『うさぎとにわとり』【掌編・童話】
『うさぎとにわとり』作:山田文公社
小さなうさぎはいつも一人ぼっちでした。うさぎは小さな部屋に閉じこめられて、外には出してもらえません。小さなうさぎは決まった時間にご飯をもらえます。にんじんやキャベツなど色々な物を与えてもらえます。でもうさぎは一人ぼっちでした。仲間ではないけれど怖い存在はいました。鋭い爪とくちばしでいつも首を振って威嚇するように鳴いているのです。ご飯を食べているとときおり邪魔してくるので、うさぎは怖くて仕方ありません。ずいぶん後にそれが“にわとり”という名前だとうさぎは知ったのでした。
「にわとりなんて居なくなればいいのに……」
うさぎは怖くて邪魔なにわとりがいなくなれば良いと考えました。
小さなうさぎは最初はかわいがってもらえてました。子供達がかわるがわる抱いて撫でてくれたのに、今では冷たい水をかけられたり、ご飯が無かったりと、だれもうさぎに興味を持たなくなりました。うさぎは一人ぼっちでぐるぐる、ぐるぐると飛び回ります。そうするうちに飽きてしまいうさぎは自分の家に戻ります。
ちいさな家は自分一人がはいれる大きさで、そこにうさぎは一人で暮らしてます。うさぎは一人巣穴で眠るたびに夢をみるのでした。大きな草原に自分と同じ仲間が飛び跳ねる姿を見るのです。
うさぎは嬉しくなって巣穴を飛び出すと、緑の網状の壁が目の前で邪魔をしています。月明かりに照らされて遙か彼方に飛び跳ねる影がうさぎには見えました。
うさぎは思いました。この壁を越えれば自由に飛び跳ねられて、きっと仲間にも会える……と、そう信じて一生懸命に壁をひっかいて外に出ようと頑張りました。
すると、壁はなくなり隙間から出ることができました。うさぎは喜んで飛び跳ねまわりました。空には大きな月がでているのをうさぎはしばらく眺めたあと、先ほど仲間がはねていた場所へと向かっていくのでした。
でも、そこには仲間なんていませんでした。うさぎは一所懸命に探しました。でも、どこにも仲間はいませんでした。やはりうさぎは一人ぼっちだったのです。
うさぎは家に戻ろうとすると、小屋の近くに誰かいるのです。うさぎは息を潜めて様子をうかがいます。昼間はたくさん人がいるのはうさぎは知っていました。でも夜は誰もいないのに、今日は誰か居るのでした。
しばらくすると、にわとりの悲鳴が聞こえてきました。それはいつも威嚇するような声ではなく、苦しみ叫ぶ声でした。うさぎは怖くて目を閉じました。うさぎは震えて動けなくなりました。何度か悲鳴が聞こえた後辺りは静かになりました。うさぎはゆっくりと目を開けると小屋には誰もいなくなっていました。うさぎは跳びはねて小屋に近づき、恐る恐る覗くとにわとりはうつぶせて動かなくなっていました。
「ねぇ……おきてよ、ねぇおきてよ」
うさぎは何度も声をかけました。いつもなら怖くてそんな事はしないうさぎでしたが、無造作に開け放たれた扉から中に入り、うさぎは鼻先でにわとりをつついても、にわとりは目を覚ましませんでした。
翌日にわとりは片づけられました。小屋も頑丈な物に変えられ、前のように外が見えなくなりました。本当ににわとりは居なくなりました。そしてうさぎは本当に一人ぼっちになりました。
来る日も来る日もウサギは辺りをぐるぐると回りました。誰もいなくなった小屋の中を延々とまわり続けました。夜がくるとうさぎはお祈りします。
「もう二度居なくなれば良いなんて言いません、だから神様お願いですにわとりを小屋に戻してください」
うさぎは来る日も来る日もお祈りしました。すると……にわとりが帰って来たのでした。相変わらずご飯の邪魔はするし威嚇してくるけど、うさぎは嬉しくて跳び上がりました。そして何より嬉しかったのが仲間が三人も増えたのです。間違いなくそれはうさぎの仲間でした。
「ありがとう神様」
うさぎは良い事をしりました。たとえ嫌なにわとりでも、ひとりよりはるかに良いと、そして仲間がいることはとても良いのだと知ったのでした。
今日も小さいうさぎは、にわとりに脅かされながらご飯を食べて、仲間と追いかけっこして、お喋りしています。小さくて狭い所だけどうさぎはいつまでも幸せに暮らしたのでした。
お読み頂きありがとうございました。




