召喚されし者達
アルドラは思う。数百年前に生き別れとなった親友と現在の主。二人を守り戦う事の出来る喜びを。
数百年前(アルドラにとっては、だが)、自分の生まれ故郷のアナトリア皇国が襲撃される事件があった。あの時、自分は幼竜で力が無く、敵の放った謎の重力場による攻撃からカオスを守るために結界を張り無事守り通した。
その後、不覚にも手負いの獣に攻撃を受けてしまい、重力場の消滅に巻き込まれ死んだと思った。
しかし次に目が覚めた時、そこは氷山の山々が連なる一角が目の前にあったのだ。付近には同じく巻き込まれたのであろう襲撃犯であるピエロの仮面を着けた者やアナトリア皇国の兵士達の遺体が転がっていた。
どうらや生き残ったのは自分だけらしい。だが、ここはどこだろうか?そう思いアルドラは長い旅に出ることとなる。
人の住まう事の出来ない極寒の大地。そこは全身を覆う体毛を持つゴリラやクマ、アイスコングやホワイトベアー等の縄張りだったのだ。
縄張りに入ったのは自分。決してやり返さない。そう心に決めていたアルドラだったが、連日連夜、昼夜を問わず襲撃された為、流石に温和なアルドラも怒り周囲を威圧し黙らせた。
するとどうだろう、魔物達の掟は弱肉強食。アルドラに従うとついてくるようになってしまったのだ。
それを機にアルドラは移動する事を止め、アイスコングやホワイトベアーにお世話になることにした。
そして情報収集に精を出すようになる。
遠くの地方にまで配下となった者たちを放ち、持ち帰った情報を整理する。するとアナトリア皇国という名前の国は存在しないこと、そもそも生まれた時代よりも遥かに前の時代に来てしまったことを知る。
幸いにして自分は長命な竜種。生きてさえいればいずれ会えるだろうと気楽に何十年、何百年と過ごすことにしたのだ。
そして時を過ごして行くうちにアルドラの周囲にはいつの間にか魔物の国が出来あがっていたのだ。
元々生存することの難しい極寒の監獄とも呼ばれる山脈。当然食べる物は少なく、食料を巡る争いごとが頻繁に起きていたのだ。
そこでアルドラは自身の持って生まれた膨大な魔力を変換し仲間に分け与えたのである。
アルドラからもたらされた魔力は魔物の体内で変質し生命エネルギーに変換され食事を取る必要が無くなった。
その話を聞きつけた周辺の妖精や雪女が新たに傘下に加わり国が出来た。
それから数十年、魔力を与え続けた結果、アルドラは体内の魔力だけでなく周囲の魔力を自由自在に操作する能力を得る。
その能力を習得した時、アルドラは存在進化を果たすこととなる。
氷結竜から氷河竜へと。
体は30メートルを超える巨体に。全身を覆う甲殻はより強固に鋭くなり、背中の翼は全てが結晶化し七色に輝いている。
丁度その頃だろう。アレスにより召喚されたのは。久々に見る人間。しかし今までにあったことの無い考え方を持つ男性。しかも何故かお互いの意思疎通が可能だった事も信頼関係を築く上で役に立った。
いつしかアルドラはアレスを背に乗せて冒険をするより肩を並べて冒険したいと願うようになる。
アレスの周りにはいつも様々な者達が居た。人間だけでなく魔物も。その中で一緒に冒険をする事が多かったのがジャンヌ・ダルクという少女だった。
回復能力に優れ、剣を扱わせても一流の美少女。アレスを通して友好を深め友人になった。
そして人間になりたいという願望は元の惑星に戻った後も強く心に根付いていた。
理由は分からない。だけど人間になりたい。
そんな願望を叶えるべくアルドラは動き出す。
のんびり屋な性格のアルドラだが、その一片に関しては行動は早かった。
行動力のある人型の配下にお願いし様々な国を巡らせる事、数十年。ついにアルドラは人種へと存在進化する術を見つけ出す。
存在進化の方法は実に簡単なものだった。種族としての技量を極限にまで上げ、自身の進化出来る最高位にまで達する。その上で竜人玉というアイテムを使用すればよいとの事。
既に自分は氷竜の上位種である氷結竜の上位種である氷河竜であるし後は技量を上げるだけ。技量も何故か知らぬ間に少しずつ上昇している。これはアレスに召喚されクエストをしている時に経験値が入っていることを意味していた。
そんな感じで順調にレベルを上げていたアルドラだったが、竜人玉なるアイテムが見つからなかったのである。
配下に探させても名前は耳にするが実物を誰も見た事のない幻のアイテム。
余りにも見つからなかった為、主であるアレスに何となく探してもらえるように頼んでみた。すると、
「え?そのアイテムなら何個か持ってるよ。あげるあげる」
と簡単に入手出来てしまったのだ。
そんなこんなでアルドラはアイテムによる存在進化を果たすのだが、竜人玉を使用してもなれるのは形は人間だが、肌や顔は竜である竜人種。
アルドラが目指すのは竜神種だったのだ。
しかしそんな事ともいざ知らずアルドラは嬉々として竜人玉を使用する。
そして生まれたのが今現在の人型のアルドラである。
ここで疑問が生じる。何故、竜人玉を使用したアルドラが竜人種ではなく、竜神種になったか。ということであるが、これはアレスの策略だった。
竜人玉を用いてもなれるのは竜人種だとアレスはカード収集中に知っていたのである。なのでアルドラのカードを最終進化させた際に手に入ったアイテム。竜神玉を代わりに持たせたのだ。
最終進化させてもアルドラのカードの絵柄は白紙のまま。アルドラが進化するのを待つばかり。
カードの絵柄は相手の状況に合わせて変化する。なのでこちらから誘導出来ないものかと考えたのである。
この悪だくみが結果的に功を奏しアルドラは完全な人型へと存在進化を果たす。
当然、【竜王化】というスキルで本来のドラゴン形態にも戻ることが可能だ。まあその姿は氷河竜とは似ても似つかない凶悪な姿ではあるが・・・。
アルドラは普段は細く閉じられた瞳を大きく見開く。すると爬虫類独特の縦長の瞳孔が特徴の眼が進軍を開始した煉獄龍の軍勢を捉える。
「かつての同族を殺やめるのは少々気が引けますが、致し方ありませんね」
そう言うと右手をさっと振るう動作をするアルドラ。
するとアルドラの遥か上空に出現する巨大な氷の礫。それは時間と共に数を増し、煉獄龍と同数の数だけ出来あがる。
「落ちなさい」
小さく呟くと氷の礫は弾丸となって煉獄龍へと降り注ぐ。高速で飛来する氷の礫は次々に煉獄龍達の翼を打ち抜き、打ち抜かれた穴から氷が瞬く間に翼を覆うとその重さにより地上へと落下する煉獄龍達。
氷の束縛系スキル【氷の弾丸】の効果、攻撃が対象に命中することをトリガーに発動し、対象の負傷個所から次々と氷が生み出され対象の行動を制限するのだ。
「待ってました!」
落下してくる煉獄龍を見て歓喜の声を上げ疾走するアーク。
ある程度他の四人よりも先行した位置に陣取ると土煙を上げながら急停止し頭上へと視線を移す。
上段に交差して構えた腕を振り下ろす動作をするアーク。
するとアークの体を赤黒く燃え盛る炎が包み込む。アークの固有スキル【地獄の業火】。その効果によってアークの身体能力が極限にまで強化され、放つ攻撃に炎属性が付加される。
「私が味わった絶望を味あわせてあげる」
身をかがめ、跳躍するアーク。強化された身体能力により通常のジャンプでは到達出来ない高度まで到達すると落下中の煉獄龍を手当たり次第に殴りつける。一体につき一撃。
だがそれで十分だった。
何故なら攻撃を受けた煉獄龍は炎を纏った拳に触れた途端に灰と化すのだから。
レベル上限までもう少しといった所まで成長を見せる煉獄龍達を一撃で葬ることのできるアーク。驚くべきことはそれがただ単に身体能力を強化されただけの通常攻撃だという所だろう。
アーク。正式な名をアンデッド・ジャンヌ・ダルク。齢19歳にして磔の上に火刑に処され、その短い人生を終えた少女。木製の十字架に磔にされ、全身を炎で焼かれながらこの世の生きとし生ける存在と神を呪って死んだ少女は、遺灰がセーヌ川へ流された後、人知れず魔の者として肉体を再構築し蘇ったのだ。
人々への憎しみを忘れぬよう、全身に地獄の業火を身に纏い、敵と定めた者を手当たり次第に灰にするかつての聖人・・・。
ソレは人に仇なす人外の魔物。
だが、アレスとの出会いを気にその歪んだ性格が生前の性格へと戻りつつある。無論、元の惑星へと戻ってしまえば記憶は失われる。筈なのだが、記憶は失われても人格は元には戻らず、元の惑星でも人を殺やめることはなくなっていた。
アークとは生前の名を嫌ったアンデット・ジャンヌにアレスが付けた名で、Jeanne d'Arcのダルクを崩しArcと呼んでいるのである。
アークは地面へと着地すると未だ距離のある煉獄龍の群れに向かって構えるを取る。
全身を覆っていた業火が腕に集中していく。
「殴るのって疲れるわね、こっちでどう!」
高速で腕を前に突き出すアーク。動作の度に空中へ纏っていた業火が撃ちあがり、煉獄龍へと着弾する。
超高温の熱による痛みを感じる間もなく灰と化す煉獄龍達はある意味幸運かもしれない。
無尽蔵に打ち出される業火が大小様々な煉獄龍をあらかた焼き尽くすとアークはアレス達の元へと後退する。
「どうどう?私の攻撃?なんか威力上がって無い・・・?」
褒めて褒めてと言わんばかりに頭を突き出してくるアークに、アレスはよしよしと頭を撫でてやる。すると満足そうに頬を染めるとカオスの横に居るジャンヌの方にチラリと視線を向けるとドヤ顔を向けてくる。
「なっ!」
当然、アレスの位置からは死角となってドヤ顔中のアークの顔は見れない。中々に強かな少女である。
ジャンヌはムスッとした様子でアークのドヤ顔を見るとジト眼で見つめている。
アレスはアークの頭を撫でながらぼんやりと違うことを考えていた。
(確かにアークの言うとおり威力が上がってる。てか上がり過ぎ、一瞬で灰になるとか・・・)
アルドラの拘束系スキルもそうだ。以前はあんなに素早く、そして高威力と束縛性が無かった気がする。
そう考えるアレスだったが、それは当然といえた。
アレスが鏑木に申し立てた事。それは召喚系統のスキルの全習得とスキルレベルマックスである。
これによりアレスは召喚系統スキルをフルコンプリートした訳だが、お陰で召喚した従者のステータスや使用スキルも飛躍的に上昇しており、通常太刀打ちできないような厄災指定のモンスターである煉獄龍を瞬殺出来る程の能力を有しているのだ。
アレス自身まさかここまで能力が上がるとは予想していなかった為、かなり面喰っていた。
しかし流石に数が多い、アルドラとアークの連携によりその数は数百から数十へと減ったが、散っていく仲間を気にもせずこちらへ向かってくる煉獄龍達に違和感を拭えないアレスだった。
(昔ではグウェンダルっていう凄腕の冒険者にビビって逃げたらしいけど、絶対アーク達のが脅威だろうに何故逃げ出さない?)
残る数十の煉獄龍もアルドラの攻撃で全てが地に落ちたのを確認する。
アレスはアークの頭をポンポンと軽く叩くと残りも倒してきてくれと目線でお願いする。
名残惜しそうにアレスの元を去ったアークは再び地獄の業火を身に纏うと横一線に右手を振るう。
すると遥か地平の彼方まで届くのではないかという巨大な三日月型の赤黒い炎の刃が生まれ、地に寝そべっている煉獄龍達を瞬く間に灰にする。
最初の戦闘開始から5分も掛らずこの五人。実質は二人だが・・・、数百に及ぶ煉獄龍を殲滅してしまったのだった。
「なあ、カオスさ」
「_____はっ!何!?」
その光景を唖然と見ていたカオスがアレスの声かけによって我に返る。
アレスは疑問に感じたことをドラゴンの意思を読み取れる能力を持つと言うカオスに疑問をぶつけてみることにした。
「変なこと聞くけど、あの煉獄龍達から意思って感じられた?」
我に返ったカオスはふと真剣な表情で思い出す。鎧の取れた今、呼吸するのと同じくらい自然にドラゴン達の意識は感じ取れるはずだった。
だが戦闘開始から・・・いや、あの軍勢が現れた時から感じるはずの煉獄龍からの思考は感じ取れなかったのである。前に佇む何故か人型のアルドラを視る。視線を集中すれば表面上考えている事が何となくわかった。つまり能力自体は消えてはいない。
では何故、煉獄龍の思考が読めないのか。まるで感情が、いや魂が入っていないようだ。体だけが無意識に動いていた。そんな風に感じたカオスはアレスに思ったことを正直に伝えた。
すると何か考えだすアレス。
(バグによる過去の再現。その際、果たして人格等のデータも再現されるのか?カオスの話を聞く限りあれはただの抜け殻だったのだろう。いや、倒した後に考えても・・・な)
と自己完結し、討伐に協力してくれた皆に労いの言葉をかけようと皆の方へと振り返った際、一同が信じられないものを見た様子でアレスの後ろを凝視している。
「ん___?」
アレスが疑問を浮かべながら振り向くとそこには、先程出現した歪みが再度現れ、亀裂が再び広がり中から先程と同じ位の煉獄龍が出現し終えた光景だった。
「リポップだと・・・」
「スライムじゃないんだからそんな簡単に復活するんじゃねえよ」と内心毒づくアレスだったが、現れてしまったものはしょうがない。対処するしかないのだ。
(おい、アキラ!なんかリポップしてるぞ!?どうすりゃいいんだ?)
小声で鏑木に焦った様子で意見を求める。
『一回きりじゃない。とはね。あの歪み・・・あれを断ち切る必要があるみたいだね』
計測されたデータを元に鏑木はアレスへと指示を飛ばす。
歪みの中心にはウィルスによって変質したデータがむき出しになっている。ウィルスは仮想世界で自己防衛機能が変質し自我を確立しつつある。
そう結論つけた鏑木は歪みの中にいる存在をあぶり出す必要性を感じていた。
いくら周りのドラゴンを倒そうとも大本を断たなければ何度でもドラゴンは蘇るだろう。
ウィルスは変質したデータに潜んでいる。ならば変質したデータに肉体を与え物理的に両断する。
それが鏑木の考えだった。だがしかしNPCであるジャンヌ、アーク、アルドラには運営側である鏑木から何かを与えることは出来ない。無論、アレスを通して間接的に支援することは可能だ。だがそれは微々たるものだ。世界に、データに影響を与えられるもの程ではない。
アレス自身に変質したデータに肉体を与えさせ、なお且つ倒すという名目の”修正”を施させなければならない。
だが、ここで問題なのはそのような出来事を行うことの出来る住人がエターナルプラネット内に存在していいはずがない。ということである。
運営側でもない人間がサバイバルサイド以外で活動をしている。この事実とウイルスが拡散した事実は隠し通さなければならない。
召喚術自体は他の惑星で使用するNPCもいるため左程問題にはならない。
が、アレスという存在が超越者にすることは容認出来ない。
何故なら、アレスはサバイバルサイドでの冒険中、【お嬢様】と呼ばれるほどの認知がある存在だ。そのような存在がライフサイドにいること事態イレギュラーである。
無論、弱いままなら他人の空似だろうとそこまで気に留める者もいないかもしれない。しかし既に先程、見せた召喚術に加え、超人的な能力を見せてしまえば、人々の心に刻みつけることになるだろう。
ライフサイドにログインしNPCと同化し煉獄龍襲来を肌で感じている現実世界の人数は時間を追うごとに増している。
そんな中でチート全開!という訳にはいかないのである。
『仕方ないな』
どうすれば一番穏便に事を進められるか考えていた鏑木は小さく息を吐くと一つのファイルを開く。
中には今は使用されていないプログラムが秘密裏に保管されている。
その中から一つのプログラムを呼び出し目の前のボードにドラッグする。
あまり時間はかけられない。今回のウイルス対策用に組み上げていたワクチンをプログラムに配列しなおす。
数分の後、組み上がった新たなプログラムを早速アレスへとアップロードする。
「仕方ないな」と鏑木のぼやきが聞こえてから向こうからの返事が無くなった事に冷や汗が止まらないアレス。
「と、とりあえずもっかい倒してみよう・・・か?」
そんな事を言ってくるアレスに対しジャンヌが当然のように疑問を投げかけてくる。
「それは構いませんが・・・。それよりマスターの魔力量は大丈夫なのですか?前回私を呼び出した時は私だけでも数分が限度だったはずです。しかし今は私の他にも呼び出せるようになっている。以前より魔力量が上がった事は分かりますが、まだ持つのですか?」
「えっ?ああ、大丈夫大丈夫。今なら維持魔力量より回復魔力量のが多いくらいだし・・・」
スキルレベルの上昇と共に召喚コストや維持コストが今までとは比べ物にならないほど減少しているアレスは今なら他にも大勢の者を召喚可能である。しかし鏑木から釘を刺され、召喚する者の人数を制限していたのだ。
「そうですか、信じることにします。ではアルドラさん?」
「ええ、出てくるならばいくらでも殲滅してあげましょう」
「歯ごたえ無かったのよね、腕が鳴るわ!」
「嗚呼、本当にこんなのが私の未来なのでしょうか・・・」
「何よアンタ信じてないの?」
闘志を漲らせるアークに頭を抱えるジャンヌ。
そんな様子を見ながら「時間は稼げた!」と内心ガッツポーズをするアレス。
アルドラとアークが前に先行して行くのを見届けていると不意に頭に鏑木の声が響いてきた。
『お待たせ久世君』
(おい!突然反応しなくなったから心配したぞ!)
『ごめんごめん。対策が完成したよ』
(さすがアキラだな)
『じゃあ早速だけど久世君。死んでくれるかな?』
「はっ?」
言われてすぐ、アレスの意識はブラックアウトした。
カオスは突然の出来ごとに思考が、判断が追いつかなかった。
未だアルドラとアークは目の前で戦っている。だから気がつかないのだろう。隣にいたジャンヌは顔面蒼白になり地に膝をついている。
小さく声を発したアレスの体がぐらりと揺れたかと思うと地面に崩れ落ちたのだ
揺さぶっても頬を叩いても起きる様子は無い。口元に耳を近付けても息もしていない。
「そんな、マスター!マスター!」
ジャンヌが胸に耳を当てる。だが、普段聞こえてくるはずの鼓動が聞こえてこない。
そんなハズは無い!ジャンヌは自身が持ちえるだけの回復スキルを使用する。
だが、肉体は元からHPは全快である。回復スキルをいくら使用しても意味は無い。根底にある魂、いや精神が抜け落ちてしまったのだ。
強力無比な回復スキルを不発とはいえ連発したジャンヌはすぐさま魔力(MP)が尽きてしまう。
「っ!マス、ター・・・」
大粒の涙を浮かべ顔をグシャグシャにしながらアレスの胸に顔を押しつけるジャンヌ。
その様子を見て”その意味”を知り、膝から崩れ落ちるカオス。
だが、
カオス達は知らない。召喚スキルは発動者が死んだ場合解除されてしまうことを。
カオス達は知らない。アレス。いや、久世の精神から今も魔力(MP)を供給されていることを。
カオス達は知らない。今まさに久世の新たな肉体が誕生しようとしていることを。
カオスとジャンヌが空気・・・。きっともうすぐ一章は終わる・・・はず




