7生徒会室
「マーガレットは帰ったかい?」
アランが生徒会室の扉を閉めると同時にアイルが聞いてきた。
「ああ、廊下の角を曲がるのを確認したから大丈夫だ。ただアイル、マーガレットのいる前での言葉は気をつけてくれ」
「すまなかった。でもフレッドさんから何か聞いている可能性もあるのでは?」
確かにそうだ。
二人は兄妹だ!しかももう一人の妹であるフローラも関わっているかも知れない。
アランは三人分のお茶を用意すると、二人が座る向かい側のソファーへと腰を掛けた。
はい、はい、とカップをテーブルへと置く。
カップからは紅茶の香りが漂う。
「ふふ、今日もアランの美味しいお茶が飲めて幸せだわ。これだけでも生徒会に入ったかいがあったわ」
そう言って淹れたての紅茶を飲むイエインに、アイルも釣られて飲む。
「それよりもアラン。君の兄であるコンラッド卿は今もテナー侯爵子息と交流があるのかい?」
「すまない、その件に関してはまだ調べが付いていない。俺も寮生活だからな、兄の行動も全て把握は出来てないんだ。ただ・・」
俺は一枚の紙をテーブルへと置く。
アイルとイエインが覗き込むように紙を読むと
「これは・・クロ。だよな?」
隣でイエインも頷いている。
「家での兄の行動を監視するように伝えたメイドが、兄の屑籠から持って来たんだ。もちろんフレッドさんにも伝えた。まだ返事待ちだけど・・」
実はフレッドさんからはこう言われていた。
「この件に間違いなくフローラが関わっている。本当にあのバカ・・テナー侯爵子息は両親も匙を投げたほどの男で廃嫡も時間の問題なのに・・」
と、頭を抱えていた。
もともと女性関係が汚く、兄の婚約者にも無理やり手を出そうとした愚か者。
彼女も被害者であるし、二人も想い合う仲だったので結婚は出来たが・・
両家にしこりが生まれたのは事実だった。
そんなクズと兄、フローラが絡んでいるとしたら・・さすがの父も怒り狂うだろう。
とにかくこの手紙が書いてある場所へ侵入するしか無いと、第二王子殿下と共にフレッドさんは計画をしているそうだ。
「でもこの文章、何かおかしく無いかしら?」
「どこがだい?イエイン」
だって・・
と言われて読み返してみる。
コンラッド卿
さる25日にいつもの店で待つ。
例の君にとって必要な彼女を一緒に連れて来てくれ。
誰にも悟られぬよう、またこの手紙も直ぐに処分してくれ。
F・T
「フレドリック・テリー」
「そこじゃないわ!間違ってないけど、問題は内容よ!」
イエインはアイルの勘違いに少しイラついたように言う。
君にとって必要な彼女・・
兄コンラッドにとって必要な女性は・・
「マーガレット?」
俺の言葉にイエインは頭を縦に振った。
俺もフレッドさんも勘違いした。
てっきりフローラを指しているのだと・・
「でもなぜマーガレットを?」
「それは・・分からないわ。でも、理由はある筈だわ。わざわざ彼女を連れて来いと言ってるのだから」
「・・」
俺は急いで馬車乗り場へと走った。
(頼む、まだそこにいてくれ!マーガレット)