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光の守護者は風を知る  作者: 美月つみき
風が消えた日
8/8

副官との密会

テントの外では、副官アメリアが会議が終わるのを待っていた。


「ロゼッタ様、ロベルト様、会議お疲れ様でした。いま部下たちが門を開ける準備をしています。終わり次第お声をかけますので、あちらの休憩所に座ってお待ちください。」


「ありがとう、アメリア。」


ロベルトはふくれっ面で休憩所の方に向かっていった。

言葉こそないが、片手をひらひら振っていたので、ありがとうと伝えているつもりなのだろう。

先ほどからの態度にご立腹なのだろう、ロゼッタの表情筋がぴくぴくしている。

とばっちりは勘弁願いたいので、見て見ぬふりをする。

だって怖いし。


「いえ、お礼には及びません。……あの、ロゼッタ様、レイを少しお借りしてもよろしいですか?」


「……へ?」 


 急に呼ばれた自分の名前にびっくりして、素っ頓狂な声が出てしまった。

 ……少し、恥ずかしい。

そもそもアメリアとは余り喋ったことがない。

寡黙で努力家の近寄りがたいお姉さんといったイメージだ。


「えぇ。いいですよ。……私は先にテントで待っていますから終わったら来なさい。」


「はい、師匠。」


「ロゼッタ様、感謝いたします。」


ロゼッタは魔女の名にふさわしい不敵な笑みを浮かべながら、ロベルトのいるベンチに向かっていった。

ロベルトに対して大匙一杯くらいの同情しながら、引き留めてくれたアメリアに感謝した。

アメリアはロゼッタがテントに向かったのを確認すると、人気が少ない広場の方に連れていかれた。

辺りは薄暗く、丁度死角になる位置だった。

不気味に感じ、いつでも逃げられるように構え、それを悟られないよう平常心と言い聞かせた。

「……えっと、アメリア副官、あの、僕になにか?」


「あぁ、警戒させてしまって申し訳ない。そういうつもりはないんだ。ただ、誰にも見られたくなくてな。……実は彼女からこれを渡してほしいと頼まれたんだ。」


困ったような表情のアメリアに敵対する意思は感じられない。

警戒してることもバレてしまったし、ひとまず解くことにする。

そして、 受け取ったものを見て、心臓は飛び跳ね、全身が硬直した。

それはフランからの手紙だったから。

大きな声が出そうになったがなんとか抑えつける。


「こ、これ……!」


「昨日の早朝に急に訪ねてきて、これを君に渡してほしいと頼まれたんだ。思えばあの時から様子がおかしかったのに、知らぬふりをしてしまった。……すまない」


「あ、謝らないでください!その時点ではフランがいなくなるだなんてわからないですし、仕方ないですよ。この手紙を渡してくれて、ありがとうございます」


「いや、礼はいい。立派な違反行為だからな。……ですので、隊長に報告するならしてください……ロゼッタ様」


「あら、いつから分かっていたのですか?」


「っ?!」

 

人はびっくりすると声が出ないとは本当だったんだと身を持って知った。

なんでこの人はここにいて当たり前のような表情で堂々とできるんだろう。やってることストーカーじゃないですか!

と言いたかったが辞めておこう、一応師匠だし、きっと心配だったんだろう。たぶん。


「先ほど手紙を渡したとき、空気が揺らいだ感じがして、もしかしたらと思ったのです。……正直本当にいるとは思わなかった。」


「そうでしたか。私もまだまだですね。……ヴァンには報告しません。これは三人の秘密にしましょう。いいですね?」


元からそのつもりだったし、ロゼッタがそう言ってくれるなら好都合だ。


「ロゼッタ様がそれでよろしいなら。」


「僕も異論ありません!」


「では密会はこの辺にしましょう。門周辺の兵士たちがアメリアのこと探していましたし。」


「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。ロゼッタ様の恩情に感謝いたします。……レイくん、君はまだ子供だ。ちゃんと帰ってくるんだ。では先に失礼します。」


アメリアはそう言い残し、速足で西門へと向かった。

横にいるロゼッタはなにかを考えるように、僕の手に握られている手紙を見ている。


「……なるほど。これは早く読んだ方がいいですね。フランの師匠はロベルトです。彼にも見る権利があると思います。レイがよければテントで一緒に読もうと思うのですが、いいですか?」


僕宛の手紙ではあるが、今はそんなこと言ってられないということもわかっている。

なにかヒントになることが書いてあるかもしれないし、ロベルトもフランのことを心配しているはず。

それなら答えは一つしかない。

「僕もその方がいいと思います。ですが先にひとりで読んでもいいですか?」


「えぇ、もちろん。それで構いません。」


「ありがとうございます。……あの、どうやって隠れていたんですか?」


「それは内緒です。さぁ早く行きましょう。」


ロゼッタは足早に歩きだし、僕もそれに付いていく。

手の中にある手紙が、フランを知る鍵となることを願いながら、ロゼッタと共にテントへと向かった。

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