決意
焦っても仕方がないということで、ロゼッタがカモミールティーを淹れてくれた。
急を要するはずなのにこうしてくれたのは、僕の精神面を考慮してのことだろう。
カモミールの清涼感と心が穏やかになる香りで、先ほどまでの緊張が少し解ける。
師匠もカモミールティーをひとくち飲み、ほっと一息つく。
これだけ見ると師弟揃って夜更かししてるみたいだ。
そんなこともなく、ロゼッタが姿勢を正したのをみて、僕もスっと背筋を伸ばした。
「ここからが本題です。私たちは夜明けと共に外西の遺跡に向かいます。ヴァンの報告によると、陰の人は遺跡から動く気配がないようです。これは私の勘ですが、結界は完全には解かれていないと思います。」
「下から上がってくることは出来るけど、外には出れない可能性があるということですね?」
「えぇ、そうです。レイモンド卿がどういう結界維持をしているのかを確認しないと確証は得られませんが。」
これは吉報だろう。
外に出れないということは、オールドテイルまで攻めてくることはないということだ。
「……ですが、魔物は遺跡を囲むように集まってきているようです。結界も完全に解かれてしまう可能性がありますし、魔物もいつ攻めてくるかわかりません。……なので私たちで陰の人を討伐します。」
星のようにきらりと輝く琥珀色の瞳には覚悟と不安が混ざっている。
「陰の人を討伐できるのは光魔法が使える私たちだけです。……もしもフランが裏切っていたとしても動揺してはいけません。そのときは殺るしかないということを頭に入れておきなさい。」
フランを殺さなければいけないかもしれない。
それに陰の人は僕たちと同じように魔法が使えるという。
昨日実地訓練を始めたばかりの見習いに何ができるのか分からない。
だがやらなければいけないときがある。
真実を知らないといけない。
……フランのことが知りたい。
覚悟ならもう決めた。
震えそうになる身体と声を押さえつけて、僕は立ち上がりロゼッタの前に跪き宣誓するのだ。
「はい。僕にできる最大限の力を我が師、ロゼッタ様に捧げます。不肖の身ではありますが、どうかお導きください。」
ロゼッタの笑顔は柔らかく微笑むと、僕の手をそっと手 握った。
不安や恐怖を全て包み込んでくれるように優しく。
「師匠として、レイのことは全ての力を使ってでも護ります。私はレイを心から信じています。気負わずに安心して私の援護をお願いしますね。」
信じるという言葉がこんなにも重いなんて知らなかった。
でもロゼッタがいれば怖くない。
僕の師匠は言ったことを必ず守る。
だから僕は冷静でいられるんだ。
必ず僕とロゼッタとフランの三人で、オールドテイルまで帰る。そう心に誓った。




