表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

二年生? あれ? 一年生?

 先輩:

 やぁやぁ、ただいまさね。

 こんばんは~。


 ハリネズミ:

 こんばんは。


 sloth:

 おかえり~!


 ハリネズミ:

 さて、全員揃った事だし……。

 僕の話を聞いて欲しいんだ。

 sloth。今日は何月何日だい?


 sloth:

 は?

 なんだ?

 俺がカレンダーの読み方を間違っている、なんて話でもする気か?

 三月二十九日だろ?


 ハリネズミ:

 そう。

 今日は、三月二十九日なんだ。

 この時期になると、僕は考えてしまう。

 怖いよね。


 sloth:

 なんでだよ?


 ハリネズミ:

 わからないのかい?

 良く考えてみるんだ。


 sloth:

 またかよ。

 もったいぶらずに、さっさと話せ!


 ハリネズミ:

 いいかい? 

 これは、一九九四年にウソ・ツッキー博士が発表した論文の話だよ。

 この論文は、物理法則や時間軸を無視した現象、つまりは奇跡と呼ばれる現象の考察から始まるんだ。

 何故、そのような現象が起こりえるのか? とね。

 そして、シンクロシニティ、つまりは『偶然の一致』の考察に続くんだ。

 そんなにも、偶然が起こるのは何故か? とね。

 最後に、複数の作者、あるいは単数の作者、などの可能性を示し、こう結論付けているんだ。

 我々の住む世界は、誰かに作られた世界ではないのだろうか? とね。

 これで、僕が恐怖している理由がわかっただろう?


 sloth:

 わかんね~よ!

 俺にわかったのは『俺たちって、誰かの創作物語?』って事だけだ。


 ハリネズミ:

 それで良いよ。

 君にもわかるように、更に説明しようか。

 僕たちは高校生だ。

 そして、学生の創作物語は、大きく二つに分類される。

 一つは非現実的な設定が濃い作品。もう一つは、現実にもありそうな設定の作品。

 更に、別の見方でも、二つに分けられるんだ。

 一つは、日曜夕方のアニメのような、ある期間内をループする話だ。

 僕たちに言い換えると、永遠の高校一年生だね。

 もう一つは、スポーツマンガに多いかな。

 現実世界と連動するかは別として、物語の中でも時間が進むタイプだよ。

 あぁ、恐ろしい。


 sloth:

 だから、もったいぶるな。

 お前は、いつもいつも前置きが長い!

 何が言いたいんだよ。


 ハリネズミ:

 まだ、わからないのかい?

 僕たちは、高校二年生になれるのだろうか?

 気付かないうちに、『入学式を楽しみにする新入生』になってしまうのではないか?

 と思うと怖く無いかい?

 そう考えると、毎日行っている『寝る』なんて行為が、恐ろしく思ってしまう。

 いや、寝る必要すらないのかもしれない。

 ある瞬間に、僕の記憶と認識が、書き換えられるのかもしれない。

 ね? 年度の切り替えである、この時期は、特に怪しいと思うんだ。


 sloth:

 お前は、本当に面倒臭い奴だな。

 そんな事ばかり考えているから、『萌え』が理解できないんだ。

 もっと、気楽に構えないと、人生楽しく無いぞ!

 それよりさ、『お茶碗』って不思議じゃない?

 ご飯を食べる目的で使われる食器なのに、なんで『お茶』って言葉が使われるんだろうな?

 

 ハリネズミ:

 また、君は直ぐに脱線する。

 いいかい?

 良く考えてみるんだ。

 卒業アルバムを見ないで、小学生のクラスメイトを全員思い出せるかい?

 あるいは、去年の……。そうだな、十月二十五日に、自分が何をしていたかを、直ぐには思い出せないだろう?

 僕が『卒業アルバムを見る』と言う行動を起こした時点で、僕の過去が作られているのかもしれない。

 僕が過去を思い出そうとする事で、初めて、僕の過去が作られているかもしれない。

 そもそもだ。

 僕が、『高校一年生をループする』なんて考えて、君に説明する行為自体が、作者の思惑なのかもしれない。

 読者、視聴者、プレイヤー……。

 どういった形式かはわからないけど、とにかく観察者に対し、物語の説明をしている可能性がある。

『僕たちの物語は、ずっと高校一年生だよ』ってね。

 そう思うと、ウソ・ツッキー博士の論文は、間違っていないと思うんだ。

 更に、ループするだけならいい。

 僕自身が、その現象を体感できないのなら、大した恐怖は無いさ。

 でも、何かの手違いで、僕だけループしている事に気が付いてしまったら?

 その恐怖は、計り知れないと思わないかい?


 sloth:

 そうだな。

 それよりさ、『湯のみ』には『お茶』って言葉を使わないのが、もっと不思議だ。

 

 先輩:

 やぁ、ただいま~。

 何の話をしているんだい?


 ハリネズミ:

 おかえりなさい。


 sloth:

 え?

 先輩、さっき挨拶しなかったけ?

 今、ハリネズミの『この世界は創作物語説かもね』って講義が終わった所だよ。


 先輩:

 sloth君は、変な子だね~。

 私は、今帰ってきたとこさね。


 ハリネズミ:

 全くだ。

 君は寝ぼけているんじゃないのか?

 君が「ゲームする」と言ったから、僕たちは何も会話していなかったじゃないか?

 

 sloth:

 はぁ?

 ログをたどってみろよ。

 お前の長ったらしい講釈で、一杯だから。

 

 ハリネズミ:

 だから、何も会話していなかったよ。

 君は、可笑しい人だね。


 先輩:

 まぁまぁ、喧嘩はおよしさ。

 それより、もう直ぐ、二人は入学式だね~。

 高校の制服は、買ったかい?


 ハリネズミ:

 えぇ。

 買いましたよ!

 

 sloth:

 いや、俺たちはもう直ぐ二年生になるはずだって……。入学式は去年やったはず……。

 ちょっと、まって。

 席はずす。


 ハリネズミ:

 いってらっしゃい。


 先輩:

 了解さね!


 sloth:

 ただいま。

 親に聞いてきても、入学式がなんちゃらって……。

 ドッキリだよな?

 俺を騙そうとしているんだろ?

 そう言ってくれよ!


 ハリネズミ:

 さっきから、君は何の話をしているんだい?

 

 先輩:

 sloth君。

 落ち着きなよ。

 人の記憶って言うのは曖昧さね。

 夢と現実の区別を、混合してしまう時ってあるんだね~。

 きっと君は、ゲームをしながら、ウトウトと居眠りしてしたのかも知れないよ?


 sloth:

 夢……。

 そういうことか!

 夢落ちかよ!

 それじゃ、俺は起きるために寝るわ。

 バイバイ。夢の中の住人たち。


 ハリネズミ:

 良くわからないけど、君は疲れているのかもしれない。

 そういう時は、寝るのが良いよ。

 おやすみなさい。


 先輩:

 お大事に。

 おやすみさね!


 sloth:

 止めろよ。

 リアルに挨拶返すなよ。

 夢の中の住人な癖に。

 おやすみなさい……。

 

 slothさんがログアウトしました。


 先輩:

 いや~。ビックリするほど成功したね~。

 

 ハリネズミ:

 はい。ドッキリの協力ありがとうございました。

 こうしないと……。

『五月蝿いな。バカだな。面倒臭い奴だな。それよりさ、スーパーマーケットを略してスーパーって変じゃない? マーケットの方が意味として大事なのに』

 なんて脱線する、slothの態度は見えていましたからね。

 しかし、まだ問題提示しかしてなかったのに……。

 僕の話は終わったと言い出すなんて、slothは腹立たしい奴です。


 先輩:

 まぁまぁ、続きは私が聞くさね!

 それにしても、良く騙されてくれたね~。

 

 ハリネズミ: 

 slothの交友関係は狭いですからね。

 両親、友達、その他。

 口裏合わせは完璧です。

 

 先輩:

 でも、新聞とかテレビを見られたらアウトさね。

 

 ハリネズミ:

 それも大丈夫です。

 あいつは、新聞なんか見ない男ですから。テレビだってアニメばかり見る男ですよ。

 この時間は、slothの興味ありそうなアニメも終わっていますしね。

 何より、アイツは臆病な男ですからね。冷静でいられる訳がありません。

 

 先輩:

 ハリちゃんは意地悪だね~。


 ハリネズミ:

 先輩もですよ。

 随分とノリノリでしたね。


 先輩:

 sloth君は、可愛い反応するからね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ