前世の僕の最期の話
壁打ち用。書きたいものを書きたいときに
前世の貴族的なアレコレはこの話のみ。多分
ジパニアス王国。フィリップス辺境伯領は山と海に囲まれた僻地だった。山を登るには獣を倒し、食うために漁に出るも海賊を相手にすることだってある。他国から攻め入る兵を討ち取り、王国に害が及ばぬよう、民が笑って過ごせるよう命をかけてその全てを守るべし。
「セ、オドア・・・よく、聞くのだ」
辺境伯領主。アルフレッド・ルイ・フィリップス・・・父に何度も言われた我が家の宿命
「一人でも、王国にせめこませぬ、よう」
セオドア・ジョン・フィリップス。
フィリップス辺境伯の三人いる息子の三男。末っ子である僕につけられた名前だ
「あに、たちに劣ってたとして、我が家の息子として産まれたのなら」
愚かな王が隣国に恨みを買い、敵兵によって攻め込まれ早二年。戦争は未だ終わりを見せず、水も汚れ作物も育たず、食うに困った民が何人も死に、山の獣は餌を求めこの領地に下ってきた。
疲弊した兵達が人と獣、同時に相手になど出来るはずもなく、前線に立ち剣を振るった兄達も血に濡れ、その息を止めた。
バカでもわかる。今日この日を持って辺境伯領は消滅するのだと
「最後まで、剣をふる、うのだ」
「・・・父上」
民を守るべく町に降りてきたところを獣に食われていた母の身体を守るように抱きしめ、血だらけの父は僕を見ることなく、言う。身体は動かずとも辺境伯としての誇りを胸に、全てを僕に託したのだ。
隣国の兵力を侮った我が国に勝利などあるわけがない。きっと数日後にはこの国が滅んでいるのだろう。父との会話がこれで最期であろうことくらいは分かる。だから僕は声を大にして言うんだ
「クソ喰らえだこの野郎」
父の驚きに丸めた目が初めて僕の目と合わさる。幼い時からこの父親の目に僕は写っていなかった。
誰がこんなクソみたいな家に産んでくれと頼んだよ。産まれた時から剣を握ることを約束され、友達と遊ぶ暇もなく鍛錬だと殴られ、走らされ。執事やメイドにも兄達と比べられた。たまに呼ばれる貴族の集まりでは『さすがに末っ子殿までは辺境伯殿の才能が残されておりませんでしたな』と笑われ、『まぁ長男がしっかりしているもの。とても助かっているわ』と母は僕の頭を撫でながら笑い返す。
父は『まったく、困ったものだ』と腕を組みため息を吐く。数え切れないくらい見てきた
『僕は人や動物と戦いたくないんだ』
『テディは名前の通り、優しいね』
『兄貴はテディを甘やかしすぎだろ。辺境伯の息子として産まれたからには王国を守るために力をつけないとならない』
『そんなことわかってるよ・・・でも』
『リック、言いすぎだ。俺たちとテディは違うんだ』
別に仲が悪いとは思ってない。二人の兄のことも好きだし、僕のことを考えて言ってることだってわかってる。それでも長男のギルバートが優しく守ってくれるのも、次男のパトリックが険しい顔で僕を諭すのも
お前には才能がないんだと、言われているようで息が詰まった。
13歳にもなった僕をいつまでもテディと呼び続けることさえ、気になって仕方がなかった
「せっかく貴族に生まれたって言うのにおしゃれだって出来なかった。鍛錬ばっかりでアクセサリーをつける暇もないし、なによりこんな辺境に商人が来る頃には既に王国でブームが去ってる。パーティーにつけていったところで恥をかくだけだった」
いくらお金があったところで使うものが、場所がなければ意味がない。今思えば本当につまらない人生だった。
「セオド、ア?」
「僕もきっとすぐ死ぬことでしょう」
鍛錬だと剣を、拳を振り上げる兵達が怖かった。守るためだと言われついた傷も、敵だと言うだけで殺さねばならない相手の目も怖かった。
戦いたくなんてなかった。誰でもいいから友達がほしかった。
並んで砂浜に座ってるだけでも、僕は良かったんだ
だって、それすら知らないんだから
「本当に、ついてなかった」
「テ、ディ・・・!」
獣の鳴き声が聞こえる。地面を蹴る音が近づいてくる。腹を空かせた獣はきっと跡形もなく僕を食い尽くすのだろう。その前に、ずっと思い続けてきた
戦わなくたっていいじゃん
それくらい叶えてもいいと思うんだ。だから僕は自ら命を経つ。今まで他人に向けてきたこの刃が最後には自分を終わらせるんだから笑える。やっぱり辺境伯の息子なんてろくでもない。こんなにもついてない人生があるだろうか
だからこそ
「絶対来世では、ツイてる人生を歩むんだ!」
あばよ、今世
これは、そんな不運な少年が波瀾万丈で、それでも最高にツイてる来世を送るための前日譚である。
もしここを見つけて、読んで設定やら呼び方やら、内容そのものにはぁ?って思っても何も言わずに勉強不足だね!うむうむ。と優しく見守って頂けたらと嬉しいです。
誤字、脱字あったらすみません。