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16

「マーガレット?目覚めたのね?痛い所はない?」


 目を覚ますと心配そうに私を覗き込む母の顔があった。頷くと安心したように優しく頭を撫ぜてくれ、


「皆んなが心配しているから伝えて来るわね」


 そう言い残すと静かに部屋から出て行った。

私は自分の部屋のベッドで寝ている事に気づき、周りを見渡すと・・


「アランさま・・?」


 見慣れないソファーが置いてあり、何故かそこにアラン様が寝ていた。

 身体を起こそうとしたが全身に痛みが走り思わず ウッ! と声が出てしまった。


「マーガレット?」


 私の声に気付いたアラン様がソファーから飛び起きた。私はアラン様へ微笑むと


「ご心配をおかけしました」


 と手を伸ばす。

 アラン様は走って側へ駆けてきて私の手を取ると、今にでも泣きそうな顔で抱きしめてくれた。


「良かった・・目を覚ましてくれて良かった。」


 何度も何度も囁いた。



 私は公爵家へ運ばれたあと、丸二日意識を失った状態だったと聞かされた。

 フローレンス様は今日目を覚まさなかったら明日の結婚式は中止にする!!と言い出しており、


「本当に目を覚ましてくれて良かった」


 と、お兄様から心からの感謝を言われた。



スープを飲んだあと湯浴みを済ませた私は、改めてアラン様やフローラ達にお礼を伝えた。

 幸い顔の傷も綺麗に治っていて、明日のお兄様達の結婚式にも出席出来そうだ!


 明日までは安静に!とバルディ家の主治医から言われた私は、ベッドの上で読者をしていると、お兄様が部屋へ訪れた。なぜか第二王子殿下とフォレスト卿も一緒だった。

 私は急いでベッドから出ようとすると


「そのままで・・目覚めたばかりなのにすまない。フレッドの結婚式の前にどうしても伝えたい事があってね」


 お兄様が用意してくれた椅子へ腰掛けると同時に、お父様お母様、フローラとコンラッド様も部屋へと入って来た。

 アラン様は・・


「ああ、すまないね。アランは今回の報告をさせる為に王宮へ行かせてるんだ」


 と、殿下に言われ、急いで頭を横に振った。

 今回の報告の前に と前置きを置いたあとフォレスト卿が私の横に立ち深く頭を下げた。


「フォレスト卿!?」

「知っての通り今回は愚弟が犯した件でバーロイ嬢へは深い傷を負わせてしまった事、心よりお詫びします。後日改めて両親も謝罪に訪れたいと、言伝を預かっております。」

「あっあの、頭を上げてください。私を助けに来てくださった事は両親からも、聞いております」


私は自分より高位の方に頭を下げられた事がない為、慌てて両親やお兄様を見る。


「マーガレットもこう言ってます。フォレスト卿、頭を上げてください。ご両親の謝罪も後日受け入れてる事をお伝えください」


 お父様が言えばフォレスト卿も頭を上げる。

 私はホッと胸を撫でるとフローラが側へ来た。腕の中にはアベルもいてニコニコ笑いながらフローラに抱きついていた。


「さて、改めてマーガレット嬢。今回の事は我々にも非がある。王家からも謝罪する」


 そう言って頭を下げられた殿下に気を失いそうになる。お兄様は当然です!って顔をしているし、お父様達もそれに似た感情で殿下を見ている。

 おそらくは先に頭を下げられたのだろう。


「この件は改めて陛下からもお言葉があるだろう。面倒だがその際は王宮へ来て頂く。」


 私は言葉を失うも殿下の言葉は続いた。



 ジーク様はあの後兄であるキャンベル卿の手で近衛騎士へ渡された。予め罪状が揃っていた為フォレスト侯爵の手で爵位を剥奪され、平民となったジーク様はフレドリック様と同じ辺境の地へと護送された。

 二度と王都へ足を踏み入れる事はないだろう。と、伝えられた。


 助けられた女性達はそれぞれの家へと帰されたが、サラ様は頑なに自宅へ帰る事を拒んだ為に一時的にフォレスト侯爵家に預けられていると聞いた。


 その件でも今フィッテ男爵家も調べられており、下手をすればお家取り潰しも免れないだろう・・と言われた。


 皆が部屋から出たあと、フローレンス様が顔を出してくれた。ずっと私を案じてくれていたのだろう、目が赤く腫れており明日の事を考えると心配になった。


「マーガレットさん、今回の事は本当にごめんなさい。わたくしが行くべきなのに、わたくしが行かなかったせいで・・」


 とまた泣き始めてしまった。

 後ろで控えている侍女達もオロオロしている。


「フローレンス様、お願いですからもう泣かないでください。お兄様の判断は間違ってはおりませんよ?私がお兄様でもきっと、同じ事をしたと思います」


 優しく言葉を紡ぐ。

 フローレンス様が安心するように、今回の事はこれが最善だったと伝わるように・・


「フローレンス様がご無事で良かった。私、明日の結婚式はとても楽しみにしているんですよ!こんなに泣いていてはせっかくの衣装も台無しです。どうかもう泣き止んで・・出来れば無事で良かったと、笑顔を見せていただけませんか?」


 私の言葉でフローレンス様も何かを気付き


「そうね・・そうよね!ごめんなさい、わたくしったら自分の事ばかりで・・」


 とやっと笑顔を見せてくれた。



 そうして夜が明けて今日、お兄様とフローレンス様の結婚式を迎えるのだった。



次回最終回です!

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