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バレンタイン

 ハリネズミさんがログインしました。

 

 ハリネズミ:

 こんばんは


 sloth:

 こんばんは


 ハリネズミ >> sloth:

 ところで、今日はバレンタインだね。君はチョコを貰う事ができたかい?


 sloth >> ハリネズミ:

 なんで、インスタントメッセージで送って来るんだよ?

 それに、質問する前に、お前の回答をよこすのが普通だろ?


 ハリネズミ >> sloth:

 最初の質問の答えは、先輩が常時パソコンを起動しログインしているからだね。

 そして、最後の質問の答えは、もらっていないだよ。

 まぁ、僕は工業高校だしね。女子の絶対数が少ないんだ。


 sloth >> ハリネズミ:

 それは言い訳だろ。

 我ら北海道民を熱くさせた、数年前の甲子園を思い出せ。

 マー君は学校以外の女子からも、数百単位でチョコを貰っていと思うね。


 ハリネズミ >> sloth:

 君の例えは、いつだっておかしい。

 例にするなら、せめて工業高校出身の人物にするべきだ。

 それに、いまや道民だけでない。日本全国にその名を轟かす彼を出してくるのは愚かとしか言いようが無いね。

 いいかい?

 君の例えは、『美味しい卵焼きの作り方』の話をしているのに、『一流パティシエの細工菓子』を例えに出しているようなものなんだよ。


 sloth >> ハリネズミ:

 解ったよ。ウルサイ奴だな。

 そうだ。俺は1つ貰ったぞ。


 ハリネズミ >> sloth:

 そうだったね。君は1つのチョコを貰う可能性は高かった。

 僕とした事が、そんな事にも気づかなかったなんて……。


 sloth >> ハリネズミ:

 引っかかる言い方だな。

 言っておくが、親からじゃないぞ。


 ハリネズミ >> sloth:

 解っているよ。彼女からだろ。

 あぁ、腹立たしい事この上ない。

 でも、所詮は0と1。

 先ほど、君が例に出したマー君は、今年も千単位で貰うだろうね。

 そう考えると、0と1なんて誤差のレベルだと思わないかい?


 sloth >> ハリネズミ:

 その理屈は、お前らしくも無いな。

 1と0の差は確かに少ない。

 だけど、有と無の差は果てしなく大きいんだよ!


 ハリネズミ >> sloth:

 そうだ。僕らしくも無いね。

 いかんんせん、動揺しているのかもしれない。

 僕が貰っていないのに、まさか君が貰っているなんて……。


 sloth >> ハリネズミ:

 はははは!

 今日は、お前にけなされてもなんとも思わないね。

 俺の勝利だ!

 まぁ、落ち込むな。

 俺らには先輩がいるじゃないか!


 ハリネズミ >> sloth:

 そうだ。僕がわざわざインスタントメッセージを送った理由。

 それは、先輩の前で自然に振舞って欲しいからなんだ。

 思春期の僕らが、チョコにがめついのは、みっともないだろう?


 sloth >> ハリネズミ:

 珍しく気があったな。

 解った。自然に振舞うよ。


 2時間後。


 先輩:

 やぁやぁ。ただいまさね!


 ハリネズミ:

 おかえり


 sloth:

 お仕事お疲れさま。


 先輩:

 いや~。今日はバレンタインだったんだね。

 役得かね~。

 私は、女なのに一杯貰ってしまったよ。

 君らはどうだったい?


 sloth:

 そうか。今日はバレンタインだったんだ。

 普通の月曜日だと思っていたな~。


 ハリネズミ:

 そうだね。

 僕たちも16才だ。

 大昔から続く、お菓子屋さんの戦略に踊らされるのを良しとしないのですよ。

 思春期って言うのは、大人の情報操作に不満を覚える年頃でもあるのです。

 そもそも、バレンタインを商売にするなんて如何わしいと思います。

 国の権力に逆らい沢山の夫婦を送り出したとされている、ウァレンティヌスさんへの冒涜です。

 

 先輩:

 そうか~。残念だね。

 せっかく2人にチョコを用意したのに……。


 先輩:

 あ、とりあえずお風呂と晩御飯を済ましてくるさね。

 席をはずよ~。


 ハリネズミ:

 ゴメンなさい。強がりました。


 sloth:

 捨てるぐらいなら、俺たちが処分するよ?


 sloth:

 返事が無い。ただの屍のようだ。


 ハリネズミ:

 せっかくのチャンスに、どうして君は強がるんだい?


 sloth:

 ウルサイな。お前の提案だろ?

 それに、先輩がチョコを渡しにくくなったのは、お前の長ったらしい講釈のせいだと思うね。


 ハリネズミ:

 思春期とは、なんて不便な生き物なんだろう……。


 sloth:

 俺は、一つ貰ったからいいもんね。

 や~い。バカあほマヌケ!


 ハリネズミ:

 よしてくれ。僕は君に付き合えないほど落ち込んでいるんだ。


 sloth:

 自業自得だな!


 ハリネズミ:

 おや。客人が来たみたいだ。

 少し失礼するよ。


 sloth:

 おぉ。いってらっしゃい。


 ハリネズミ:

 やぁ。ただいま。


 sloth:

 おかえり。


 ハリネズミ:

 突然なんだが、好きなおかずを最初に食べる人と最後に食べる人。

 どちらが、普遍的な価値観なのだろうか?


 sloth:

 なんだよ。本当に突然だな。

 俺が世間一般の価値観なんて、調べる術も無いのは承知だろ?

 とりあえず、俺は好きなおかずは最後に食べるけど。


 ハリネズミ:

 そうだよね。

 僕もそうだ。


 sloth:

 なんだよ。訳が解らない奴だな。

 あ、俺の所にも客人だ。

 少し待っててくれ。


 ハリネズミ:

 あぁ。了解したよ。


 sloth:

 ただいま、っと。

 先輩だった。

 チョコゲットだぜ!


 ハリネズミ:

 僕も先ほど貰ったんだ。

 だけど、やっぱり楽しみは後に残すよね。

 先輩にとっての僕の価値は、君みたいな重度のオタクよりも低いのではないだろうか?


 sloth:

 軽くカチンと来る事を平気で言う奴だな。

 まぁ、今日は勝者な俺が優しくしてあげよう。

 単純に考えてみろよ。

 先輩の家から見ると、お前の家の方が近い。

 それだけだよ。


 ハリネズミ:

 そうだよね。僕が君なんかに負けるはずが無いさ。

 どうも、今日は調子がおかしいな。


 sloth:

 ははは!

 哀れな負け犬よ。今日は、いくら吠えても許してやるよ。


 ハリネズミ:

 それにしても、先輩は意地悪が好きだね。


 sloth:

 本当に、今日のお前はおかしいな。

 そのセリフこそ、インスタントメッセージで話すべきだったと思うね。


 ハリネズミ:

 いやいや。悪い意味じゃないんだ。

 先輩のサプライズは、いつだって喜ばしい。

 そう思わないかい?

 今日だってそうだ。

 僕達ほどの幸せ者はいないと思うね。


 sloth:

 そうだな。

 先輩ほどの美人からチョコをもらえるなんて、俺たちは幸せものだ。

 俺のおっかない彼女のチョコなんて、俺以外の奴は欲しがらないだろうにな。


 ハリネズミ:

 ふふふ。

 失言だね~。それは失言なんだよ。

 今の発言を待っていたんだ。

 君の愛しい彼女に、写メールで送ったよ。

 ささやかな復讐を受け取りたまえ。


 sloth:

 お前! 

 何てことしたんだよ……。

 本当に怖いんだぞ……。


 ハリネズミ:

 それも、解っているよ。

 だからこそ意味があるんだ。

 でも、安心してくれないか。

 君たちの関係には何の影響も無いはずだ。

 ただ、ちょっとした雷が落ちるだけだよ。


 sloth:

 お前は何も解っちゃいない。

 確かに、俺たちの関係は揺るがない。強い信頼で結ばれているからな。

 だけど……。

 どうしよう。

 しばらく学校休もうかな。

 あぁ、明日が怖い……。


 ハリネズミ:

 いや。なんか、ゴメンよ……。

 まさか、君たちの力関係の差が、それほど大きいとは予想外だったんだ。


 sloth:

 もう良いよ……。

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