを交わしている。
それはもちろん、ユウ達の周りでも行われているわけで・・・。
「お、お早うございます。お姉さま」
「おはようございます・・・お姉さま・・・」
「おはよう、みんな」
「お早う御座います。皆さん」
すれ違う生徒たちが緊張した面持ちで挨拶をする。その対象である二人の女性。美しい濃い紫色の髪をした紫苑と艶やかな黒の長髪をポニーテールにしているアストリットは、すれ違う生徒たちからの熱い視線を受けながら挨拶を返している。
「ああ、お姉さま方に挨拶していただけましたわ!」
「お姉さま方に挨拶していただけるなんて夢のようです・・・」
そんな在学生達のセリフを聞いて二人に羨望の眼を向けるマリー。
「お二人とも凄い人気なんですね」
「本当に凄いね・・・」
マリーの言葉にユウもその光景を見ながら頷き呟く。
「いつものことよ」と返す紫苑とは裏腹にアストリットは「あはは・・・」と苦笑いだ。
アストリットはまだ一般の学校から女学院に転校してきてから一か月しか経っていない為、慣れない様子だ。
下級生から上級生にまで挨拶を受ける二人だったが、ヴェロニカが二人の後ろから牽制している為、挨拶以上の発展はないようだ。アストリット親衛隊の真価が発揮されているといえるだろう。
そんな朝の登校を終え昨日判明している自分のクラスへと向かうユウ。マリーは残念ながら別のクラスだったらしく途中で別れていた。
「Aクラス・・・ここか」
教室のドアの上にある表札を確認し自分のクラスへと入ると、名前の書いてある自席へと着席し、授業の準備を始めるユウ。
天津乙女女学院では入学式の翌日から早速授業が始まる。机に教科書類を仕舞いながらふと思う。
(ブラがむず痒い。スカートがスースーする。女子がいっぱいいるよ~~~)
「ねえねえ貴女、さっき綺麗な上級生の方と一緒に登校してた子だよね?」
そんな事を考えていたユウにお嬢様学校には珍しい砕けた言い方をするピンク色の長髪を黒のリボンで纏めている少女が話しかけて来た。ユウはあの二人のことかな?と考えながら返事をする。
「紫苑お姉さまとアストリットお姉さまのことかな?」
少女の砕けた言い方に思わずいつもの調子で答えてしまったユウは内心「しまったあ!!」と思っていたが顔には出さなかった。
「紫苑お姉さまとアストリットお姉さまっていうのね。知り合いなの?」
幸い少女はユウの口調に疑問は持たなかったようだ。ユウはその事に安堵しつつ同じ寮生であることなどを説明した。
「そうなんだぁ。二人とも綺麗だったよねぇ。あっ!まだ名乗って無かったね。私は柳ロゼ。寮はレッド・フェアリーよ。よろしくね!」
ピンクの髪の少女ロゼは人懐っこい笑みを浮かべ手を差し出してくる。
「うん。私は二階堂ユウ。寮はブルー・ヘブン。よろしくねロゼちゃん」
差し出された手を握り返し握手をする二人。すると近くで聞き耳を立てていた生徒達が一斉にユウへと近付いてきて先程と同じ内容の質問を受ける。
そんな事をしているとホームルームの時間が迫ってきたのか、ドアを開け教員らしき人物が入ってくる。
「は~い皆~席について~ホームルームを始めるわよ」
教室全体に響き渡る声でこのクラスの先生らしき人物は生徒たちを自席へと着席するよう促す。
自分の周りから徐々に人が減りほっとするユウ。先生グッジョブ!と内心思っていると先生から自己紹介が始まる。
「皆さんお早うございます。私はこのAクラスを受け持つことになりましたカトレアと言います。一年間宜しくお願いします。ちなみに受け持つ教科は魔法学科になります」
カトレアと名乗った銀髪を頭の後ろで纏めてお団子ヘアにしている20代後半位の女性は、今後のカリキュラムについて説明をする。
それによると午前中は簡単な自己紹介と身体測定。午後からは現代文や数学などの授業が行われるらしい。
(身体・・・測定・・・だって!?)
(そんな事したら一発でバレちゃうじゃないですか~~~~!!!?)
冷や汗が止まらないユウをしり目にカトレアの話は進んでいく。
そしてそのまま一時限目に突入し教室の端から自己紹介が始まる。自己紹介も身体測定のことで頭がいっぱいで何を言ったのか覚えていないユウ。時間は刻々と過ぎていき、ついに身体測定を行う四時限目になってしまう。
(まずい。何の対応策も浮かばない。どどどどうすれば)
焦る頭で必死に考える。目を瞑り浮かんできた顔は学院長であるシェリー・メイディランド氏の顔だった。
貴方が通常の学生通りに生活するのであれば強力は惜しみません。何か困った事があったら、いつでも訪ねていらっしゃい。
その言葉がユウの脳裏でフラッシュバックする。困った時!今まさにその時じゃないか!と。
ちょっとお花を摘みにと教室を抜け出し猛ダッシュで学院長室まで向かうユウ。
ドアをノックし返答が返ってくるかドキドキしながら待って居ると中に入ってくるように促され入室する。
「失礼します」
部屋に入り、時間が無い為、早速本題に入るユウ。
「_____という訳なんですが・・・」
その話を黙って静かに聞いていたメイディランド氏は閉じていたまぶたを開け、ユウに向かってにっこり微笑む。
「そうでしたか。私も初日に身体測定があるのを失念していましたよ。失礼しました」
「いえいえ・・・じゃなくてですね!どうすればいいですか?受けない訳にもいかないんですよね?」
「そうですね・・・下手に断ったり欠席したりすると怪しまれる原因になるかもしれませんからね。ですが大丈夫です」
「何が大丈夫なんでしょう?」
落ち着いた態度のメイディランド氏に若干苛立ちを覚えるようになったユウの前でメイディランド氏が学院長室に隣接されている応接室から誰かに出てくるように言う。
応接室から出て来たのはユウと瓜二つの顔をした少女だった。
「カレン!?どうしてここに?」
そう、そこに立っていたのは紛れもなくユウの双子の妹であるカレンだった。
ユウとの違いは若干髪が長いこと位しか差がない。まあユウが女装をしている状態だからかもしれないが。
「いえ、実家に手紙が送られてきたんですよ。中身は初日のカリキュラムが載っていてこの時間帯に身体測定があるのが書いてありましたので、母に送ってもらったしだいです」
さも当然といった様子で淡々と答えるカレンにユウは戸惑いを隠せない。
「そう、一体誰が・・・体は大丈夫なの?」
「体を動かす位は出来ますよ。それに母から魔力をもらってきましたから。兄は安心してここに閉じこもってるといいです」
そう話すカレンは既に天津乙女女学院の制服を着ていた。どうやら学院長との話もついているようだ。
「そっか。悪いけど頼むよ」
「いえ、元々自分が通うはずの学校ですし、兄に迷惑をかけているのも承知していますから・・・」
頭に構内の地図は既にインプット済みだと学院長室から出ていこうとするカレンにユウは先程知り合ったロゼについて説明する。
「女装中に早速、女友達を作るとはやりますね。まあいいでしょう。後は任せてください」
ユウにジト目を向けながらカレンは教室へと戻って行く。
魔力欠乏症の所為で学校や外には出れず、内気で人と話すのが苦手な性格に育ったカレンだったがよく学校まで来てくれて身代わり(本当はユウが身代わりなのだが・・・)になってくれると妹に感謝の気持ちでいっぱいなユウ。
こうしてユウは初日の学校生活前半を無事に乗り切ったのであった。
代役による身体測定も無事終わり、再度入れ替わったユウは教室へと戻っていた。
四時限目も終わり、時刻は昼休みに差し掛かっていた。ユウは寮から持ってきたお弁当を広げると中身は野菜のたっぷり詰まったサンドイッチだった。
「ここ良いかな?」
そう問いかけながらユウの前の座席に座ってくるロゼ。同じく手元にはお弁当を持っている。
周りの生徒を見ると大半が食堂へと向かったようで教室の中は閑散としていた。
「どうぞどうぞ。ロゼちゃんもお弁当なのね?」
「うん。食堂って色んなメニューがあって凄いらしいんだけど、まずは寮のお弁当を食べて見たいかな~って思ってさ」
そう言いながら包みを開けるロゼ。ロゼのお弁当もサンドイッチの詰め合わせだった。
「どこの寮もサンドイッチなのかな?」
ロゼのお弁当を見たユウが疑問を口にすると、ロゼが「上級生から聞いた話だけど」と前置きして話し出す。
「寮のお弁当は全部サンドイッチなんだって。でも具やパンの違いで数百種類作れるらしいから飽きたりはしないんだって」
「へえ、そうなんだぁ。じゃあ全部制覇する事には進級しちゃうね」
「あははっ。そこまでしないってば。それに学食だけじゃなくて購買も気になるし」
「購買?」
天津乙女女学院には食堂の他に、文房具等の雑貨を取り扱っている購買があった。
そこでも飲み物や軽食が販売されており、小さなコンビニみたいな感じだった。
「うん。授業が終わってから地鳴りのような音が聞こえなかった?」
「ああ・・・そういえば聞こえたかも?」
身体測定が終わり、学院長室から教室へ戻って来て暫く経った後、授業終了のチャイムが鳴ったのだが、その後にもの凄い地鳴りのような音が聞こえて来たのだ。
「あれって二年生や三年生の上級生のお姉さま方が購買に向かって行った音らしいよ」
「ええっ!?だってココ、お嬢様学校だよ?」
男子校じゃあるまいし授業の終了と同時に購買へと駆けだすお嬢様達を思い浮かべ苦笑いするユウ。
「お嬢様を獣へと変貌させてしまう魔の食べ物を新学期の始まる一か月前位からかな。販売し始めたらしいの」
ロゼ曰く、二月頃に新しく派遣されてきた購買の店員が趣味で作り始めたデザートを店頭に並べて販売し始めたのが始まりだったらしい。そのデザートを食べた生徒達は口々に今まで生きて来た中で食べた事のない至福をもたらしてくれた証言し、噂になったらしい。
卒業していった元三年生の生徒達も「このデザートの為なら留年してもいい」と言わしめた程の物らしかった。
「教職員の先生方も生徒と争って買いに行っているらしいよ」
「それは・・・また・・・凄いね」
大勢の生徒を掻きわけ購買へと突き進むカトレア先生やメイディランド氏を思い浮かべて思わず笑ってしまうユウ。
「しかもそのデザート作っているのが男の人らしいの」
「えっ?天津乙女女学院って男性の職員っていないよね?」
「うん。何でも見た目が女性っぽいから特別に採用されてんだって。黒眼、黒髪なんだって珍しいよね。名前は確か・・・アレ・・スさんだったかな。私たちよりちょっと上くらいの歳で、お姉さま方にモテてるらしいよ」
「そうなんだ。ロゼちゃんは男の人に興味ってあるの?」
「ん~人並みかな。まあ私は口調でも分かるかもしれないけど、ここに入るまでは上流階級とかお嬢様とかって縁の無い所にいたんだ。だから生粋のお嬢様みたいに男の人に対して免疫がないって訳でもないし・・・ユウちゃんもそんな感じするよね?」
「あはは・・・まあね」
本当は男なんで男に興味無いなんて言えませんと言葉を濁しつつ会話するユウ。その後も楽しい昼食会は終了し午後の授業が始まったが、一般科目しか無く、さすがに初日から飛ばして進めることはないようで、受験勉強した内容の復習といった感じだった。
こうしてユウの初めての登校は妹や謎の手紙によって救われ事なきを得たのだった。
ついにあの男が!
果たしていつちゃんと出てくるのでしょうか・・・
次回は魔法についての説明会。になるやもしれぬ・・・




