狂乱×覚醒③
『!?』
ふらふらと棒立ちの巨大骸骨に向かって突進し心臓に一突きで決着。
そう思っていたレナードだったが、それは巨大骸骨の目の前に立ちはだかったもう一体の骸骨によって止められていた。
その骸骨は右手に日本刀のような武器を持ち、左手に小太刀のような武器を持った骸骨剣士で、レナードの一撃を左手の小太刀で受け止めていた。
その後、後ろの巨大骸骨に何事か告げると巨大骸骨はよろよろと後退していった。
それを逃がすまいと追いかけようとするレナードだったが、骸骨剣士が右手の刀で牽制してきた為、行き先を阻まれてしまった。
『そうか。お前が頭だったのだな・・・』
最初に接近してきた巨大骸骨は先兵としてただ派遣されてきただけ。
そして先兵による偵察が終わり、巨大骸骨の生命が危ぶまれた為、大将自ら出て来た。
そう思う事にしたレナードは骸骨剣士に防がれた刺突していた手を引っ込め、再度、鉤爪を使って強襲する。しかし骸骨剣士は左手に持つ小太刀を使い、ことごとくレナードの攻撃を弾き飛ばしてくる。
そして弾かれた時に出来る隙をついて右手の刀でレナードの鎧に攻撃をヒットさせてくる。
(クッ!やりにくい!)
現在のレナードの攻撃方法は自身の肉体を使用した肉弾戦主体の攻撃である。元々レナードの使用出来る魔法スキルは初級回復魔法だけであるし、攻撃スキルに至っては魔剣や呪いの防具の固有スキルを除けば実は持っていなかったのである。
そんなレナードが魔剣であるソウルイーターを取り込んだ状態変化・・・魔人化と記すが、この状態は魔剣の力を身体に上乗せし、使用者の正常な思考能力と引き換えにステータスが驚異的に上昇させる・・・というものである。
この状態が進むにつれ新たなスキルがアンロックしていくのだが、今現在のレナードの浸食状態では身体強化に留まっていた。
身体強化で己の肉体のみで戦っているレナードと刀という武器を持ち、戦っている骸骨剣士では相性が悪かった。
(こんなところでやられている訳にはいかんのだ!ここにいる全てのモンスターを駆逐する為にも!)
『ウオォオオオオオオオオ!』
「!?」
レナードの鉤爪による攻撃を小太刀で弾き、刀でヘルムを叩き切ろうとしている骸骨剣士の前でソレはおこった。
鉤爪を小太刀を絡め弾き飛ばされ刀が頭に迫る寸前、レナードが雄たけびを上げると背中の剣で出来た翼が動き、レナードの体を後方へと導く。
数メートル後方へと水平移動したレナード。そこに骸骨剣士の放った刀による一撃が空を切る。
『ハァアアアアアアアアア!!』
再びレナードが咆哮を上げる。すると背中にあった一対の禍々しい長剣が分離、カッターナイフのように複数に分断された刃はそれぞれはワイヤーのようなもので連結されており、ソレはまるで地を這う蛇の如く空中を這い骸骨剣士へと襲い掛ったのだ。
「ハァ!」
骸骨剣士は迫りくる二つの蛇剣をその小太刀のみで迎撃するとレナードを視認しようと前方を見る。
「!?」
既に前方に迫っていたレナードの姿が視界いっぱいに広がり、右こぶしを握りしめたレナードの一撃が骸骨剣士の顔へと吸い込まれる。
だが寸前に骸骨剣士は咄嗟に右手の刀の柄頭(柄の先端の位置にある金属製の部品)を滑り込ませていたため、レナードの一撃は柄頭に命中し骸骨剣士は大きく吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた骸骨剣士は空中でなんとか態勢を捻ると地面に刀を突き刺し岩で出来たタイルを削りながら後退する。
数M後退した所でようやくその動き止まり、骸骨剣士は頭を振ると前方を見据える。
骸骨剣士の見上げた先には、蛇剣と化した剣がレナードの背中へと完全に戻り同じく骸骨剣士を見つめていた。
(悪・・あがきを・・・)
思考の半分を既に鎧に奪われたレナードは敵対する骸骨剣士を睨みつける。
先程使用した剣の翼を動かす、剣を分断させ連結刃として使用するといったこれらの行為は全て鎧の浸食具合の進行を意味している。
(意識が遠のいていく・・・しかし完全に意識を奪われる前にコイツだけでも!)
浸食を受けながらも目の前に居る敵を自分の意思で倒す。そう心に決め骸骨剣士に向かって行く。
一方で骸骨剣士も左半身を前に刀を右肩に乗せ、小太刀を前に突きだし戦闘継続の意思を示す。
レナードが剣の翼を再び展開させると地を蹴り骸骨剣士へと肉迫する。
そして剣を分断させ再度連結刃として展開させ計4方向からの攻撃を与える。
骸骨剣士というと前へと突きだした小太刀で連結刃の2連撃を人間業とは思えない速度で迎撃し、残る両腕による鉤爪による攻撃を素早く刀を逆手に持ち鍔に近い刀の背を滑らせ難なく受け流す。
受け流し後、踊るように回転した骸骨剣士は態勢を低くしレナードに足払いをかける。
(ええい!)
連結刃を出している時は翼による移動が不可能な為、足払いを受け入れるレナード。態勢を崩したレナードの鎧にある開眼された瞳に向かって雷を纏った刀による突きが加えられる。
すると鎧からピシッという音が聞こえた。ガゼルによる度重なる攻撃によってダメージが蓄積されていたのも合わさり鎧の瞳にヒビが入ったのだ。
「レナードさん!聞こえるか!」
『モンスターごときと話をするいわれは無い!』
骸骨剣士によって鎧の一部が壊されてからモンスターの声が鮮明に聞こえるようになったレナードだったが、モンスターのたわ言など聞く耳持たなかった。
それが例え、数日間共にした仲間の声と同じ声であっても・・・。




