23 アラン
「僕に話があると呼ばれたのですが、何でしょう」
フレッドさんから、フレドリックさんが俺に話があるから行って欲しい。そう頼まれ公爵家専属騎士団の独房へと足を運んだ。
俺としてはまだ意識が戻らないマーガレットの側に付いていたかったのに・・
「・・・」
「・・・」
俺を呼んだのに無言か!
「話が無いのならマーガレットが気になるので行きます!」
そう言って席を立とうとしたら、
「彼女に、謝りたいんだ。こんな事したかった訳では無いと・・」
話出した為もう一度椅子へ座る。
「俺の事を知らない、ただ一人の人間として親切に接してくれたのは・・彼女だけだった・・」
「・・」
ポツリポツリと話出した彼は、今まで見てきた人とは別人のようだった。
本気でマーガレットの事を・・
もしそうだとしても彼女を傷付けた事は許せないし、俺としても彼女を渡す事は出来ない。
「貴方は・・やり方を間違えたんだ。無理やり手に入れても心が壊れるだけ・・」
「・・・」
「なぜ、あんな事を?いや、理由は言わなくてもいい。でも・・」
俺は真っ直ぐに彼を見た。そんな俺の視線に気付いたのか顔を上げた。
「もし貴方が、正々堂々とマーガレットに求婚していたらきっと・・俺では勝てなかったと思う」
「君も・・いや、今更こんな事を言ってもだな。君にもすまなかった。もう彼女に会う事は叶わないから、君から伝えて欲しい。申し訳なかったと・・」
俺は黙って頷くとその場を離れた。
翌日の早朝、彼は誰にも見送られる事もなく王都を離れた。
二度と戻る事は許されず、辺境の地へと送られた。
俺は馬車に乗せられ運ばれていく彼を、丘の上からフレッドさんと一緒に見送った。
「彼も可哀そうな人だったんだ。殿下に言われ彼の事を調べていたけれど・・侯爵夫人が亡くなってからの侯爵家は彼にとっては居心地の悪い場所だったんだろう」
だからと言ってマーガレットにした事は許せないけどね!
そう言ったフレッドさんは、とても複雑な顔をしていた。
主犯となるフレドリックさんが捕まりそこからは芋づる式に、関わった子息たちが逮捕された。
兄さんはフレッドさんに事の次第を全て話し、マーガレット救出に手を貸した事から罰は軽減され五年間、王都への出入り禁止で許された。
フローラも
「マーガレットや他の令嬢の事を思えば、軽いくらいだわ」
と、兄と一緒に罪を償うと言ってくれた。
両親もそんな二人を支え、領地経営に力を入れると手紙が来た。
[だから、お前は自分の進みたい道へ行け!お前はコンラッドと違って切り開く力があると信じている]
フレッドさんにしごかれながらも、今は充実した生活を送っている。
今回の事で陛下から爵位を頂き、ザドリー子爵となった。
ゾーロイ子爵家も伯爵位へと叙爵され、マーガレットは将来伯爵となる事が決まった。
でも、忙し過ぎてあの日からマーガレットと会えていないのが気がかりで、フレッドさんに聞くと 元気にしているよ! としか言われずモヤモヤの日々が続いている。
そんなある日領地の兄から手紙が届いた。
[冬が訪れる前にフローラと結婚式を領地で挙げるから、アラン帰ってこないか?フレッドとマーガレットにも声を掛けたから]
俺は手紙を読み終わると急いで殿下とフレッドさんの元へ向かった。
次で完結の予定です!
最後までお付き合いください!




