正しい平和の紡ぎ方 ~Ambiguous world seem to Beautiful~
今日は。
まぁ、取り敢えず最後まで読んで見て下さい。
ザイルは、世界の滅亡を願った。
カイルは、彼の望みを否定出来なかった。
…人は何かの犠牲なしでは、何も得ることは出来ないのだから。
「あぁ、もし俺にもっと力があれば…世界なんて、すぐに滅びるのに」
ザイルは腕を広げた。
まるで羽ばたくような格好。
彼の世界が何処までも、広がって行く。
「そんなこと、しなくても良いかもね」
先程から黙っていたカイルは、やっと、一言発した。
「何でだよ?」
「未来なんて、決まりきってるからさ。俺達が知らないだけで」
彼は微笑む。
世界は糸だ。
複雑に絡まり行く運命を手繰り寄せ、上手く解いて、紡いで行く。
運命の、乱れた糸は幾重にも──絡まり綻び、人を惑わす。
ほつれを直し、ぴんと張って正し。
そうやって、運命の糸は紡がれて行く。
「それは…そうかもしれないが」
「例えば、全能の神のみが、この世界の未来を知っている…とか?」
「──成る程、そうかもしれないな」
ザイルは頷く。
「そして、案外…その"神"って言うのは、俺達のことだったり」
「俺達が? まさか世界が俺達を中心に回ってる、なんて言わないよな?」
「うーん…そんな、難しいことは言わないよ。ただ、」
「ただ?」先を促す。
「…ただ、自分達で作った平和を、俺も壊してみたくなっただけだ。まるで神の気まぐれのように、な」
「驚いた! 勇者様はさしずめ、自分が神になった気でいるのだろう?」
共感してくれるのか、と言いたげに、ザイルは大仰に言った。
「…そうかも、しれないな」
彼は苦笑した。
「じゃあ…世界、滅ぼしてみるか?」
その問いに、カイルはしばらく考えてから答えた。
「多分…その必要は、無いよ」
「必要、無い?」彼は問う。「一体、何を根拠に?」
「平和って言うのは、熟した木の実だ。色んなことを乗り越えて、若い実は成熟する。だが、"熟した"ってことは、もうすぐ腐り始めるってことで」
「…こんな腐りかけた世界なら、ほっといても、いずれ無くなる…」
「そう言うこと」カイルは言った。「だから、俺達が直接手を下さなくても良いのさ」
「一理あるけど…何だかなぁ」
ザイルは物足りなげに言った。
「"世界を、直接滅ぼして見たかった?"」
「そうだな」
「激しく同意。でも、」
その後は、何も聞こえない。
平和にも、そこには穏やかな風が流れていた。
美しい世界。
それは、不鮮明である証拠。
憧れて、近付き過ぎると絶望する。
"平和"の実態に。
「お前の予言は、当たったな」
「予言って…大袈裟な」
二人の会話が聞こえる。
かつて"平和"の実態に、絶望した二人の声が。
「文明も、何もない。綺麗じゃないか」
「人や魔物の死骸が、わんさかあるがな」
そこは、廃墟。
世界は廃墟と化していた。
「それも含めて、美しいんじゃないか。ありのままでさ」
「醜い、争いが?」
カイルは眉間にしわを寄せた。
「どうだかねぇ…」ザイルは笑う。「俺って、悪趣味?」
「激しく同意。俺も悪趣味だからな」
そう言って、二人は争いの果てを見送った。
世界の果て、空虚なる美しさを見るために。
「俺達って、こんな世界を望んでたのかな?」
「さぁねぇ…ただ、こんな世界なら、恋愛イベントは起きないな」
カイルは苦笑いを浮かべる。
「…激しく同意」
ザイルも苦笑。
例の魔物の女を、思い出しているのだろうか。
「だから、俺の台詞取るなって」
二人は海岸に立った。
地平線から、水平線を眺める。
世界の果て。
いずれ二人が死ねば、何もなくなる。
二人を風が包んだ。
時を越えた、風が。
かつて、彼が発した声を乗せて。
「激しく同意。でも、…こんな世界を滅ぼしたって、達成感も何も残らないけどね」
さて、このシリーズも此処でお終いです。
長いような、短いような...。
作者本人は、楽しく書かさせて戴きました。
読んで下さった皆様、本当に、本当にありがとうございました!!




