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10.『 次の目的 』


「ぅわぁ!?サギリ!!??」


吹き飛ばされたサギリに驚いた壮馬。

両腕が柵に寄りかかった、短刀が地面に落ちる。

サギリは、頭部から血を流して痛みに歯を食いしばって耐える。

が、力が入らない。


「何してるんだ!さっさと立てよ!!!」

「す、すみません、、、、、、しかし、、、、彼は―――――」

「感謝するよ。俺を、この魔術の使い方のきっかけとして戦う事ができた」

「何ぃ!!??」


歩いてくる桐野に、壮馬は怒りを表情に露にさせる。

すかさず、指を桐野にさす。


「お、お前!何した!!!何をしたら、サギリをこうも吹き飛ばせるんだよ!!!」

「俺の魔術は―――――」

「いぃや待て!!!」


桐野が話そうとするも、すぐに壮馬は止める。


「まさか、お前にも俺には隠しているだけで従者を持っているな?そうだろ?いや、そうに違いない!そうでなければ、勝てるはずがないんだからなぁ!!!!!」

「違うよ。俺には従者何ていないからな」

「はぁぁ?そんな張ったり信じてやるかよ!!そんなに俺の従者が!御三家である枯木家当主の孫である枯木壮馬の従者に勝ったという称号が欲しいのかよ!!!お・ま・え・はぁーーーーー!!!!!」


壮馬は、睨みつけながら懐に入った紙きれを取り出す。

白い紙きれで、変哲も無いように見えたが、中心には目のような印が刻まれていた。

警戒して桐野は、攻撃に入れるように準備する中、壮馬は三枚を手前に見せつけるように伸ばすと、地面へと落とすのだった。


「俺には勝てない事、思い知らせてやる。サギリは俺の従者だ。主である俺の勝利は絶対なんだからな!」


地面に紙きれが落ちて接着した瞬間、煙の様に白く揺れながらも幽霊の様に漂う物体が現れた。

それも、両目が青黒く窪んでニヤリと不気味な笑みを浮かべる。


「何だ、それは幽霊か?」

「遠くも無いな。が、教えたところで俺に殺される運命なんだ、そのままくたばるんだなぁ!!!」

「―――――――貪欲だよ、お前はッ」

「やってしまえお前らぁぁ!!!」


壮馬の声に反応して、桐野に襲い掛かる。

一体が目の前に出現したその時、真横から押し倒すような圧力がかかる。

バランスを崩して倒れそうになるのを、足で踏み留めるが目の前の一体の腹部から顔を出す。


「触れられない―――――ッ!?」


押されたはずだが、桐野からの接触は通過してしまう。

殴り掛かろうとも、掴めずに地面へと押し倒される。

力が入らないせいか、腕で地面を着くが体を起き上がらせるのも困難だ。


「この感覚、、、、、魔力が吸われてるのか、、、、、、?」

「ご名答だね、桐野。コイツ等の魔術刻印は『吸魔の刻』。いやぁ、掘ったかいがあったってもんだよねぇ!他にも、二つの刻印があるんだけどぉ、、、、、まぁ、お前には関係の無い事かな」


自慢げに壮馬は感情高ぶり話始めた。

その間にも、三体の浮遊体が桐野の身体の上に追いかぶさって徐々に地面へと強く押し付ける。

その度に、体が重くなり押しつぶされる感覚が襲う。


「ははぁ!お前とは相性が最悪と見たぞ!!流石は彩雲寺だよ!!」


「あら、そう言う事」


「誰だぁ!!!」


壮馬が振り返ると、そこには黒園沙耶が立っていた。

腕を組んで、悠々とした佇まいに睨みつける様な表情を浮かべて、壮馬をじっと見ているのだった。

黒園の姿に、驚き壮馬は焦る。

しかし、その焦った表情を見て顔を上げて上目遣いで息を漏らす。


「はぁ……………………見た事も無い魔術。そう思っていたのだけど、まさか、魔術刻印を施した式神だったなんてね」

「な、なんで、、、お前がここに…………ッ!?」

「おあいにく、貴方が差し向けた式神は一掃したわよ。大体、私とさっきの奴らなんて相性が最悪だもの。ましてや、近接で直接攻撃を仕掛けないとダメな桐野君は正反対で攻撃が効かなかったらしいけど、私は属性魔術が得意で、魔力の供給には長けてるの―――――――ねぇ、言っている意味、分かるでしょ?」


黒園の言葉を聞いて、壮馬は苦虫を噛む表情を浮かべる。

しかし、まっさきに信じられなかった。

懐へと手を入れ込む、その様子に黒園は、すぐさま手を伸ばして桐野へと向けた。


「偉そうにしやがってェ…………黒園の格式なんざ知ったことか!一人しかいないお前なんかに、魔術師たる繁栄なんて無駄な話なんだよ!そのまま、落ちぶれて死んでた方がお似合いだろうがァァ!!!!!」

「……………………ごめんなさいね。私、『天才』だから」

「この、、、、クソ女ぁ!!!!!!」

「『届ける加護の、秦精を―――――水紋(レリッド)』」


壮馬が投げ捨てるより早く、横切った水滴のような物質。

ソレは、桐野にかぶさる式神へと入り込むと内側から波紋が浮かび上がって全身に広がると、形が溶けて行くように煙となって蒸発する。


(体が、軽くなった――――――ッ!)


「行け、お前達ぃ!!!!!」


壮馬の掛け声に、背後からの威圧。

獣を狩るような、重圧が背中を押す感覚と共に冷や汗が流れ落ちた。


(なんだこの恐怖は!?誰なんだよ!!一体、誰が―――――ッ!!!!!)


「壮馬ァーーーーーーー!!!!!!」


桐野が走って壮馬に向かってくる。

その存在に気づいた壮馬は、咄嗟に心の底から叫ぶ。


「サギリーーーーーーー!!!!!!」


目の前に躊躇なく伸びてくる桐野の拳。

魔術回路が神経を辿り、オーバーヒートの様に白い煙を出しながら壮馬の顔面へと入り込んでくる。

壮馬は、手で防ぐように顔の前に出して目を閉じる中、その拳を横から蹴り込んできたのはサギリだ。

弾かれた拳に加えて、サギリは、そのまま壮馬の目の前で回転したまま蹴り足を再度桐野の顔に叩き込む。

左腕で桐野は攻撃を受け止めるが、死角から短刀が鎖を連れて下から上に掛けて斬り裂くのだった。


「キャンセル!『収束する(インストラーロ・)噴火(エクスハティオ)』―――――!!!!」


桐野とサギリの短刀の間に爆発が起きる。

吹き飛ばされながら桐野は距離を離すも、すぐに顔を上げる。

目の前には、すでにサギリにおぶされた壮馬の姿。

さっきまでの怯えようとは打って変わって、サギリの背中の後ろで笑みを浮かべていた。


「はははぁ!!ざまぁ見ろ!!俺のサギリには勝てないんだよぉ!!!!!」

「この――――!!」


サギリは、全速力でその場から駆け出し一気に離れた木の上へと飛び移る。

彼女たちの姿を追うように、桐野は走り出すも途中で黒園に止められるのだった。


「ダメよ!」

「何でだ黒園!あのまま見過ごしてしまえば、まら墓荒らしが!」

「今日ので、式神たちは使い果たしただろうし。さっきのサギリって女も、結構な怪我をおってたから、しばらくは安静にしてるでしょ。」

「けど!」


冷静だ。

黒園は、必死な桐野とは逆で、冷静で落ち着いていた。


「また戦うことになるわよ。あれだけ苔にされたんだもの。彼の性格上、そのままにはしておかない、、、、、そうでしょ?桐野君」


薄っすらと微笑む優しい表情。

そんな彼女を見て、忙しなかった桐野の心も何故だか、落ち着きを取り戻す。

一人でも冷静な人が居れば、つられて落ち着けるのだろうか。

桐野も、深呼吸して自身の呼吸を整える。


「……………………そうだな。悪い、早くしないとって気持ちが先立ってたよ。確かに、黒園の言う通りだ」

「そう。なら良かったわ」


黒園は、桐野の元へと歩いて行く。

地面に落ちていた式神の紙の破片を拾い上げる。


「それは、さっきのか?」

「そうよ。コレは、彩雲寺の式神」

「彩雲寺て、ここの街の大きな寺じゃないか。なんでそこが?」

「迂闊よ」


黒園は、額に手を置いて首を振りながらため息つく。


「魔術同士の戦いの中で、陰陽師が入ってるなんて思わなかったんだもの。まさか、枯木家の奴ら、陰陽術と魔術を利用するなんて……………………でも、良いわ」

「どうしてだ?」

「次の狙いが決まったんだもの」


自信満々に笑みを浮かべる黒園。

そんな彼女に、桐野は首を傾げる。

そこで、黒園沙耶は桐野の顔を見て、不敵に笑みを浮かべて目を細めながら言うのだ――――


「私たちが次に行くところは、『彩雲寺』よ」


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