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8.『 霊園の刺客 』


学校を終えて、私服に着替えた黒園と桐野は街の中へ出かけていた。

暗くなり、店や街灯によって照らされる明るい空間の中。


「今日は何するんだよ?」

「まぁ、気になることがあってね」

「気になること?」

「そうよ。前に霊園で起きた戦闘あったでしょ?」


霊園での戦い。

それは、自分は参加していなかったがアパート内で黒園が強大な魔力を感じ取り、驚いていた頃だ。

それも、相手はスフィアで戦ったばかり。


「あぁ、ウチに居た時に感じた魔力だよな?たしか、あれってスフィアがやったことなんだよな」

「そう。その見つかった遺体なんだけど。ニュースで身元が分かったらしいのよ」

「魔術師のか?」

「いいえ。遺体は魔術師では無かった。そもそも、何でそこに居たのかも不明なただの会社員だったらしいわよ」

「なんだそれ!?なら、無意味に人を殺してたっていうのか!?」


思わず驚きに声を大きくしてしまう。

それに対して黒園は指を立てて「しー!」と促すのだ。

しかし、そんな事をしても良いモノなのだろうか?実際、願いを叶えるための戦いで関係の無い人を巻き込むなど、こちら側が不利になるとは思わなかったのか?

ましてや、実力を思い知らせて、わざと魔力を感知させるにも相手は魔術師を選ぶはず。

それが何故?

そんな疑問だけが脳裏に浮かぶ。


「なんだって、意味ない事したんだ?」


次に小声で黒園の耳元に話しかける。


「さぁ?けど、何かあったんでしょ。実際、魔術師ってのは自分の為に手段を選ばないのは確かよ」

「マジか、、、、」

「けどそれは、ごく一部にしか過ぎないわよ。私だって、他人を犠牲に強くなりたいなんて思いたくないしね」

「それなら、安心した」

「――――――ん?なによ。私もやりかねないと思ったわけ?」

「いやいや、滅相も無い!冷酷そうだなって思っただけ!!、、、、あ」


言わなくてもいい事に気づいた桐野は、思わず口を手で隠す。

案の定、黒園はムッとした顔をしている。


「へぇ~そんな事思ってたんだ~。実際に、貴方を助けたのは私なのに?」

「悪い悪い!言葉の綾って言うか、、、、、なんというか、、、、、、」

「ふッ、まぁいいわ。まず先に、霊園に向かいましょ」

「あぁ」


鼻で笑う黒園。

その足取りで、丘の上にある霊園に向かうのだった。


夜に赴く霊園は不気味だった。

今は確かに寒い時期に入ったばかりではあるが、何故でだろう、街の中よりも一層肌寒く感じる。

白い円形状の柵が並ぶ奥には、墓標が並んでいる。

その中心には、抉れた土が外に掻きだされた悲惨な状態が見える。

中で眠っている人達も、まさか、無理やり外に出されるとは思っていなかっただろう。


「酷い状況だな」

「そうね。信じられないくらいの規模だったようね」


鍵で閉鎖された門の横にある白い柵を登って、中に入り込む。

窪んだ穴の場所へと近づいて行く。

そこで、しゃがみ込んだ黒園は土を手に取る。


「流石に、雰囲気ある所だなぁ………………」

「……………………」


黒園は黙り込んでいた。


「どうしたんだよ黒園。何か分かったのか?」

「いいえ。綺麗サッパリ魔力の跡は消えてるわ。あるとしたら、僅かなスフィアの魔力くらいかしらね」


立ち上がると、辺りを見渡す。


「他に、戦闘した跡とかってないかしら?」

「そうだな。探してみるか」

「そうね。何かあったらお互い呼び合う事」


そう言って、黒園と桐野は二手に穴を中心に分かれる。

柵付近をそって桐野は歩き、黒園は更に傾斜の上を登って歩き進んでいく。

徐々に視界が霧っぽくなり白く靄が掛かり始める。


「やっぱ山だからか?急に視界が霧で……………………」


柵に手を触れながら歩いていると、後ろから足音が聞こえる。

思わず振り返ると、其処には壮馬の姿があった。


「やぁ、桐野。お前、ここで何してるんだ?」

「それはこっちの台詞だろ!びっくりさせるなよな~」

「悪いな。それで、桐野は何してるんだ?」


壮馬は笑みを浮かべて問いかける。


「まぁ、、、、、そうだな」


そこで、桐野の脳裏には黒園の言葉が過った。


『ここ学校でも同じこと。枯木が居る時点で、何かしらのサインや行動が見られた場合は、即座に叩くから』


枯木も、同様に魔術師の家系。

つまりは、今時点で敵になり得る相手だ。

今行動に移ってないだけで、、、返答によっては戦う可能性がある。

すると、壮馬は柵に背中を着けてポケットに手を入れる。


「言いづらい事なら、言わなくてもいいさ。ま、あんだけニュースになれば気になるのも当然だよな」


冗談交じりに壮馬は話しかけてくる。

気の抜けた感覚は、学校での接し方と同じだ。


「そ、そうなんだよ!爆発って言われても不思議だろ?検証の人達も居なくなった今なら、近くで見れるかな~って思ってさ~はは~」

「ほんっと相変わらずだよな桐野って。好奇心旺盛すぎんだろ~」

「か、変わんねぇだろ?」

「ホント変わんねぇよお前!」


壮馬は、桐野の肩に手を置く。

その時だ、顔を近くに持ってくると小さく呟くのだ。



「ホントだぜ~……………………好奇心は猫をも殺すって言うもんな」



その湿り気のある声色に、思わず桐野は距離を置くように下がる。

その言葉だけじゃない。

壮馬の雰囲気も相まって、恐怖した。


「なんだよ?本当の事だろ??好奇心ってのは身を滅ぼすんだから、気を付けろよって話だろ?」

「な、なんだよ。怖い事言うなよな壮馬」

「怖い…………?俺がか………………?」

「なんだ、気に障ったのか?それなら、謝るけど―――」

「くく……………………ッ」


桐野が話す途中で、壮馬は歯を見せて笑いを堪える。

しかし、次第にこらえきれずに腹に手を回して豪快に口を開く。


「ききッ、、、、ひぃぃ、、、ぁぁっははははははぁ~~~!!!がはははははぁぁぁぁぁあぁ!!!!」

「ど、どうしたんだよ壮馬。急に笑われると、、反応に、、、、、、」


前のめりに腹を抱えて笑う壮馬。

笑みはそのままで、桐野を下から覗くように見つめる。

屈託ない笑顔に、狂気が混じったような表情だった。

前髪で陰った瞳が覗く、にんまりとした細い目がとてつもなく言われようのない恐怖を感じさせるのだ。

ゾッとして桐野は、冷や汗を流す。


「馬ァ~~~~~~鹿ァァ!!!!!」

「な――――ッ」

「俺が知らないとでも思ってたのかよぉ?お前はぁ!!!」


知らないとでも思っていたのか。

この言葉がすべてを物語った。

そう、彼はすでに知っていたのだ。

何を?

そんなのは云わなくても分かる。何故なら、彼も魔術師なのだから。


「最初から、、、、知ってたのかよ、、、、、」

「最初から?ねぇ、、、、、まぁ、最初は黒園沙耶を目星に着けてたけど、、、、まさか、一緒に行動するお前を見てピンと来たね。桐野翔也ぁ!!お前も魔術師だってねぇ!!!!!」

「じゃぁ、何で此処に、、、って、お前の仕業、、、」

「いいや、紛れもなくスノーフィールドと他の奴らだろうね。街にも人間を従者に作り返る奴もいるくらいだしなぁ、、、、、、俺はただのガラクタ集めだよ!!!」

「ガラクタ、、、、?」


壮馬の言葉に引っかかる。

ガラクタとは何を意味するのか。


「壮馬様。良い品を見つけました」

「おぉ、そこに捨てといてぇ~」


横で聞こえる声の主。

その方向に目を向けると、学校でいつも一緒に行動しているメイドだった。

しかも、その手に持つのは腐敗の進んだ人の遺体だ。

それを見て絶句する桐野。


「お前、、、、まさか、、、、、、」

「あぁ?別にいいだろ。命持たないなら、ガラクタと一緒なんだからさぁ」

「人の住処を掘るなんて、、なんて罰当たりな事してんだ!」

「ばぁ~か!お前の偽善がなんの役に立つ!?俺にも勝てない癖に!!!」

「壮馬ぁ!!!」

「最初にやってやれ、『サギリ』!!!」

「御意に」


壮馬の命令に、サギリは死体を投げ捨てる。

同時に、その場から跳ねて桐野の顔に向かって指を立てた手が襲い掛かる。

眼前に迫る鋭い指。

不意に反応するも、少しばかり遅かった。

柵ごと、外へとひしゃげて吹き飛ぶのだった。


「なんだこの力!?これも魔術か!?」


転げて起き上がる桐野。

目の前でフラフラと立ち上がるサギリから距離を取る為に、足へと魔術神経回路を光らせる。

その場から人蹴りして、距離を離す。

しかし、それを走って追いかけるサギリの速さといい圧が凄まじい。


「黒園――――――――ッ!!!!!」


呼び合う条件で、名前を叫ぶ。

しかし、先に攻撃が来るのはサギリだった。

白い肌で細い腕のはずなのに、振りかざす拳は自分よりも大きく感じるほどの殺す意を持つ圧だった。

地面に触れると、風圧で吹き飛ぶ。

身体が吹き上がって桐野は、地面に手を着こうとした刹那だ、サギリの黒い長ブーツが手元を蹴り払う。

地面から離れて、更に浮いた体をサギリは右足を軸に回転させて一本の木へと蹴り飛ばした。


「ぐは―――――ぁ!!!」


衝撃で桐野は、血を吐く。

顔を上げ、体をどうにかして持ち上げようと、もたれかかった身体を動かした。

しかし、追い打ちだ。

サギリが、垂直に真っすぐに飛び込んできて、手に持つ短刀を桐野の顔横に突き刺した。

それに、左足が桐野の右肩を強く踏み、右足で伸びた左足を地面に強く踏みにじり、鎖を持つ両腕とサギリの冷たく冷めた冷酷な瞳だけが桐野を見つめる。


「ここで、死んでください」

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