ん!
ハリネズミ:
だからね。僕はこう思うのさ。
インターネットが、人の心に及ぼした影響は計り知れないとね。
sloth:
そうだな。
ところで、俺は思ったんだ。
『佐々木ん』、つまりは『ササキン』な。
ササキンってさ、強くてカッコイイけど悪者のイメージがしない?
『田中ん』は物理的に硬いイメージがするよな。あ、でも正義の味方タナカン! って感じもするかも。
今度は、『大田ん』、つまりはオオタンってさ。
可愛いイメージがするだろう?
人の苗字に『ん』をつけると、イメージが変わるのって不思議じゃない?
ハリネズミ:
いつもいつも、急に話が変わるよね。
君は本当に人の話を聞いていたのだろうか?
まぁ、いいさ。
それは簡単な事だよ。
slothが持っている語尾二文字のイメージに左右されているに過ぎないね。
昔から言うだろう?
終わりよければ全てよし、有終完美、なんてね。
人の頭が物事を認識するのに、『最後』と言うのは重要なウェイトを示しているんだ。
さぁ、解決した事だし、さっきの話を続けようか?
sloth:
ふ~ん。
そんなものかな~?
駄目だ。
俺には納得できない。
ハリネズミ:
仕方が無いな。
そうだね。例えようか?
ササキンの例だと、『キン』を『菌』とslothは無意識化で認識しているんだろう。
だから、君は悪者のようなイメージを抱いた。
それと同時に、『キン』は戦闘中の擬音としても使われているからね。『カキン!』みたいにね。
そこから強そうと言うイメージを抱いた。
もう一度言うよ。
slothの持っているイメージに過ぎないんだよ。
逆に言えば、聞く人によって違うイメージを連想させるんだ。
オオタンの例なんか顕著だよね。
~タンが可愛いなんてオタクの発想さ。
僕もオタクだから可愛いと思った。
だけどね。同時に、美味しそうってイメージを持ったよ。
牛タンのイメージからきているんだろうね。
sloth:
危ね~!
納得しかける所だったぞ。
いいか、ハリネズミよ。
お前の理論は間違っている。
お前の話が合っているとするならば、オオタさんは、『お』『オタ』クってイメージになるはずだろ?
今日の今まで、俺はそんなことを思ったこと無いね。
俺が思いだせる限り、知り合いに三人の大田さんがいるのにだ。
こちらが一方的に知っている、太田さんを含めると、数え切れない数になるにも関らずだ。
俺は一度も太田さんを『お』オタクと思って事が無い!
更に言うと、『ご大田』、つまりは『ゴオオタ』って人の名前のようなイメージを受ける。
語尾二文字は変わっていなのに、イメージが変わったぞ!
これはどういうことなんだよ?
ハリネズミ:
なるほど。
人の心はいつだって矛盾だらけさ。
『善は急げ』と言いつつ、『急がば回れと言う』
こう例えても良いね。
『一石二鳥』と言いつつ、『二兎を追うもの一兎を得ず』なんてね。
君にも経験があるはずだ。
「ラッキー! 一石二鳥だ」と思ったことも、「欲張るんじゃなかった」と思ったこともね。
だからこそ、人の心は面白いんだろうね。
sloth:
答えになって無いぞ!
ゴオオタ君はどう説明する?
ハリネズミ:
しかし、矛盾って言葉は凄いと思わないかい?
矛と盾。武具を二つ並べるだけで、辻褄が合わないって意味になるんだから。
sloth:
だから!
ゴオオタ君は?
二時間後。
ハリネズミ:
矛盾と言う言葉の起源までさかのぼろうか。
あれは古代中国の話でね。
絶対に貫ける矛。
絶対に貫かれない盾。
この二つを売っている商人の話なんだ。
お客さんの「じゃあ、その矛でその盾を貫いたらどうなる?」と言う言葉に、商人は困ってしまうんだね。
これについては色々な人が様々な見解を言っているね。
矛も盾も両者とも壊れる、なんて言うのが多いんじゃないかな。
あ、大事なのは、その見解ではなくてだね、この言葉、『矛盾』と言う言葉が人々の心を惹きつけていることが大事だと思うんだ。
sloth:
もう、矛盾講義は良い。
認めろよ。
ゴオオタ君はわかりませんでしたってな。
ハリネズミ:
はい。ゴメンなさい。
sloth:
素直で宜しい!
ハリネズミ:
人の苗字と「ん」の話だって、君のどうしようもない思い付きから始まり、君は何の見解も発表していない。
ちょっと不満を覚えるのだけど、僕が話を誤魔化そうとしたのは、隠し様の無い事実だ。
素直に認めるよ。
sloth:
おぉ!
気にするな!
それよりさ、お前もオタクならわかるだろ?
矛盾の話を否定しようと頑張った事あるよな?
オタクは捻くれているもんな!
ハリネズミ:
本当に、君は変な事を言うね。
オタクなんて、趣味を示す言葉に、人の性格を関連付ける事はナンセンスなんだよ。
現に僕は素直だ。
でも、slothは捻くれている。
ほら、もう矛盾が発生しているだろう?
ただ、君の言う事はわかるよ。
僕も矛盾の話については、何度も考えた事がある。
sloth:
謝った直後に嫌味かよ!
まぁ、いいや。
俺はこうして、矛盾の話を解決したね。
盾は絶対に貫かれない盾だ。これは間違いない。
しかし、矛は絶対に貫ける矛だ。これも間違いない。
ただ、矛に関しては言葉が足りなかったんだ。
どんな物質も貫ける矛なんじゃない。
全ての物体を無視して、人体だけを傷付ける、魔法の矛だったのさ!
ほらな?
ハリネズミ:
なるほど。
オタクの君らしい発想だ。
だけど、それは僕は受け入れられない。
魔法の矛の発想が悪いんじゃない。
ファンタジー的な発想が悪いんだ。
古代中国の話って言っただろ。
そんな発想では、この素晴らしいテーマ『矛盾』を考えてくれた、か韓非さんに失礼だ。
僕はこう結論付けたね。
聞きたい?
sloth:
割とどうでも良いかも。
お前の聞き方が嫌らしい!
でも、どうせ言うんだろ?
もったいぶらずに、早く言えよ。
ハリネズミ:
いいかい?
絶対に貫けない盾は、物質として存在していなかったんだ。
そう。
人の心の中にあるんだよ。
人の信念は、暴力に屈しないのさ。
この身が滅びようともね!
sloth:
今日は疲れたから、寝るわ。
おやすみ~。
slothさんがログアウトしました。
ハリネズミ:
スルーかよ!
先輩:
やぁ、こんばんは。
何をスルーされたんだい?
ハリネズミ:
こんばんは。
先輩、やめて下さい!
見ないで下さい。
時間が経つと、僕の心の中に『恥辱』が急速に埋め立てられていくんです。
不覚でした……。
先輩:
そうかい?
わかった。
どんな可愛いことが書いてあっても、私の心の中だけで満足するよ。
ハリネズミ:
結局ログをたどるのですね。
僕の心は今満たされました。恥辱によって……。
先輩:
ゴメンよ~。
でも、止められないのさ。
もう一つ謝らなくてはいけないね。
何が書いてあっても、口を出さないつもりだったんだけど……。
ハリちゃんの説には一つ問題があるよ。
商人は『心の盾』は売れないのさ!
ハリネズミ:
僕の心は容量オーバーで決壊しました。
先輩:
あはは!
ついでだから、約束を全部破ってしまうよ。
ハリちゃんはやっぱり可愛いね!