22 フレドリック 1
フレドリックの気持ちを書いてみました
あの日、俺は家族全員に裏切られた。
一番の原因は兄の婚約者の伯爵令嬢だ!
あの女は兄という立派な婚約者がいるのに、事もあろうか俺にまで色目を使ってきた。
昔から俺もアイツに気がある事を知っていて・・
兄と俺、そして伯爵令嬢は領地も隣同士の幼馴染だった。父侯爵は初めから兄と婚約させるつもりでいた為、俺には子爵家の令嬢を当てがうつもりだった。
が、俺はまだ彼女に気持ちを残していたから断った。
それがいけなかったんだろう、父侯爵は俺を寮に入れて騎士科への編入を俺の意思を無視して手続きした。
「父上なぜですか?!俺は文官となって王宮で・・」
「お前には我が領地を守る騎士隊へ入ってもらう!その為には学ぶことがあるだろう!これは決定事項だ!分かったら準備をしておけ」
俺は納得がいかず兄から父上を説得して貰おうと、兄の部屋へ向かった。
だが、兄から返ってきた言葉は更に俺を絶望へと落とした。
「フレドリック、なぜ父上がそう言ったのか理解出来ないのか?」
「?」
兄は机の上から目を離さず言葉を続ける。
「お前が彼女に気があるのは知っていた。だが、彼女は俺の婚約者だ、それは許されない。だからだよ」
なるほど、俺に彼女への想いを切らせる為に寮へ・・
俺は正直ガッカリした。父上にも兄にも・・さすがの俺も兄の婚約者に手を出そうとは思っていない。ただ彼女は俺にとっても初恋だから綺麗な思い出にしたかっただけなのに・・
「父上も兄上も俺のことを信じていないんだな・・分かったよ。二人の思う通りにしてやる。でも、俺の相手は自分で選ぶからな!」
大きな声で叫びながら兄の部屋から出た。
イライラが止まらない。
俺は部屋へ戻り従僕に指示をして荷物を纏めさせた。直ぐにでもこの屋敷から出るつもりで・・
その日の夜は飲めもしないワインを飲んでしまい、ベッドの上で酔いを醒ましていた。
ウトウトとし出した時、部屋の扉が開いた。
「フレドリック、どうかしたの?」
「・・結婚前の女性が、こんな夜更けに忍び込む部屋じゃないだろう・・」
兄の婚約者が入って来た。
こんな事は始めてだったが、何となく察しが付いた俺はこれ以上巻き込まれたくなくて追い出そうとした。
「貴方が荒れていると屋敷の者たちが言っていたから・・ねぇ、寮に入るの?私のこと忘れるの?」
「意味分かんないこと言うな!どうせ他の男にもそう言って誘ってんだろ?俺を巻き込むのは止めてくれ」
隠していたのだろうが、俺の耳には少し前から入っていた。
俺が彼女に恋している事を知っている連中から、面白おかしく教えてくれた。
「例の伯爵令嬢、色々な男と夜遊んでいるぞ。そんな令嬢を夫人にする侯爵家も堕ちたもんだな」
と・・
俺なりに注意してきたがダメだった。
ならば兄の耳に入らないようにするしかない!
そう頑張ってきたのに、いつの間にか俺が彼女に執着していると思われるようになった。
彼女はガウンを脱ぐと薄地の下着姿でベッドの中に入って来た。
俺が明日から寮に入る事を誰かから聞いたんだろう。焦って俺の部屋に来た事は少し考えたら分かった。
さすがにマズイと思った俺は彼女の身体に触れ、部屋から出そうとした瞬間・・
きゃゃゃゃああああ!!!!
彼女の口から絶叫・・の言葉が相応しい声が出た。
それと同時に俺をベッドへと押し倒し、自分も一緒に倒れ込んだ。
俺はあまりの事に一瞬動きが止まってしまった。
「フレドリック貴様!!!」
兄が俺の部屋へと飛び込んで来た瞬間、俺は嵌められたと悟った。
あの女は貞操を失っている事を我が家に知られない為に、俺を使ったんだ・・
俺に無理やり奪われた・・と。兄にバラすと脅されて今までも何度か抱かれたと・・泣きながら兄と父上に訴えたらしい。
俺はその場で取り押さえられた。父上と兄の視線が俺を突き刺す。
「俺は何もしていない!」
「やった奴は皆、同じ事を言う」
「本当にやっていない!どうして信じてくれないのですか!」
「お前の彼女を見る目は前々から気に入らなかったんだ。信じてくれない?当たり前だろう。お前と彼女では重さが違う」
「あに・・うえ・・」
次の日には無理やり学園の寮へ入れられた。
小さな領地の令嬢との婚姻付きで・・
長くなりそうなので二話に分けます!
投稿は同じ日です!




