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四月を迎え、私は学部の二年生になった。とはいっても二年生までは自動的に進めるので(それ以降は単位数が足りないと進級できない)、あまり実感が湧かなかった(ただ入学したての、去年の自分の心にあった夢や希望といった淡い幻想はなくなってはいたが)。
二年生になるとレポートが増え、いささか忙しくなった。バイトを辞めようかとも考えたか、それも何だかめんどくさかったのでそのまま続けた。
大学の講義を受けて、空いている時間はレポート、読書、バイトをするという生活が三カ月近く続く(とりわけ大きな出来事は起こらなかった)。やがて、あっという間に二度目の夏休みを迎えた。
テストが終わり、ちょうど休みが始まった日にモクと再開した。
日が暮れ始めたころ、普段来ることはない場所を私は歩いていた(確か古本屋を歩きまわっていた帰りである)。そこは所狭しと古びた商店が並んでいる。そのほとんどがまだ現役だったが、人通りはまばらになり始めていた。
そんな時、向かい側から来るモクを発見した。彼は見たことのある服装で(リュックももちろん背負って)歩いてくる。私達はほぼ同時にお互いの存在に気づき、立ち止まって簡単な挨拶を交わした(始めの頃に比べるとかなりの進歩のようにみなさん感じるであろう)。その後、私は“これから飲みに行かないか”と彼を誘った(読んだ本について彼と話をしたいとずっと思っていたからだ)。暑苦しい言葉で言えば、語り合いたかった(近くの友人で本を読む者はおらず、ずっと悶々としていた)。だが、彼が誰かに誘われてそれについて行くようなイメージはまったく持てなかった(とりあえず言ってみただけであった)。
しかし幸運にも彼は承諾する(その時の彼の口元はわずかに緩んでいたように見えた)。私達は近くの安そうな居酒屋に入って行った。