8 男たち
「おい、アラン!待ってくれ!」
急に後ろから声を掛けられて振り返ると、兄が走ってこちらへと向かっている。
俺は足を止めて待っていると、腕を掴まれて中庭へと連れ出された。何事かと問うと
「たいへんだ!今フローラから連絡があって、マーガレットが屋敷から消えたと!」
俺は急いで第二殿下の元へと走った。
執務室には怒りを露わにしたフレッドさんと第二殿下。護衛騎士のフォレスト卿とバルディ公爵に王太子殿下もその場にいた。
「アランにコンラッドも座ってくれ」
第二殿下の言葉に俺と兄は空いている席へ腰をかけた。はやる気持ちを抑えて・・
「今日、注文したドレスが屋敷へと運ばれた。屋敷には色々な人たちが入り込んだ様でちゃんと把握が出来ていなかったと執事長から報告があった・・」
話始めたのはバルディ公爵。
「公爵家の騎士団からの報告は、それぞれの護衛対象者には従者の格好をした騎士たちが付いていたと連絡はあった。ただ、不思議な事にマーガレット嬢に付いた騎士は・・誰も面識が無かったと・・」
「そんな事あり得ないだろう!!」
怒りが収まらないフレッドさんを、両殿下がなだめている。
「正確には昨日まではバルディ家の騎士が付いていたんだ。それが今日になって急に変更になったらしい」
らしいと言うのは、ちゃんとした報告が上がっていなかった!と言うこと。
「公爵・・」
「何か言いたいことがあるのだろう?」
「・・・」
「公爵・・」
黙り込んでいたバルディ公爵は、一つ息を吐くと語り始めた。
「娘に・・痣があります。これは、私も知らなかったこと。妻に確認した所腰辺りに小さな痣があると」
その場にいる全員が黙る・・
なぜなら、今回の事件に関わっているのが痣のある令嬢・・だからだ。
ただ何故マーガレットが?
不思議に思っていると・・
「マーガレットにも・・あります。でも彼女は生まれ付きではなく、子供の頃に皮膚の病気になって・・」
青ざめながら俺を見るフレッドさん。
彼の言いたい事を理解して俺は首を横に振った。
傷物令嬢は嫁に行けず。
そんな言葉が一時期流れたからだ。
その時の俺は(何てくだらない!)と思ったが、令嬢やその家族にとっては大問題だったのだろう。
兄とマーガレットの婚約話が出た時も、ゾーロイ家は乗り気では無かった。
それは、マーガレットの背中の痣を気にしてだったのだとしたら・・
「俺はマーガレットの痣なんて気にしないです。それ以上の物を彼女は持っているから」
「私もアランと同じだよ。それを知ったからと言って、フローレンス嬢への気持ちは変わらない」
バルディ公爵をはじめ、殿下たちも俺たちの気持ちが変わらない事を知り動き出す。
「まずは公爵。屋敷に戻り次第マーガレット嬢に最後に接触した人物を探すんだ!」
「フレッドとコンラッドはこの王宮内で帰宅した貴族を洗い出せ!今日は貴族会議の日だ、帰宅する事は絶対に禁止されているはずだ!」
公爵にフレッドさん、兄さんは殿下に言われ直ぐに動き出した。
俺は少し考えていた事を両殿下へ伝える。
二人はとても驚いた顔をしていたが、直ぐに頷いてくれた。
俺の考えが正しければ あの人 は必ず動き出す。
二人に礼をしその場を離れると、一直線にある場所へ走り出す。
「マーガレットに傷でも付けてみろ!死んで償わせてやる!!」




