北風を背に
まだまだ寒い季節の中で、なんとなく書いてみました。
びゅうっと冷たい風が顔面に直撃して、私は思わず顔をしかめた。冬が嫌いになったのはいつからだったか。私は師走の生まれだが、昔はもっと胸がすうっとして、わくわくとした季節だったはずなのに、今はそれほど心躍ることもなく……
私は無意識に口笛を吹いた。ふと電信柱を見上げても、当然だが誰もいない。「北風小僧の寒太郎」の歌を頭の中で流しながら、私は向かい風を歩いた。
「北風小僧」と言うけれど、あの子はきっと子どもの頃にしか見えないような存在なのだろうなと、今振り返ってみて感じる。私には終ぞ彼が見えなかったが。
果たして彼は永遠の子どもなのだろうか。それとも、ちゃんと大人になるのだろうか。
大人になるというのは、なんとも残酷なことではないか。でもそれでは、永遠に子どものままというのも、充分残酷なことのように感じられるが。
また風が吹いてきて、私の呼吸は浅くなった。別に呼吸困難とまではいかないのだけれど、顔に強い風が当たると息が苦しくなる気がする。おまけに冷たいものだから、余計に胸が切なくなった。
人間、呼吸ができなくなったら終わりだ。向かい風に我慢できなくなって、私はくるりと後ろを向くと、そのまま後ろ向きに歩き始めた。端から見れば完全な変人だが、私はちゃんと意味があってやっているのだ。
商店街は殺風景で、私の記憶の中にあるかつてのにぎわいはない。昔は十二月にもなれば、もっと「クリスマス! クリスマス!」と全体が騒いでいたような気がするのだけれど……まあ、今はもう一月だから……でもやっぱり殺風景なのだな。昔は何でもきらきらとして見えたのに、時が経つというのは本当に残酷なことだ。
最近はよくそんなことばかり考えるようになったから、「残酷」という言葉がゲシュタルト崩壊するんじゃなかろうか。
唇をとがらせて、たまにひゅーと音を出しながら、私は北風を背に歩き続けた。
文字のゲシュタルト崩壊:同じ漢字を長時間見ていると、その漢字のパーツがバラバラに見えて、何という文字であったのかわからなくなる現象。
※同人誌『うさぎの短編集』にも収録されています。
詳細は活動報告を読んでください。




