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第68話 天狗戦その後

 羽衣ういと天狗氏が一戦交た後、天狗氏を含めて俺達は神屋家へと戻っていた。

 俺の部屋にてスマホを片手に天狗氏と共にキラ☆撫娘(きらぼしなでしこ)のライブ映像を鑑賞中なのだ。


「愛しの君よ! おおおおッ! 感謝するぞ少年よ!」


「天狗氏、貴方の様な存在にも彼女らの良さが分かるのは、俺にとっても幸運だ。さて今夜は楽しもうか!」


「応ッ!」


 そんな俺と天狗氏が盛り上げっている隣の部屋では、女性達が呆れたように雑談をしていた。


「……天狗さんの声が聞こえないあたし達だと、コウが一人で騒いでいる様にしか聞こえないねー」


「何も知らんとイマジナリーフレンドと話してるヤバい奴に聞こえるのー」


「兄様の……ばかあ……」


 羽衣ういが涙目になっているらしく、それを横で実体化した駄蛇が慰めている。


着物娘うい……、ちょっとは同情してやるヘビ。なでなでヘビ」


 駄蛇は自分の顎を羽衣ういの頭に当てて撫でるような動作をしていた。


「気色悪いのでやめてください。邪蛇じゃへび!」


「せっかく慰めているのに、その態度は何ヘビ!? やっぱてめーらは気に食わねーヘビ!」


 そんな口喧嘩が勃発する中、ローラだけは無言であった。


「どしたの? さっきどっか怪我した?」


「そうじゃないけど……、ここにいる人達ってみんな強いな……って」


 ローラにとっては、のじゃロリは元よりレイチェルねーさんや先日初めて出会ったばかりの羽衣ういですら自分の手の届かない存在の様だと感じてしまったらしい。


「そう自分を卑下するでない。まだ対魔戦闘訓練初めて数ヶ月。道は長いのじゃ。最初からなんでもできる奴などおらぬよ」


「そうそ。気晴らしにみんなで温泉入ろ!」


 そう言ってねーさんはこの場の女性全員を神屋家の温泉へと引っ張っていった。











「はあ……。予定外のお客様が帰りましたから……、ゆっくり入浴できますね……」


「まーたそんな嫌味言って。本人がいないからって駄目だよ」


「だって……」


 浴槽に浸かっている羽衣ういは、ねーさんに注意を受けて自分の口の部分までを風呂に沈めて、いじけながらブクブクと空気を吐いている。


「しかし……、羽衣ういよ。お主にも謝っておかねばならぬな」


 偽ロリが真剣な表情となり、ローラを日本に連れてきた際の経緯について説明をしていた。


「ローラさんって……、いわば許婚じゃないですか!?」


「う……うむ。まさか、お主がそこまで功を慕っておったとは思わなくての……。六年も経てば色々と変わっておるか……。本当に済まぬ」


 いつもの破天荒な態度はなりを潜め、謝罪をしていたルーシーであった。


「いえっ!? その……正式にお付き合いしてるわけではないですし……。兄様もお忙しくてなかなか会えませんでしたから」


「かなりこき使っていたようじゃの、神屋も彌永いよながも。神屋の執務室にあったお中元を見るに全国各地で任務こなしてたようじゃな」


「はい……。それは彌永いよながのおじ様が引退される前のお父様や月村さんもみたいです」


 などなどルーシーは自分がいなくなってからの俺の様子を色々と確認していたらしい。


「そういえば……、羽衣うい対策室こっちの仕事はしてないの?」


「わたしは……まだです。お爺様にも未熟と言われています」


「そりゃあ、せんせーと比べたらでしょ? 天狗さんともいい勝負していたのにね」


「でも……、レイチェルは簡単に制圧してました。それと比べると……です」


 ねーさんと対天狗戦での出来事を思い出してしまい、少しばかり落ち込んでいる羽衣ういであった。


「あれ? ウイさんみたいに色んな所に術者っていたりするの?」


 ふと今までの事を思い出して、ローラはそんな質問を投げかけていた。


「うむ。まあ基本的にはその土地に根付いている方が多いのじゃよ。ただ……、それ故に術者同士の交流というのは、割と最近まで無いに等しくての」


「ちなみにルーの言ってる割と最近ってのは、数十年前だからね。歴史のある家柄とか組織ほど秘密主義だったりするらしいから」


 ルーシーの解説にレイチェルねーさんも補足を入れる。


「じゃあ……、対策室って……何であるの? 色んな所に術者がいるのに」


「蛇の骨の欠片を受け取った時に、功は『便利屋』とも言うとったが、その各地の術者では対応できん案件を受け持つのも仕事のうちなのじゃよ」


「……もしかして、あそこの人達って……とっても凄い?」


「功や真司を含め、一癖も二癖もある人間が集まってはおるがの。最近メンバーに加わった忍と美里でさえ見習いではあるが、そこらの連中じゅつしゃよりは戦えるはずじゃよ」


 とどのつまりは対策室が必要としている術者のレベル自体が他と比べて高いということだ。


「まあの……。どこかの誰かが間を取り持ったり、トラブル解決せねば確執も生まれるからの。一応そこは国の一機関という後ろ盾があると便利なのじゃ」


「むずかしい……」


「ローラはそこまで覚えておく必要はないぞい。今はの」


 頭がパンクしそうになっているローラにこの話題はもう終わりとばかりに、違う話題を振っていた。


「それよりもローラと羽衣ういの二人共、勉強を頑張らねばな。特に羽衣ういは、あやつと同じ学校に通いたいのならば好きなだけ功から教わればええ」


「はい! 頑張ります!」


 気持ちを新たに元気のよい返事を返す羽衣ういだった。









 次の日、俺達は自宅への帰路につくことになった。


「本当にお世話になりました。ありがとうございます」


「いえいえ、私達こそ本当に助かりましたわ」


 なんてお決まりの挨拶を交わす俺と師匠せんせいの奥様の横で、羽衣ういとローラはお互いの連絡先を交換し合っていたようだった。


「これ、わたしのアドレスですから登録しておいてください」


「うん! ありがとう。今、送信してみるね!」


 その様子を微笑ましく見ていたその一方で俺はまた別の人物と会話をしていた。


「少年、感謝する。仲間達にも彼女らの素晴らしさを広めることを約束しよう」


「天狗氏、貴方はもう立派な同志だ。困ったことがあったら連絡をください。友よ!」


 天狗氏は固い握手を交わした後で、意気揚々と飛び去って行った。


「変な友達が増えるよね、コウって」


「小学校の七不思議ともあんな感じで友達になったのかな?」


「悪意のない連中かいいとの仲介に関して、あやつほどの適性者はおらんからの。まあ、平和でよいよい」


 お家の女性三名からそんな感想が飛び出ていた。


「では出発するぞい」


 そうしてレンタカー乗り込み数時間後、自宅に戻った俺ではあったのだが……。


「兄様! 数学のこの数式を教えてください!」


「お……おう……。やる気に満ち溢れてるな……」


「勿論です! 分からないところがあったらすぐに連絡しますね!」


 数時間前にお別れしていたはずの羽衣ういから、すぐさま勉強を教えて欲しいとの連絡があり、ビデオチャットで一時間ほど家庭教師をしていた。


「では、また明日お願いしますね!」


 凄まじく上機嫌で通話を切る羽衣ういであったが、俺はこう思ってしまった。


 ……これ、もしかして受験まで毎日続くのか!? ……と。

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