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 私はベンチでのモクとの会話後、書店に向かうことにした(彼と二回目に会ったあの本屋である)。彼の《君は本を読んだ方がいい人間だ》という言葉の真意を必死になって考えてはいたが、何も分からなかった。しかし、彼が私をただ惑わすためにそのようなことを言ったのではないということは感じた(読者のみなさんは本当にそうなのか疑問に思うかもしれないが、私は全く彼を疑わなかった)。そのため、私の足は自然と本屋に向かっていたのである。

 店内をぶらぶらと眺めていると、一冊の本の題名に目が止まった。その本の題名をどこかで見た記憶がある(既視感ではなく、ちゃんとした記憶だ)。そして、高校の時の国語の教科書に、この本の一部が抜粋されて載っていたことを思い出した(去年のことであったが、高校生というと何だかそれは遠い過去のようにその時思った)。教科書で読んだ時はあまり面白いとは思わなかったが、他に興味のある本もなかったのでそれをレジまで持って行き、精算した。

 その本にブックカバーがつけられている間、私はもう一度モクとの会話を思い出していた。《君は本を読んだ方がいい》、その言葉がどうしても頭に引っ掛かる(喉に魚の小骨が引っ掛かった時よりも気持ち悪かった)。

 アパートには午後の三時くらいに戻り、着替えると私はさっそく本を読み始めた。自分で本を買って読むのはもう久しく前のことだな、と始めは感慨深く読んでいた(そもそもあまり読み切った試しがなかった。所詮はただの物語に過ぎないと高を(くく)ってもいた)。だがそんなことを考えながら読んでいたのも(つか)の間、気付いたら私の意識は本の中に取り込まれていた。そしてその意識がようやく解放されたのは午前一時で、なんと日付が一日進んでいたのである(その日を境に私の読書に対する考えが変わる)。

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