5
あれから屋敷に戻った後も、食事の時も、アラン様の言葉よりもアラン様にされた事を思い出してしまい、食事も喉に通らなかった。
(アラン様の香りが鼻から離れない・・好んで付けているミント系の香・・)
思い出すだけで顔が熱くなり、胸が締め付けられて苦しくなる・・
様子がおかしいと思ったお母様は、
「今日は早く休みなさい」
と言って部屋へと送られた。お風呂の準備も出来ていたため早めに済ませてしまった。
ベッドに横になっても眠れる訳でもなく自室のソファーに寝転ぶも、胸の苦しさは軽くならない・・
(どうしよう・・アラン様の事を考えただけでも苦しいのに、また直接会ったらどうなっちゃうのかしら)
そんな事を考えているとコンコンッと扉を叩く音がした。
こんな時間に誰かしら?
と、扉を開けるとそこに立っていたのは
「フローレンス様?どうされたのですか?」
寝夜着姿のフローレンス様だった。
フローレンス様は侍女にお茶と軽食の準備をさせると、
「呼ぶまで下がっていて。」
と、部屋から下がらせた。
「今日、アラン様にお会いしたとフレッド様からお聞きしまして・・その、帰られてから様子が変だと伺って・・」
「・・えっ?!あっ、あの・・すみません・・」
「いえ!違うの!あの・・もしかしたらマーガレットさんの気持ちが分かるかも知れないと・・」
私は誤魔化すように淹れてもらったお茶を飲むと、少しづつ話し始めた。
アラン様と会ってからのこの気持ち、胸の苦しさ、フローラにはなぜか恥ずかしくて言えなかった事を、フローレンス様に話した。
「フフッ」
私が話し終わるとフローレンス様は嬉しそうに微笑んで、
「アラン様に恋をしていらっしゃるのね。」
と静かに、でもハッキリと答えてくれた。
「わたくしも今マーガレットさんと同じ気持ちを、フレッド様に抱いておりますのよ?」
両頬を赤く染めながら言ったフローレンス様が、とても可愛くて思わず抱きしめてしまった。
「アラン様にはもともと好感は抱いておりました。一緒になるならアラン様のような方が良いと・・」
フローレンス様は黙って私の言葉に耳を傾けている。
「でも今日、久しぶりにお会いした時・・こう胸がキューってなって、涙が止まらなかったのです」
その時の事を思い出すだけでまた、胸が苦しくなる。
「何も喉に通らなくなりますものね?」
私は黙って頷く。
「わたくしも、フレッド様の事を考えるとマーガレットさんと同じ気持ちになりますよ。」
「お兄様は素敵な方ですもの・・でも、私が言ってる事とは別なんですよね?」
静かに頷くフローレンス様に、私は妹としてとても嬉しい気持ちになった。
「お兄様はフローレンス様を大切にしてくれていますか?」
「おそらく、ご家族の方にお見せしている姿とはまた別のお姿だと思います。それこそ、アラン様がマーガレットさんだけにしか見せない姿と同じかと・・」
二人して顔を赤らめると、なぜか笑いが溢れてきて、二人して笑った。
そこからは用意してもらった軽食やお菓子をつまみながら、お互いの話をした。
正直お兄様への惚気はご馳走様!って気持ちだったけれど、きっとフローレンス様もこんな話を出来る人は居ないのだろう。
もっと聞いて!もっともっと!と話は続き、いつの間にか侍女にも休みなさい!と部屋へ下がらせた後も、話に花が咲き・・
気付いたら二人で私のベッドで眠っていた。