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コンラッド様が屋敷に来てから三日後、私とフローラは試験に挑んだ。
私はまず心配無かったがフローラが不安でこの二日間はずっとフローラに付いて勉強をしていた。
その十日後、二人とも無事合格した。
私は首席合格したが、宰相の一人娘でフローレンス・バルディ様も入学する為、新入生の挨拶はフローレンス様になった。
「こんな事は必要無いのに、マーガレットさんごめんなさいね」
と、直接お声が掛かった時は驚き過ぎて頭が上がらなかった。
私のような子爵家からすると公爵家の、しかも総領娘のフローレンス様から直接お声が掛かるなんて事は・・まず無い!
これには兄のフレッドも驚いて挨拶へ来ていた。
その時のフローレンス様の、お兄様を見つめる視線が少し気になった・・
入学式の前日。
私はまたアラン様から図書館に呼ばれて、いそいそと出掛けた。
フローラは部屋で入学式の準備をすると言って、メイドに(念入りに)手入れをして貰っていた。
図書館に着くと前座っていた席にアラン様が先に座っていおり、私に気付くと手招きしてきた。
「アラン様、お待たせしました」
「調べたい事があったから先に来ていたんだ。気にしないで」
そう言いながらイスを引いてくれた。
こんな事されたのは初めてだからドキドキしてしまう。
向かいに座ったアラン様はハイッ!と言ってリボンの掛かった箱を出してきた。
何かな?とアラン様を見ると
「たいした物じゃ無いけれどその、合格のお祝い。良かったらだけど・・」
「えっ!いいんですか!嬉しいです!」
開けて見て?と言われ箱を開けるとそこには書きやすそうなペンが入っていた。
「その、僕が使っているのと同じ物なんだけど、とても使いやすくて・・良かったらマーガレットにも使って貰いたくて」
女性にプレゼントした事無いのだろうなと思わせるペンは、男性向けの柄の物だった。
それでも身内以外から貰った事が無かったので、その気持ちがとても嬉しかった。
「ありがとうございます。大切に使わせて頂きますね」
私は箱ごと胸に押し当ててお礼を告げた。
「そう言えばこの間、兄がゾーロイ邸に押し掛けたと聞いたけど・・何か言われたかい?」
寮に入っているアラン様の耳に入るなんて、きっと兄の耳にも入っているわね。
「いつものことですよ。フローラと比べられ可愛げが無いと・・それと、少しは見られる様になったと褒めて頂けましたわ!」
「それ褒めて無いから!フレッドさんが聞いたら怒るから!」
私が怒らなくても怒ってくれる人がいるのは嬉しい。
そして改めて思った。
私の結婚相手がコンラッド様では無く、アラン様だったら・・と。
爵位が無くてもアラン様とだったらきっと・・と。
実際、コンラッド様は父の元へ経営を学びに来なくなった。
私では無く、フローラを気に入っている。
だったら!と・・
「でもダメね。フローラでは領地の経営など出来ないから。私はその為だけに選ばれたのだから・・」
そうして私とフローラは無事、学園へと入学した。