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第63話 お風呂トーク

 晩御飯後、俺と偽ロリは居間に残っていた。布団については、これから持ってくることになる。

 そして、同室になった女の子達はというと……。


「うっわ! ほんとに温泉引いてる!?」


「泊めて貰って良かったかも」


 キラ☆(きらぼし)撫娘なでしこメンバーも自宅に設置された温泉に驚きながらもワクワクした表情となっている。


「じゃ、入ろっか。人数多くなっちゃたから早く上がらないと、男連中が困りそうだしね」


「あー……。社長とマネージャーなら、お酒飲んじゃったから、朝に入るって言ってました」


「あの髭の人、社長さんだったの!?」


「ウチ、そこまで大きな事務所じゃないので、社長も掛け持ちで色々やってるんです」


「へぇー。大変だね。頑張ってるんだ」


 浴槽に浸かる前に全員が頭と体を洗いながら、他愛のない会話をしている。


「ローラちゃん……だっけ? 巫女服可愛かった~。明日も着るんだよね? 一緒に写真撮りたい~」


「でも……、売り子してると漢字が難しいです……。漢字も色んな読み方があって……」


「でもさ、日本に来てから3ヶ月くらいで普通に会話できるだけでも凄いよ。わたしなら外国で同じくできないって」


 まききちゃん、こちらは昼間の巫女服姿のローラが途轍もなく気に入ってしまったらしく、またしても顔がとろけている。


 そうして全員が髪と体を洗い終わり、湯船に浸かっているとアイドル組の視線がレイチェルねーさんへと集まる。


「お姉さん……、胸……おっきいですよね……」


「そう? みんなもスタイルいいでしょ?」


「でも、お姉さんは腰回りは締まってるし……理想的なスタイルって感じ」


 これでもレイチェルねーさんは幼少期から霊的な者と対峙するために鍛え上げられているので、無駄のない健康的な体型なのだ。

 そんな中、周りと比べて小さな自分の胸をぽんぽんとしている少女が一人。


「ローラはまだ小学生なんだから、これからおっきくなるって!」


 少しばかり苦笑いしながら、ねーさんがそう言うと、質問を返していたローラであった。


「ねえ……。男の人って胸の大きい方が好きなの?」


 その一言に、周りは一瞬だけ静まり返った後で、きゃーきゃー騒ぎ出していた。


「なになに? もしかしてクラスメイトの子が好きとか?」


「か……可愛い……」


 などなどローラの発言が話題の中心となってしまっていた。


「クラスの男の子じゃないけど……」


 そこまで言うと、恥ずかしくなったのか口まで湯船に沈めてブクブク気泡を出しながら息を吐いていた。


「そういえばさ……。あのお兄さんと、ここの娘さんってどんな関係なの?」


「ねー。何ていうか……、もう尻に敷かれてる感じ?」


 アイドル達は昼間の売り場や晩御飯での様子でそんな感想を持ってしまったらしい。


羽衣ういはねー……。あの子に対する感情が重いから……。色んな意味で」


「ちなみに……お姉さん的には、あの人はどうなんですか?」


 その問いに少しばかり上を向いて、にやけてしまったレイチェルねーさんであった。


「あたしは……秘密で」


「ええー!? ズルいー!」


 そんな叫びが木霊する風呂場に、もう一人の人物が現れた。長い黒髪をタオルでまとめ、スタイルはレイチェルねーさんほどではないにしろ、年の割には発育の良い少女だ。


「あら。皆さんも入っていましたか。ご一緒しても?」


「あ。羽衣ういもこっちおいでー! 女子トークしよ」


 ねーさんの誘いに髪と体を洗ってから湯船へと入った羽衣ういに興味津々といった面々である。


「ねえねえ、お兄さんとどんな関係なの?」


「兄様は兄様です。……今は……ですけど」


 静かに、だが力強くそう答えながら羽衣ういは、まききちゃんの方を一瞬だけ見てからそっぽを向いてしまう。


「わたし……何かしちゃったかな……」


「ごめんねー。ちょっとした三角関係みたくなっちゃってるから。羽衣ういもそういうのは無しね」


 羽衣ういの態度をたしなめるレイチェルねーさんだが、ローラが小言で何やら呟いてた。


羽衣ういはコウが好き? コウはまききさんが好き……」


「そこはファンとして……だけどね。……って!? ローラ!?」


 ローラの様子がおかしいと察したレイチェルねーさんがすぐに彼女を湯船から出すと、目を回してしまっていた。


「あちゃー。のぼせちゃった! すぐに出そ」


 その後、女子達全員でローラの服を着せ、俺と偽ロリ用の布団を敷いていた居間へと連れてきた。俺としては最初は何事かと思ってしまったが、とりあえず応急処置をすることになった。


「とりあえず、これ飲みなさい」


 スポーツドリンクをローラに少し飲ませて、水で濡らしたタオルを額に当てる。

 そうして布団に寝せてからローラに対して、うちわを仰いで風を送っている。少しばかり調子も良くなったようで、穏やかな表情となっている。


「のぼせるくらい長湯って……何してたんだ?」


「……えっと……」

 

 俺の問いに答えようとするローラだったが、頬が赤くなってしまっていた。


「女の子の話を無理に聞こうとしちゃ駄目だぞ!」


 指をピンと立てたレイチェルねーさんから注意を受けてしまう。

 言及するとめんどそうなので、この話は終わりにしよう。


「しかしの……、ローラを部屋に戻しては、ゆっくり休めんかもしれんな。主にレイチェルが話し込んで夜更かしさせそうじゃ」


「ならこっちに寝せるか? 幸いスペースはあるし」


 居間で就寝となってしまったので、三人で眠るのも可能なはず。


「でしたら兄様は、わたしの部屋で――」


「流石にそれはアウトだからな?」


 そんな事になった日には師匠せんせいがおっかなくなりそうだ。


 羽衣ういの提案はきっぱりと断り、ローラ達が泊まっている部屋から布団一人分を居間まで運んで彼女をそちらへと寝せる。


「ごめんなさい……」


「大丈夫、大丈夫。今からちゃんと寝れば良くなるから」


 気弱になってしまったローラの額を撫でながら傍にいたのだが、俺達の様子を伺っていたギャラリーから不意に声が上がっていた。


「……? まき? どしたの、ボーッとして?」


「えっ!? うん、何でもないから! 迷惑になるといけないから、もう行こ!」


 どうやらアイドル達もローラを早く休ませた方が良いと考えたらしく、レイチェルねーさんと一緒にそそくさと部屋へと退散していった。


「お主、もう少しテンション上がっているかと思ったら、そうでもないの?」


「ローラがこの状態で馬鹿できるほど、人でなしじゃない」


「サマーライブに行けなかったとか愚痴っておったらから、ワシが気を利かせたというに……」


 推しと一つ屋根の下ヒャホーイ! とか狂喜乱舞するとでも考えていたのだろうか? この偽ロリは。


「はっきり言って余計なお世話……と言いたいところだけど……。ありがと、るーばあ」


「いつもそのくらいの可愛げがあればの〜?」


 にやにやしながら俺を見ている偽ロリではあったが、すぐに真面目な表情となっていた。


「しかし……の。もしかしたら……、あの娘達をここに招いたのは大正解であったかもしれん」


「あの娘か……。職業上、変な念がこびり付いているのは仕方ないとして……、どう考えても人の念じゃないのが……」


「お主、明日の朝にでも気付かれぬように祓ってやれい」


 幸い、今は祭りの最中でもあり、邪悪な存在はこの神社付近には足を踏み入れられないようになっている。

 仮に踏み入れたところで、俺や偽ロリ、ねーさんと羽衣ういまでいるので、凄まじく強力な存在でもない限りどうとでもなるのだが。


「まあ、今日のところはもう寝ようかの」


「はーい。おやすみー」


 そうして、偽ロリが真ん中。その左右に俺と先に寝てしまっていたローラという位置で川の字になって就寝していた俺達であった。


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