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◇第一話

龍太がやって来た世界には、ラディンという国がある。

レナイドン大陸という大陸の五分の一はこの国の領土で、大陸の東側に位置している。

ラディンの北西、レナイドン大陸の北側にはユースイル、ユースイルの南側はゼミリオ、ユースイルとゼミリオの西側にはジョルジェという国があり、この4ヶ国でレナイドン大陸は成り立っている。

ジョルジェ、ゼミリオ、ラディン、そしてユースイルの順で領土が大きくなっていて、また、国軍力も同じ順列である。

この4ヶ国のうち、ゼミリオを除く3ヶ国は三階級制という制度をとっており、王族、貴族、一般民の三つに分けられる。王族が国のトップに立ち、政治を行い、貴族や一般民を統治し、貴族は国軍の統治をする。一般民は国軍兵になったり、作物を作ったりして税を納める。そんな制度である。

一方ゼミリオは、等民制という制度をとっており、三階級制と違って王族や一般民というような階級はなく、国民全員が平等な立場で生活している。

国王や家臣は国民の中から選ばれ、その人々が政治を行い、国を統治する。

なので、ゼミリオの国王は三階級制の国王に比べて国民の支持が強いので、国の治安は3ヶ国よりも比較的良くなっている。






そんな国々が集まるレナイドン大陸のラディンの国で、とある森に向かって歩いている一人の少女がいた。服は質素なシャツと上着、それに長いスカートをきていて、風が吹くたび、それがたなびく。腕には木製の籠を提げていて、サンダルで荒れた砂道をすたすたと歩いている。彼女は森の魔物がいないようなところに生えている薬草を採りにいこうとしていた。その薬草はヒイの草と言われている。ヒイの草の葉っぱをお湯などに入れると、葉の成分か溶け、それを飲むと、風邪などの症状をだんだんと和らげてくれる効果があると言われている。森に向かって砂道を進んでいると、向こう側から一人の女性が歩いてきた。

「ネルさんこんにちは」

「あら、ルーシュちゃんじゃない。これから森に?」

「はい。ジルが風邪を引いてしまったので、ヒイの草を採りに行こうとおもって」

ルーシュが行く方向には森以外に行くようなところは何も無く、また森のなかにもヒイの草以外を採りに行く以外、何か面白いものがあるわけもないので、このあたりをよく知っている人はにそれを判断する事ができる。

「ジル君が?見かけによらないわねぇ」

「いつもはしゃいでばっかりですからね」

簡単な会話をしてネルさんは森とは反対方向に歩いていく。ルーシュは森のほうに歩いていき、雑草で生い茂った草むらの中へ踏み込んでいった。






めまぐるしい視界の変化と共に、耳元で空気を割くような音が鳴り響く。

龍太はいまだに落下し続けていた。

落ちはじめてからまだ三十秒も経っていないが、混乱はあまり無かった。あの神様女神様天使様によって突然落とされたことがその一因なのかもしれない。

(とにかく、翼を出そう)

落下を止めるべく、神様女神様天使様に言われたことを思い出す。

「肩甲骨から伸びるイメージ、肩甲骨から伸びるイメージ……」

龍太は呪文のように呟きながら肩甲骨から伸びる翼をイメージする。

すると、一瞬背中が(かゆ)くなり、直後に、バサッという音がした。視線を後ろに向けると龍太の身長と同じくらいの大きさの真っ白な翼が2枚生えていた。

「おぉ!」

思わず、驚きとに喜びがまじった感嘆の声が口から発せられた。

記憶の中にあった肩甲骨を動かすイメージで翼を羽ばたかせて、空中に浮いて止まる。

下を見下ろすと、大きな街がほとんどのぼりきった太陽に照らされていた。街のとなりには広い草原がひろがっている。

そのなかに小さな湖が真ん中にある森がポツンとあった。

(あそこに降りよう)

翼を見られたらまずいと思った龍太は森の中で翼をたたもうと考え、降下を始める。

まだ少ししか使ってないのに、翼は龍太の思いのままに動き、空を縦横無尽に飛び回ることが出来た。

翼を動かして、空の旅をしばらく楽しんでから、ゆっくり地上へと近づく。

耳にはバサッ、バサッと翼が羽ばたかく心地よい音が聴こえる。

ゆっくりと降下して、地面に足をつけてほっと一息ついた。森の真ん中に降りただけあって視界は青と緑ばかりだった。

あたりを見渡すと、木や草が生い茂り、そして一人の少女がこちらをみて固まっていた。

「「え?」」

龍太とその少女の声が重なった。






一瞬、目を疑った。

ルーシュがヒイの草を採っていたときに、バサッバサッ、と普通の鳥と比べて大きな羽音をたてて何かが近づいてくるので、最初は魔物かと思った。

しかし、こんなところに魔物がいるはずが無い。いたとしても、もっと森の奥のほうにいるはずである。だとすると他に何が可能性としてありえるか、考えようとしたが、ひとまず木に隠れるべきだという判断に至った。しかし、足が震えていうことをきかない。

恐怖に怯えながらも目は音のするほうに向き、その何かを捉えようとしていた。そして、羽音はさらに大きくなり、ついにその姿が現れ始める。

太陽と位置が重なって見えにくい。音をたてて降りてくる何かが地面に到達して、ようやくその姿を見る事が出来た。

空から舞い降りたそれは、背中に身長と同じくらいの大きさの翼を生やした青年で、まるで天使のように見えた。

「「え?」」

振り向いた天使らしき人とルーシュの声が重なる。しばらく両者は硬直状態から抜け出せずにいたが、咄嗟に天使らしき人は羽をたたんだ。どんどん折り畳まれていく羽は、羽毛を一つも残さず消えてしまった。

再び、沈黙が訪れる。先に声を発したのはルーシュだった。

「えぇと、こ、こんにちは……天使様?」

「……やっぱり見た?」

ルーシュは軽く頷き、肯定する。途端に彼は頭を抱え込んだ。

「ど、どうかしましたか?」

「俺、普通じゃないよね?」

一瞬で翼の事を指しているとわかった。再び頷く。

「その……………誰にも言わないでね」

ルーシュはもう一度頷いた。


書き終わって誤字脱字チェックしてると「文字数少ねぇ」って思います。


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