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◇第三話

朝、閉じた窓の隙間から聞こえる、小鳥のさえずりで心地よく目覚める。

龍太は布団から降りて、大きく背伸びをした。窓を開けて部屋の空気を入れ換える。空は雲がほとんどなく、風も穏やかだった。

「いい天気だなぁ」

そよ風が吹くと、その風に流されるように、草が波のように揺れた。

「リョータさーん、朝ごはん出来ましたよー」

「今行くー」

龍太は窓を閉めて扉を開き、階段で一階へ降りていく。龍太の耳に話し声や食器の音が聞こえた。






龍太が一階に降りると、既に子供たちが食事の準備をしていた。木製の細長いテーブルに簡素な椅子がおいてあり、ルーシュやミリアがよそった皿を子供たちが次々と運んでいく。すると、皿を運び終えて手が空いた子がこちらを向くと、一瞬、何かをこらえていたが、たまらずといった感じに笑いだした。突然笑い出したので、龍太には何が何だかわからなかった。最初の子につられるようにして、振り向いた子供たちにも笑われ、仕舞にはルーシュもが笑っていた。

「え?何?」

何に笑っているのか分からない龍太は困惑し始める。

「寝癖、凄いことになってますよ」

「え?……あ、ホントだ」

頭を触ってみると、てっぺん付近の髪が逆立ちしていた。

「ふふ。顔もちゃんと洗ってきて下さいね」

「はいよ」

リーシュにうながされて、龍太はリビングの奥にある洗面所へ向かった。

蛇口をひねって水を出す。それをすくって、ばしゃっ、と顔にかけると、水のひんやりとした冷たさが顔全体に伝わった。続いて頭から水をかぶる。

「ぷはっ」

顔をあげて、タオルで頭と顔をゴシゴシと念入りに拭く。鏡で見てみると、寝癖はもう無くなっていた。

タオルを元の位置に置き、洗面所を出ると、食事の準備はすでに終わっていて、全員が各々の席に座り始めていた。龍太は昨日座った席と同じところに座った。

「それでは、いただきます」

ミリアが手を合わせる。それにならって、子供たちも手を合わせた。

「いただきます」

龍太も手を合わせて、食事に手を伸ばした。






食事のあとは特にすることも無かったので、龍太は部屋に一旦戻った。閉めた窓をもう一度開けて、風を通す。窓の向こうには、広大な森とその奥にそびえたつ山、そして昇った太陽があった。

この建物には、東向きの部屋と西向きの部屋があり、龍太が使っている部屋は東向きなので、夕日は見れないが、朝日や森を見ることができる。

本来なら海も見えるはずなのだが、それは多くの山々にによって妨げられていた。


ラディンには、ラディンの首都であり国土の二割を占める、ファーレンティルを中心とした主要都市が集まった地域がある。その外側にある、都市の東端に位置する、トレンタという街のさらに東、あたり一面草原で、都市名も地名も無い、いわゆる田舎にあるのがこの教会である。昔はこの周辺にも何十件と家があったのだが、都心部の発展により、人々はそこへ移り住み、このあたりの家はほとんど取り壊されてしまった。そして、この教会も取り壊される予定だったが、ミリアが買い取ったのでそのままになったのだ、ということを昨日の食事の後、龍太はルーシュから聞いていた。

そして、教会のさらに東にあるのが森である。そこには、魔物が棲みついており、人々は『魔の森』と呼んでいる。

とわいえ、魔物は森の奥のほうにしか生息していないため、森の真ん中あたりまでは人々が森に入ったりする事もある。その魔の森の奥の山々を越えた先には、再び森があり、そのさらに向こうに広大な海がある。しかし、その海を見るどころか、山の峠を越えたものはいまだ一人もいない。海を目指して、挑んだ者もいたが、結局誰一人として帰って来なかった。

だが、龍太は空から落ちてくるときに、その広大な海をしっかりと見ていた。


窓枠にもたれ掛かって、植物のように暖かい日光を浴びていたところで、部屋の扉がコンコンとノックされた。

「リョータさん、居ますか?」

「居るよー」


扉を開けると、そこには昨日より少し質素で、動きやすそうな服を着たルーシュがいた。

「その、いま暇ですか?」

「暇だよ。ていうか、やること無いから常に暇だよ」

「そうですか。それじゃあ、農作業手伝ってくれませんか?」

「農作業?」

「はい」

おそらく、彼女が着ている服は農作業用に使っているのだろう。所々に土で汚れた跡があった。

「分かった、手伝うよ」

暇潰しにはいいかもしれない、などと思いながら龍太はルーシュの後ろをついていって、外に出た。そして玄関を出て左、建物の南側に畑はあった。

「けっこうでかいな」

畑はそれなりに大きかった。龍太が今まで見たことのある農地の大きさに比べたら、非常に小さいが、それでも耕すとなると半日は絶対に必要なくらい大きかった。

「ここで収穫したものはこの辺りに住んでるみんなで分け合ってるんです。」

「そーなんだ。あれ、他に人はいないの?」

「今週は私たちが当番なんです。毎週交代で育ててるんですよ。」

「へぇ」

畑には多種多様な作物が多く植えられていた。

「すげぇな」

「えぇ。ただ……」

「ただ?」

「今年はあんまり育ちがよくないんです」

「何で?」

「その、最近全然雨が降らなくて、このままだとほとんどの作物が枯れてしまうんです。実際、もう幾つかは枯れちゃってますし………」

「そっか………」

確かに、土は薄い茶色をしていた。どうみても水が不足しており、所々に亀裂がはいるくらい土は乾燥していた。二人とも黙り込んでしまい、雰囲気が暗くなりそうだったが、龍太はこの問題を解決する方法を思い出した。

「水魔法は?」

水魔法。すなわち水の魔法である。これを使えば土に水を与える事が出来る。しかし、龍太の顔が一気に明るくなったが、ルーシュはまだ浮かない顔だった。

「その方法を試そうと思ったんですけど、水魔法を使える人が誰もいなくて………」

「そっか……………………じゃなくて、えぇと、俺使えるよ」

「え?………あっ」

ルーシュは、完全にその可能性を忘れてましたと言わんばかりの驚きを見せた。

「すいません、てっきり使えないんだとばっかり思ってて………」

「いや、まぁ確かに使えるとは言ってなかったけど………。じゃあ、今言っとくけど、俺全部使えるから、たぶん」

「ぜ、全部って五つ全部ですか!?」

「うん、たぶん」

あくまでも『たぶん』である。実際、龍太はまだ一回も魔法を使った事が無い。例の神様にもらった記憶が正しければ使えるが、正しくなければ使えないのである。

(昨日使えるか確かめとけばよかったな………)

今さらながら後悔する龍太であった。

また、ルーシュの反応から、五つ全部の種類の魔法が使える人は少ないという事も教わるのであった。

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