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大佛殿

作者: 床擦れ
掲載日:2026/06/17

 礎石そせきが在り、柱が立ち、はりかり、屋根がおおい、壁が囲む。

 何が人の心に役立つか。何をもつて人の心を救えるというのか。

 まどき、柵がめぐり、天蓋てんがいれ、だんみ、戸をしつらえる。

 何が悪徳に勝てるというのか。何をもつて善の化身けしんであると言うのか。

 天王てんのうにらみをかせ、天女てんにょい、観音かんのんが立ち、仏画ぶつが幕幕まくまくほとけが座る。

 何が経典けいてんか。何をもつおしえであるというのか。

 かねひびき、太鼓たいこたれ、数珠じゅずこすられ、そうとなえ、信徒しんとならう。

 何が真摯しんしか。何をもつて己らが敬虔けいけんであるというのか。

 欺瞞欺瞞ぎまんぎまん傲奢傲奢ごうしゃごうしゃ

 欺瞞欺瞞ぎまんぎまん蒙昧蒙昧もうまいもうまい

 だから我は嫌いなのだ。大佛殿だいぶつでんという虚飾きょしょく権化ごんげが嫌いなのだ。

 佛法者ぶつぽうは唯戒律矣ただかいりつなり往々而おうおうにして不具象ぐしょうせず

 佛法者ぶつぽうは唯虚心矣ただきょしんなり往々而おうおうにして不具現ぐげんせず

 我は火をけねばなるまい。空虚くうきょほうむるのだ。

 私は火をけねばなるまい。色妄しきもうめつするのだ。

 ねん三日さんにち

 大佛殿だいぶつでん灰燼かいじんした。これで我は正しかったのだ。

 正しかったのだ。何故なぜにまた建てる。

 何故なぜにまた、礎石そせきうずめ、柱をし、はりわたし、屋根をき、壁を塗り、まどを組み、柵を連ね、天蓋てんがいけ、だんを組み、戸をめ、天王てんのう二丈にじょう天女てんにょ百数ひゃくすう観音かんのん二基にき仏画ぶつが十六じゅうろくへん如来にょらいいち衝鐘しょうしょう打鼓だこ数珠じゅず百八ひゃくはち念仏念仏ねんぶつねんぶつ

 何をしてものらは目覚めざめぬのか。

 老いて目が見えなくなっても、いつかは完膚まんぷきまでに燃やしてやらん。

 我の使命である。佛法ぶつぽう執着しゅうちゃくを嫌うのだ。

 佛法ぶつぽうの嫌う所はことごとくをたいららげるのが我が役目である。そうで無ければ正しくなぞられはしない。

 討つべし討つべし。

 妄執もうしゅうを討つべし。

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