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校舎裏のメガネの話

余談ですけど優の髪の毛の色は紫です。






「詐欺だ…詐欺師が身近にいた…」



昨日の入学式は悲惨だった。各自教えてもらった体育館へ移動とのことだったので優と行ったはいいものの全然人がいない。

教師達はガラッガラの体育館で気にせず入学式を始めた。話してる途中でぞろぞろと生徒が集まりだしたかと思えば遅れてきたくせに『うるせー!』だの『降りてこいや!』だの。喧嘩を売らなきゃ生きていけないのか?時間くらい守れないのか?他人より早く着いたら死ぬのか?僕のお好み焼きがどんどん遠ざかるんだぞ。お腹と背中がくっつきそうだった。



なんて。まぁ、そんなヤジをモノともせず止まらず進行する先生たちも慣れたものですな。


そこからあれよあれよと集まったヤンキー達。いろんなとこで喧嘩勃発しっちゃかめっちゃか

殴られたくないから端っこに避難して終わるのを待つ。『素敵な高校生活を送ってください』なんて校長よ、思ってもない事を。

生徒の反応なんて気にせず言い終わった瞬間に階段を降りる校長。スピーカーから聞こえる『各自クラスに戻って下さい』


聞いてる人のが少ない。むしろ周りが騒がしすぎてスピーカーの音量が物足りないくらいだ。




「今日は面白い顔をしてるね」

「誰のせいだと思ってる!この詐欺師め!」

「ひどいな〜」



へらへら笑う優と学校への道を歩く。入学式のあと、体育館から教室に戻ったら黒板にデカデカ『戻った者から帰宅』の文字


ここまでくるとさすがにおかしいだろ!と思った僕は優と家に帰りお昼にお好み焼きを頬張りながら母さんに愚痴った。



『バカ高なのは聞いたけどそういう感じじゃない!』

『お母さんは他の学校に行けない子が行く高校って言ったのよ?』

『わかりやすく言えば問題ばかり起こして内申点が足りない俺みたいなやつだね』


それを聞いた僕はあまりにも衝撃的で思わず口の端にお好み焼きソースがべったりとついてしまった。



はめやがった。この二人は不良が集まる高校だと知っていたのだ!確かに優はそこしか行けないだろう。ずる賢くはあるが勉強が出来るわけでもないからな。だからこそ頭の問題だと思うじゃないか!内申点足りてないなんて言われたことなかったし!それにそんな高校を可愛い息子にすすめる母親なんて、裏切り者以外のなんでもないじゃないか!どうかしてる!


と、まあそんなようなことをよく回る口だな。と思われるくらいぶつけた。それはもう大層怒った。当たり前だろう?将来がかかっているんだ

こんな高校を卒業したからってマイナスにしかならない。バカ高のが百倍マシだろう


そんな僕の心配をよそに『碧ちゃんは頭がいいから大丈夫よ。それに何かあったらお父さんの食堂を継げばいいじゃなーい。優くんもどうー?』なんて!


・・・それもそっか。と僕は許したのだった。

僕の父さんは飲食店を経営していて日々小さな食堂で料理を振る舞っている

昔から継ぐつもりだったし、父さんにも小学生の頃から言い続けてきた。なんの問題もなかった。


ただ僕はすこぶる頭が良かった。前世で厳しく育てられたからか勉強する習慣が身についていたし、何より忍耐力が凄まじかった。

それに誰にも見張られず、怒られないで勉強できる環境が嬉しく、楽しくもあった。やり始めたら五時間なんてザラだった。

なので両親も僕が食堂を継ぐと言ってはいるものの他に好きなことができたのならそれをやりなさい、と優しく見守ってくれていた




やはり僕は最高にツイてるな。


なんて、思っていたけどポジティブに言うならこれは外堀を埋められたととってもいいのでは?あれ?と首を傾げていれば挙げ句の果てに『優くんが一人になったら可哀想じゃない』なんて


贔屓だな。息子より息子の幼馴染をとりやがった。全然ツイてなんかいないじゃないか



まぁ確かに僕も一人よりは優がいてくれた方がいいし、母さんがそこまで優を気にかけるのも理解できる。

それにいくら怒ったところでもう入学しちゃったしな、と色々諦め僕はその後素直にお好み焼きを味わうことに集中したのだった。



「もう僕に隠し事してないよな?」

「もちろん。信じてほしいな」

「今もっともできないお願いだね」



許したけど僕は隠し事をされたのが寂しかったので次の日である今日くらいチクチク言ったっていいだろう。

こいつも僕が本気で怒ってるとも思ってない。このニヤケ面がそう物語ってるからな





「橘、狼谷急げよ。もうすぐチャイム鳴るぞ」

「よ、担任。おはよう」

「引くほど生意気でムカつくから橘お前職員室に来い。皆に配る書類持ってけ。」

「やっちまったー!!!」


顔を手で覆い絶望を表現する。なぜなら職員室は隣の校舎にあるのだ。割と長めの渡り廊下を通らないとならない。問題ばかり起こす生徒と同じ校舎なんて嫌だもんな。気持ちはわかる

だがそれが面倒なんだよ!書類運ぶのくらいなんとも思わないけど歩かされるのはちょっといただけない。僕は朝ごはんを食べない派だから省エネで昼まで過ごさなければならないのだ



「俺もついてこ〜」

「ダメだ。チャイムが鳴るって言ったろ。それに罰にならない」

「いや、スグも来るべき。連帯責任これ学生の基本」

「うーん。教室で待ってるわよ〜」



ちゅっ、とウィンクつきの投げキッスを僕に寄越して颯爽と去ってく優。心なしか後ろ姿がスキップをしているように見える

あいついつもは僕にべったりなくせにこっちが本気で職員室に行くのが嫌な顔してたらニコニコで離れて行きやがった


中学二年の時言ってたもんな。『人の嫌がる顔を見ることほど楽しいものはないね』って。前年1500メートル走だった体力テストが今年はシャトルランになったと知った時の僕相手に



同じ顔をしていたね





「せっかくだしめちゃくちゃ遅く行ってやろう」


まぁ、遅刻したところで授業なんてほぼないようなもんだから意味ないんだけども。『二時間目に使うからちゃんと教卓の中に入れとけよ』と言ってコーヒーを飲んでいたボサボサ教師への少しばかりの抵抗だ



「そうだ、僕も飲み物を買っていこう」


担任がコーヒーを飲む姿を思い出し少しばかり寄り道をする。渡り廊下のすぐ横に自販機があるのは確認済みだ


ポケットに入れた小銭もチャリチャリと音を鳴らして僕に飲み物を買えとアピールしているしな




「ほっほーう、ここはヨーグルト味の飲み物があるのかぁ。素晴らしい自販機だな」

「ふざけんな!!!」

「っ!」


自販機の前で何にしようか吟味していれば怒鳴り声と共にドサッ!と何かが倒れる音が聞こえた。

その後も絶え間なく複数人の、怒鳴ってはいないがしっかりと怒ってるであろう声がかすかに聞こえてくる。



なんだなんだ?と野次馬精神がむくむくと湧き起こり声のした方へ向かえば地面に横たわる一人とそいつに対して怒ってる複数人がいた。


これはいじめか?まだ二日だぞ?はやすぎる。僕なんて優以外の生徒の名前知らないのに



「くそ、イラつくわマジで。いいか?死にたくなけりゃ明日五万持ってこい」

「ったく、最初から素直に返事してたら三万ですんだのにな」

「メイワクリョーってやつだよ、メイワクリョー!」

「ギャハハ、バカなやつ」



すごい。THE王道のかつあげだ。そして引くほど下品だ。こう言う輩は弱いものに対してしか強く出れない

暴力で人をいいように使おうとする。痛みを知り、恐怖を覚えてしまったら一瞬なんだ。一度でもそれに屈してしまったら人は簡単には抜け出せない



『いい加減にしろセオドア!お前の兄たちは一度で出来たのに、私に失望させるな!』



僕はそれを知っているから



「ったく、分かったかデブ。オメェみたいなやつとも仲良くしてやろうって言ってんだ。感謝しろよな」

「黙れ!!!こっちから願い下げだ!金だって払わない!今すぐ僕の前から消えろ!」


見るに絶えず『おい!』と飛び出した瞬間被された怒号に思わず足を止める。

殴られたせいで頬は腫れ、鼻血も出てる。砂で制服も汚れてるしメガネだって割れてしまっている


恐いはずなんだ。それなのに、立ち上がった足だって震えてるのに




「二度と僕に話しかけるな!」




はっきりと、負けずに言い返してる彼の目が強い意志で輝いていて

僕は目が離せなくなった






メガネくんはぽっちゃりさん。彼の中学の体育の成績は4です_(:3 」∠)_

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