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第5話

「とりあえず、明日はこの依頼を受けるぞ」

「ルクス」

「……何だ?」


 システィナに依頼書を預けるとルクスは立ち上がり、書庫にしている部屋に移動しようとする。

 しかし、システィナは何かあるのかルクスの服をつかみ、彼を引き止めた。


「戦争になるかも知れないのにその材料を集める仕事を受けるなんてどう言うつもりですか?」

「どう言うつもりも何も金を稼がないといけないんだ。仕事を選んでいられるほど、お前は偉いのか?」

「そ、そう言うわけじゃないですけど」


 先ほど依頼内容からフォミル王家との戦争も考えられると聞かされているシスティナは戦争の準備とも言える依頼は受けたくないようで不満を口に出す。

 ルクスはその言葉にシスティナを睨みつけるとシスティナはその視線に威圧されたようで声を裏返した。


「現状で言えば戦争はあくまで可能性だ。それにせっかく依頼主に会う機会があるんだ。腹の中に見え隠れしているものが見える可能性だってある」

「何か企んでるんですか?」

「おかしな言い方をするな。あくまで情報収集だ」

「そうやって、私を騙してお金稼ぎしていませんか?」

「騙すと言うなら、1人で依頼の1つでもできるようになってから言え、現状で言えば、お前を騙して金を稼ぐ気なら、娼館にでも売り飛ばした方が速い」


 ルクスなりの情報収集の一環のようであるがシスティナはどこか信じられないようで疑いの視線を向けている。

 その言葉にルクスはまだシスティナに合格点をつけられないようで眉間にしわを寄せた。


「で、でも、きちんと報酬は受け取ってますよ」

「……俺がお前1人でもできると思った依頼をフォローしながらでな」

「う……」


 ダンからはギリギリ合格点を貰えた事もあるため、システィナは娼館と言う言葉はわからなかったものの1人前になったと認めて欲しいようだが、ルクスは表情を変える事なくシスティナの主張を斬り捨てる。


「それで、言いたい事は終わりか? 終わりなら、俺は行くぞ。お前は用もないならさっさと休め」

「は、はい。ルクスさんはまだ休まないんですか?」

「俺はまだやる事がある」


 反論できないシスティナに休むように言うと彼女を部屋に置いてルクスは書庫のドアを開けると本棚に並んでいる1冊の本に手を伸ばした。


「ルクス」

「……何だ?」

「お風呂、空きましたよ」


 ルクスが調べ物を始めてしばらくすると書庫のドアをシスティナがノックする。ルクスは邪魔されたくはない物の返事をするとシスティナはドアを開けて顔を覗かせる。彼女はお風呂に入っていたようであり、顔は赤く染まっており、髪はまだ濡れている。


「……まだ調べ物の途中だ」

「そうなんですか? 何を調べているんですか? ……読めません。これどこの言葉ですか?」

「……封印の地のデータをまとめているだけだ。わからないなら、見るだけ無駄だ」

「封印の地? それって何ですか?」


 ルクスの調べ物はキリが悪いようであり、調べ物を続けると言い、システィナはルクスの読んでいる本を覗き込む。

本は特殊な文字で書かれているため、システィナは何が書いているかはわからない。隣で首を傾げる彼女の姿にルクスは邪魔だと言いたげにシスティナを追い払うように手を振るが、ルクスが口を滑らせた一言にシスティナは食いついた。


「お前には関係ない。知ったところで扱えそうにないからな」

「扱えそうに? そうだ。ルクス、あなたはどうして遺失魔法とまで言われている精霊魔法を使えるんですか? それに使えるのにどうして、依頼の時には使ってくれないんですか? ルクスの精霊魔法があれば簡単に達成できたんじゃないですか?」

「……教えて何になる?」

「えーと、だって、私とルクスはあの声に世界を救う使命を与えられてんです。私にだって知る権利があると思うんです。それに精霊魔法だって使えるかも知れないじゃないですか? 昔は多くの人間が精霊達の声を聞けたって言いますし」


 彼女の反応に失敗したと舌打ちをするルクス。システィナは彼の反応を見て、ルクスに助けて貰った日に見た精霊魔法の事だと気づき、疑問に思っていた事を次々とルクスにぶつけるも、ルクスはシスティナに精霊魔法を使えるとは思っていないため、無駄な事はしたくないようではあるが、システィナは聞かないと納得がいかないと頬を膨らませた。


「時間の無駄だ。だいたい、少しでも才能があるなら、宝玉に触れた時に何かしらの反応が有ったはずだ。それにこいつの姿も見えないだろ」

「こいつ? この子猫、どこから出てきたんですか?」

「……何?」


 ルクスはシスティナに改めて無駄だと言い、机を指差す。システィナはルクスの指差した場所を見ると机の上には子猫がお行儀よく座っている。

しかし、先ほどまで机の上に子猫の姿はなかったため、システィナは首を傾げるもその子猫を抱きかかえる。その様子にルクスには予想外の事が起きているようで眉間にしわが寄った。


「ルクス、どうかしたんですか?」

「……どうして、こいつの姿が見えるようになってる?」

「どうして? 意味がわかりませんけど、それより、こんなに可愛い子猫をどこに隠してたんですか? ずるいです」


 子猫はシスティナに見えてはいけない存在のようで、ルクスは眉間にしわを寄せたまま、システィナに聞く。その言葉にシスティナは子猫が気に入ったのか、ルクスが子猫を隠していたと決めつけ、不満げな声を上げた


「最初から隠してなんかいない。こいつはシスティナ、お前がここに来た日から、ずっと、この家にいる」

「そんなわけありませんよ。私、子猫を見てないですもん。ルクス、それより、この子の名前はなんて言うんですか?」

「名前? そんなものは決まってない」

「どうしてですか? ダメですよ。一緒に住んでるんです。家族なんですから」


 ルクスは子猫がこの家に来た日の事を話すが、システィナはすでにその事よりは子猫に興味が完全に移っており、決まっていない子猫の名前を付けると決めたようで子猫を見て顔を緩ませている。


「決めたかったら、勝手に決めろ。俺は風呂に入ってくる」

「はい。何が良いかな? かわいい名前が良いよね」


 ルクスはシスティナの相手をするのが面倒になったようで風呂に入ると言って書庫を出て行くが、システィナが気にする事はない。


「この間は、宝玉が反応しなかったはずなのに、いったい、どう言う事だ? ……と言っても考えられる答えは1つしかないか?」


 浴槽につかりながらルクスはシスティナに子猫が見えるようになった理由を考えるが、答えは1つしかないようで小さくため息を吐いた。


「……精霊から与えられた剣か? 魔力を帯びている事は確かだな。今まで見えなかった精霊が見えるようになるんだからな。装備している間に魔力がシスティナにも移ったと考えるのが妥当だな」

「ルクス、大変です。子猫が消えちゃいました!?」

「……お前は何がやりたいんだ?」

「あ、あの。お時間よろしいでしょうか?」

「部屋に戻ってろ」


 子猫はルクスの契約している精霊のようであり、精霊の剣の力だと結論を出すと他にも考える事もあるのか頭を切り替えるために頭までお湯の中に1度、つかり、頭を切り替えようとした時、勢いよくシスティナが浴室のドアを開け。すぐにドアを閉めた。

 ルクスは彼女の様子にため息を吐くとドアがわずかに開き、声を震わせたシスティナが返事をする。


「……それで、お前は何がやりたいんだ?」

「す、すいません」


 2度も思考時間を取られたせいか、濡れた頭をタオルで拭きながら不機嫌そうな表情をしているルクス。システィナは自分が悪い事をした事は理解しており、小さくなりながら謝る。


「あ、あの。ルクス、何をするんですか?」

「こいつがどうかしたか?」

「あれ?」


 ルクスは鞘に収まったシスティナの剣を手に取ると彼女に剣を投げて渡す。システィナはルクスの突然の行為に驚きの声をあげるも何とか剣を受け取った時、システィナの目は先ほど消えた子猫の姿をとらえた。


「こいつは精霊だ。あの洞窟であっただろ」

「精霊? この間の洞窟の? ど、どう言う事ですか!? ひょ、ひょっとして、この子猫があの大きな獣ですか!?」

「あぁ。契約の途中だからな。俺の魔力とこいつの精霊力を同化させる必要があるから、慣れるまで呼び出しているだけだ」

「慣れるまでって言いますけど、それなら、どうして、私は見えたり、見えなかったりするんですか?」


 システィナはルクスの口から出た子猫が虎のような獣と同一だと言う事が信じられないようで少し距離を取るが、今の姿は誰が見ても小さな子猫でしかなく、子猫を抱きかかえ、疑問を口にする。


「その剣の影響だ。才能はなくてもその剣が精霊を見る事ができるように力を貸してくれているんだろう。効果範囲は距離か、力が充填されて一定量で見えるかはまだわからないけどな」

「この剣の力? す、凄い剣なんですね」

「少なくとも、そこら辺で売っているものとは違うからな。精霊の力が込められているのは確かだ」

「あ、あの。ルクスの剣にはどんな力があるんですか?」

「知らん。それより、やる事がないなら、さっさと寝ろ。俺は調べ物で忙しいんだ。これ以上、無駄な時間を取らせるな」


 ルクスはまだ剣には秘めた力があるのではないかと思っているようだがそれを知る由はないため、書庫に向かって歩き出す。


「調べ物? 私も何か手伝えたら良いんだけど……今度、図書館であの本の言葉を調べてみようかな? どう思う? 取りあえず、今日は休みましょう。疲れましたし」


 システィナはルクスに世話になっている事は理解しているが、何も返せていないため、少し申し訳なく思い始めているのか、子猫に語りかけるが子猫からの反応はない。

 これ以上は何もできないため、子猫を抱えてベッドまで歩く。


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