『【鑑定】しか使えないと追放された僕、実は「世界の仕様書」が読めたので最強の国を作ります』
「ルーク、お前はクビだ。我が『暁の剣』パーティから出て行け!」
冒険者ギルドの酒場。勇者アレンが、僕の顔に解雇通告書を叩きつけた。
隣では、聖女のミーアが蔑むような目を僕に向けている。
「アレン、どうしてですか? 僕はこれまで、魔物の弱点や宝箱の罠をすべて見抜いて、パーティに貢献してきたはずです」
「うるさい! お前のスキルはただの『鑑定』だろ! 戦闘では一歩も動かない寄生虫の分際で、偉そうに指図するな!」
ミーアも追い打ちをかける。
「そうよ、ルーク。次のダンジョンからは、もっと攻撃魔法が強い人を入れ替えるの。地味な鑑定士なんて、私たちの足手まといよ」
彼らは分かっていない。僕の『鑑定』は、普通の鑑定とは少し違う。
僕の目には、この世界のあらゆるモノの「仕様書」が見えているのだ。
「……分かりました。そこまで言うなら出て行きます」
僕は荷物をまとめ、静かに酒場を後にした。
明日挑むという『黒鉄の迷宮』の仕様書には、【推奨レベル80・即死トラップ有り】と書かれていたが、もう僕の知ったことではない。
◇
パーティを追い出された僕は、未開の未開拓地「最果ての森」へとやってきた。
ここなら静かに暮らせると思ったが、さっそく問題が発生した。
「グルルル……!」
目の前に現れたのは、凶暴な Aランク魔物『アースベア』。
普通の冒険者なら一溜りもないが、僕が『鑑定(仕様)』を発動すると、視界に青い文字が浮かび上がる。
『アースベア:HP 5000 / 属性:土』
『【バグ利用】:右足の付け根をデコピンすると、座標バグにより即死する』
「えい」
僕が近づき、アースベアの右足の付け根を指でツンと突いた。
――ドゴォォォン!!
次の瞬間、アースベアは物理法則を無視した速度で遥か彼方の空へと吹っ飛んでいき、星になった。
「本当に仕様書通りだ……」
続いて、目の前にある濁った泥水が溜まった池を鑑定する。
『汚水:飲めない』
『【書き換え】:成分の「泥」を「魔力」に変更可能』
僕が頭の中で数式を書き換えると、一瞬で池の水が黄金色に輝く『最高級エリクサー(万能薬)』へと変貌した。
「よし、これで生計を立てよう」
◇
それから3ヶ月後。
僕のいる最果ての森は、とんでもないことになっていた。
僕が仕様書をいじって作った「一晩で育つ超栄養トマト」や「触るだけで病気が治る温泉」を求めて、エルフの里やドワーフの王国、さらには魔王軍の幹部までが集まってきて、一大リゾート都市が爆誕してしまったのだ。
僕はいつの間にか、彼らから「開拓聖皇」として崇められていた。
そんなある日、僕の街の門前に、ボロボロになった男女が倒れ込んできた。
アレンとミーアだった。
「ル、ルーク……助けてくれ……!」
アレンは剣もボロボロ、ミーアは聖女の服が破け、見る影もない。
「アレン? どうしたんですか、その姿は」
「お前がいなくなった後、ダンジョンで罠にかかりまくって、装備も財産もすべて失ったんだ……! お前の『鑑定』がなければ、俺たちは何もできない! 頼む、頼むからパーティに戻ってくれ!」
「そうよルーク! 私があなたの妻になってあげてもいいわ! だからあのエリクサーの池を私たちに頂戴!」
二人は僕の足元にすがりつき、見苦しく泣き叫んだ。
僕は彼らを冷たく見下ろし、アレンの『仕様書』を確認した。
『アレン:元勇者』
『【現状】:すべての称号を失い、ただの村人 Aにダウングレード中』
「断ります。今の僕には、守るべき国民がいますから」
僕がパチンと指を鳴らすと、街の警備員であるドラゴンの群れが一斉に空から舞い降りてきた。
「ひっ、ひいいいいっ!?」
腰を抜かす二人を、ドラゴンたちが優しく掴んで、遥か遠くの初期の街へと強制転送していった。
その後、彼らが冒険者ライセンスを剥奪され、借金まみれの開拓奴隷になったという噂を聞いたが、僕には関係のない話だ。
「ルーク様! 今日も新しいお肉の仕様書が届きました!」
「よし、最高のすき焼きを作ろう!」
今日も僕は、世界の仕様をちょっぴり都合よく書き換えながら、仲間たちと最高に楽しいスローライフを送っている。




