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15 アラン

 兄さんとフローラ、ゾロさんを乗せた馬車が入り口前に到着し中へ入るのを確認した後、俺とキャンベル卿と副団長の三人は裏口へと廻った。

 

 幸い裏口には賊が二人しかおらず、俺一人で片付けた。


「アラン殿はどこでその腕を習われた?」


 キャンベル卿に問われ振り向くと、副団長も興味深々な顔で見ている。

 一瞬考えたが黙っていてもバレるだろうと思い、


「実はフレッドさんにお願いして、殿下に仕えるのと同時期にバルディ公爵家の騎士達の訓練に参加させて頂いてました」

「なるほど、公爵家の騎士仕込みか」


 と納得している様子。

 さすがは王宮騎士だけあって次々と現れる賊を、二人ともが流れるように倒して行く。


「団長、私はこやつらを縛り上げたら外へ運んでおきます。そのうち後方部隊が到着すると思いますので、そのまま外で待機しております」

「ああ、よろしく頼む。アラン殿・・」


 キャンベル卿は俺の名を呼ぶと天井を指差した。




 天井をつたって三人が案内された部屋の上へと移動した俺たちは、隙間から下の様子を伺う。

 まだマーガレットは来ていない。キャンベル卿もジークが現れるのを待つ。

 すると勢いよく扉が開き三人が入って来た。良く見るとマーガレットは後手で縛られており、しかも乱暴に扱われていてそれだけで腹が立つ。


 話し声は良く聞こえないがゾロさんがジークに話しかけている。するとマーガレットの首に剣が当てられる!


 なんて事をしやがるんだ!!


 飛び降りそうになるのをキャンベル卿に止められる。


「フローレンス嬢は知っていますか?この女の背中に痣があるのを」


 その言葉を言い終わる前に、ジークはマーガレットの顔にナイフを当てていた。

 ペチペチと、皮膚にナイフが当たる音がする。


「顔にも傷が出来たらこの女、どうなりますかねぇ」


 薄っすらとマーガレットの頬から血が見えた瞬間、

 俺の怒りが頂点に達すると同時に、気が付けば天井の板を蹴破り下へ マーガレットを奴らから引き離していた・・



「アラン、お前もう少し後に現れる予定だっただろう?危うくマーガレットに傷が付く所だったじゃないか!」


 兄がフローラを抱きしめながら怒って来る。


「・・・すみません」


 自分でも意思とは関係なく身体が動いていた事に驚いてしまった。それは程にジークの行動に腹を立てたのだ!


「でも私はアランの行動が嬉しかったわ。事もあろうかマーガレットの顔にナイフを当てるだなんて・・しかも薄いとは言え傷を付けるなんて」


 フローラはそっとマーガレットの顔の傷に触れる。


「これくらいの傷なら跡も残らないでしょう」


 ゾロさんが手当をしながら優しく言うが、


「そう言う問題では無いのです!既婚者ならまだ知れず、独身女性の顔に傷が付くことがどれほどの事か!それが理由で婚約解消された話もたくさん聞くわ!それに」


 フローラはチラッと俺を見たあとに


「ゾロさんは、フローレンス様の顔に跡が残らない傷を付けられても、同じことが言えますか?」

「傷を付けた奴を秒で抹殺しますね!」


 真顔で答えたゾロさん、マジで怖い・・

 でもフローラの言うとおり、社交界でも相手と解消したくてワザと身体に傷を付けたり、相手を襲ったり・・一時期そんな事があった。


 俺は緊張から解放され安心したのか、気を失ったマーガレットを腕に抱きながら


「背中に痣があろうが、顔に傷が残ろうが、俺がマーガレットと生涯を共にする。約束する!」


 俺の胸に顔を預けて眠る彼女を見ながら、無意識に言葉を発した。

 キャンベル卿は 愚弟のしでかした事、我が家からも正式にバーロイ家へ謝罪をしに伺います。 と言伝を頼まれ、一路バルディ公爵家へと帰還した。


 マーガレットの顔の傷を見たフローレンス嬢は


「やはりわたくしが行くべきでした!わたくしが行っていればマーガレットさんの顔に傷を付ける事も無かったのに!」


 と、パニックを起こしていたがフレッドさんが上手く宥め、


「今はゆっくり休ませましょう。母が側に付くので安心してください」


 そう言って自室へと誘導して行った。

 俺はマーガレットをベッドへ寝かすと、ゾーロイ夫妻へ自分の気持ちを話した。夫妻は


「まずはマーガレットへ気持ちを伝えてから、改めて二人で来なさい」


 そう優しく言われ 


「マーガレットを助けてくれてありがとう。貴方も疲れたでしょう?今夜はゆっくり休みなさい」


 と部屋から出された。

 

 他にも誘拐されていた女性と、フィッテ嬢も無事救出しこの事件は幕を下ろした。

残り二、三話の予定です!

最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!

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